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第140話。聖銀竜ナギとマ・コト、そして鞠絵の願いは邪気竜エレサーレに届くのか。

第140話です。

『ナギ様もぉ…それをお望みなのかぁ…ナユ様のぉ…弟君の…ナギ様がぁ…』

「そうよエレサーレ。お願い、小さなマ・コトをあなたが守ってあげて。邪気竜じゃない、黒鋼竜としてあなたが守るの。今度こそ、マ・コトを守りぬくことこそが、あなたの贖罪でしょう?ここにいるよりも、そのほうがずっと、世界に対する償いになるでしょう?」

『おお、おおぉおお…』

 エレサーレは雄たけびを上げた。

『けれどわたしは、たくさんの命を消したぁ。この国に住むすべての命を消したぁ。命を守るべき神竜がぁ…。それは許されざることなのだぁ…』

 私は必死にエレサーレに告げた。

「だからこそ、マ・コトを守って欲しいの。マ・コトはこれからたくさんの命を救うわ。そのマ・コトを守って、たくさんの命を黒鋼竜として共に救って欲しいの。マ・コトが救う命が、あなたが奪った命より増えるまで」

 マ・コトも言い募る。

『おじちゃん、わたしまた生まれてくるの、がんばるから。だから、わたしの傍にいて。一緒にいて。お願い』

 私もマ・コトと一緒に手を合わせた。

「お願い」

 エレサーレは泣きながら首を下げた。

 するとエレサーレの胸元から現れていた、邪気の塊となった王様と王妃様が声を上げた。

『私たちは、ここに残りますから。エレサーレ殿は、生まれ変わってマ・コト殿のお傍に行って差し上げてください』

 えっ?だめよそんなこと。

 苦しみ続けるこの人たちの魂は、もう邪気と同化してしまっているから、浄化してあげたい。

『マ・コト様のお話を聞いて、我々がどれほどのことをしてしまったのか、改めてわかりました。私と妃は国の外れの地下洞窟の奥にこもって、罪を償い続けます。あそこはもともと、マ・コト様が亡くなった邪気だまりだったところなので。ですから他の者たちは、どうかもう眠らせてやってください。エレサーレ殿と一緒に、行かせてやってください』

 二人の決意を聞いたエレサーレは、俯いていた顔を上げた。

『ナギ…様ぁ。マ・コト…様は、本当に…もう一度生まれ、てこられるのだな…?』

 私は力強く頷いてみせた。

 神竜たるナギは、神の魂をもっている。そのナギが言うのだから、間違いないと思えた。

「もちろんよ、エレサーレ。ナギもそう言っているわ。それは間違いのないことよ」

 エレサーレは私を見て、邪気の塊となった者たちを見て、鼻づらで光を放っているマ・コトを見て…大きく口を開け、もう一度深い深い息を吐いた。

『わぁ…かった。マ・コト様が…生まれてくるのが怖いと言うのなら…わたしはもう一度ぉ黒鋼竜となり、マ・コト様を…御守りいたそう…』

 そんなことができるのならば、と付け足しながら、黒い邪気の詰まった眼窩でマ・コトを見つめる。

「ええ、私の歌できっと、あなたのことも送ってみせる。私も頑張るから、私を信じて、エレサーレ。だからあなたの内に在る者たちのことも、もう許してあげて」

 エレサーレは白い骨の頭蓋骨をゆっくりと上下させた。

『マ・コト様が…許された、のだ…世界がぁ、許すのであれば…わたしも、許さねばぁ…ならぬだろう…』

 良かった、これであの人たちも開放される。王様と王妃様も送ってあげられるといいんだけど…本人たちが拒絶していては、難しいかもしれない。

『おじちゃん…ありがとう。今までずっと、ありがとうね…』

 鼻づらにしがみつかれて、エレサーレは困ったように少しだけ、苦笑したように見えた。(続く)

第140話までお読みいただき、ありがとうございます。

エレサーレはマ・コトのお願いを聞いてくれそうですね。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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