表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/355

第145話。一国と邪気竜を浄化し、黒鋼竜の領地へと戻る鞠絵。風竜ラナクリフに支えられる彼女に、聖銀竜ナギが囁きかけることとは。無事帰りつくことはできるのか?

第145話です。

「ふう~…さすがにちょっと、くたびれたわ…」

 黒鋼竜の領地に帰る途中、私は大きくため息をついて、背後のラナクリフ様に軽く寄り掛かった。するとラナクリフ様は私の腰を抱いて引き寄せてくれた。

「もっとちゃんと、寄り掛かっていいよ。もうそろそろ朝日が昇る…こんな時間まで、ほんとに聖銀ちゃんも皆もがんばったよね」

 あたたかい胸元に背中を預けると、急激に眠気がやってきた。

「ミンティ、ちゃん…だってそうよ…おかげで、私の歌が…国中に、届けられたもの…」

「ふふ、そうだよね。皆で力を合わせた結果、うまくいったんだよね。でも一番頑張ったのは聖銀ちゃんだよ。疲れてるんだから、少し眠るといい。私がちゃんと、支えてるから」

 そんな、恐れ多いわ。でも確かに、とても眠い…。

 私の中のナギが、やはり眠そうに呟く。

『一国を浄化するなど、本来聖銀竜十頭ほどでようやく成しえるもの。それを我らだけで成し遂げてしまうとは…。ヒトとの融合というのは、凄まじいものなのだな。黒鋼竜や神金竜が、力を求めて融合した気持ちがよくわかる。我とそなたの相性が、とても良かったせいもあるのだろうな…相性が良ければ良いほど、力が出ると聞いたことがある』

 そうなのね…とにかく、成功して良かった。本当にナギの力には感謝してるわ。

『だがさすがに限界だ。我は眠る。そなたも休むがいい』

 ああ…確かに、引っ張り込まれるみたいに、眠くてしかたがないけど。でも。

「だい…じょうぶ、わたし…ねむら、な…」

「おやすみ、聖銀ちゃん」

 その囁きを聞いたのを最後に、私は泥の中に引き込まれるように、ラナクリフ様に全体重を預けて眠り込んでしまった。

 だから私は知らなかった。

 黒鋼竜たちが領地にたどり着いて、見えた光によって国の浄化を知ったすべての黒鋼竜たちとその連れ合いの真竜たちが、もう明け方近いにもかかわらず、それぞれに灯りを持って迎えに出てくれたこと。

 たくさんの灯りの中、降り立ったハリル様の背中から、エリン様が私をラナクリフ様から受け取って、お姫様抱っこで部屋の寝台まで運んでくださったこと。

 エリン様を部屋まで先導してくれたのが、おばば様とタニアだったこと。

 迎えに出てくれた黒鋼竜たちは一様に声をあげて私たちをねぎらおうとしたけれど、私が眠っていることを知らされると、物音もたてぬように静かにしてくれたことも、後からタニアに聞いて知った。

 みんな、優しいよね。黒鋼竜は体が大きくてがっちりしている者ばかりだけれど、心はとても繊細で優しい。

 ハリル様の背中でラナクリフ様に寄り掛かって深く眠り込んでしまった私がふと目覚めたのは、タニアの腕の中だった。

「…はっ!あっ、タニア!?私、帰ってきたの?」

 寝ぼけてぼそぼそとしゃべる私に、タニアが微笑む。

「はい姫様、お帰りなさい。無事に浄化ができたのだと聞いています。本当にお疲れ様でした。姫様ならきっとやり遂げると信じていましたが、とても心配していたのですよ。姫様が帰ってこられてとても嬉しいです」

 気づくと、私はまだ邪気祓いのドレスを着たままだった。すでにヴェールや靴や飾り物は外されて、ベッドサイドのテーブルの上に置かれているところを見ると、タニアが私を着替えさせようとしてくれていたらしい。

 私はまだ眠くてフラフラしていたけれど、タニアを手伝おうとベッドの上に起き上がった。

 あー…ねむい…でも着替えなくちゃ。

 この大切なドレスを着たままで、眠るわけにはいかないもの。(続く)

第145話までお読みいただき、ありがとうございます。

やっと帰ってこられましたね。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ