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第146話。邪気祓いのドレスをようやく脱いだ鞠絵は、同行してくれた風竜の長ミンティ・ラナクリフにきちんと礼を言っていないことに気づきあわてる。

第146話です。

 眠っていた私を起こさないようにだろう、薄暗くされていた部屋の灯りをタニアが明るくしてくれた。彼女に手伝ってもらって、ドレスを慎重に脱いでいく。

 ようやくタニアがドレスをハンガーで壁にかけた時、安堵で大きなため息が出てしまった。

「ああ、よかった。汚したり破いたりしたらどうしようって思ってたけど、途中からそんなこと考えられないことが起こったから」

「そのお話は、姫様がゆっくりお休みになられたあとで、じっくりお聞きしますからね」

 タニアがウインクして、あたたかい飲み物をすすめてくれた。

 それを受け取って一口飲んだ私は、少しはっきりした頭で大切なことを思い出した。

「そうだわ、皆さんはどうしているのかしら」

 特に私、黒鋼竜の皆さんには御礼を言ったけれど、ラナクリフ様には言っていないんじゃない!?

 それは、それはだめよ、ちゃんと御礼を言わなくちゃ。

「黒鋼竜の皆さんはもうそれぞれ休まれるそうです。風の長様はもう帰られるとおっしゃっていました。おばば様がもうすぐ夜が明けるから休んでいくようにと言われたのですが…誰にも見られぬうちに帰ると聞かなくて」

 ええっ、もう帰られるの!?今は何時?もう日は昇ってしまったかしら?まだ、いらっしゃるかしら?

「風の長様は姫様によろしくと…ゆっくり休まれるようにとのことです」

 それを聞いた私は急いでカップをテーブルに置いて、ベッドから飛び降りた。

「あっ…」

 ちょっとフラフラしたけれど、それどころではない。

 ラナクリフ様にはたくさん助けていただいた。だから、会って御礼をちゃんと申し上げたい。

 どうしても。

「大丈夫ですか、姫様!?どうなさったんです」

 タニアが飛んできて、寝間着姿の私を支えてくれた。

「ラナクリフ様…ミンティちゃんのところに行かなくちゃ」

「えっこんな明け方にですか?姫様はお疲れなのですから、もうお休みになってください」

「ダメよ!黒鋼竜の方々には一人ずつ御礼を言ったけれど、ラナクリフ様にはちゃんと言っていないの、お願い行かせて!」

 私の必死な様子を見て、タニアはため息をつき、それではこれを…と上着を持ってきて羽織らせてくれた。

 あっ…そうよね、私がいま着ているのは寝間着だし、高い山にある黒鋼竜の領地は結界があってあたたかいけど、朝方だからさすがに冷えるものね。

 タニアの心遣いに、私は嬉しくなった。

「ありがとう、タニア」

「私はラナクリフ様の近くまでは行きませんから、玄関までは送らせてください。ラナクリフ様は、夜が明ける頃に出立されると聞きました。まだいらっしゃるかも。さあ、行きましょう姫様」

「そうね。助かるわ」

 まだ少しフラフラする私を、タニアが支えてくれた。廊下を通って玄関に向かう。

 それにしても、タニアがラナクリフ様の近くまでは行かない、というのが私は気になった。

 聞けば、竜の長はその姿を見せるのを嫌う者もいるそうだ。

「どうしてなの?」

「強大な力を誇る各竜の長たちは、その力が姿に出ることも多いのだそうです」

 つまり、同じ属性の竜でも姿が違う、ということだそうだ。

「その中でも風様は竜の姿を見せたがらない、という噂です。姫様はともかく、私が見るのはやめておきます」

 怒られてしまってもなんですからね、とタニアは笑って、玄関からは私一人で行かせてくれた。(続く)

第146話までお読みいただき、ありがとうございます。

ミンティちゃんにちゃんと御礼を言いに行かなければなりませんね。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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