第137話。目覚めた幼い聖銀竜の子マ・コトと話をしようとする 鞠絵たちだったが、マ・コトはあることに対して泣いて怖がって いた。その理由とは…?
第137話です。
『おお…おおぉ…どうか、どうかお許しください…あなた様をお守りできなかったこのわたしを、どうか…』
しかしエレサーレの目前の空中に浮かんだ、白銀色の光をまとう幼き聖銀竜は、ひたすらに同じ言葉を繰り返して泣き続けた。
『おじちゃん…おじ、ちゃん…』
『ど、どうされたマ・コト様ぁ…わたしに、何か言いたいことがあるの、では…?』
お願いマ・コト、あなたの言葉ならきっとエレサーレに届く。
だから…。
『こわいよう、おじちゃあん』
えっ?
ほろほろと、白銀色の光の粒が、マ・コトの両頬を伝ってこぼれ落ちていった。小さな体をより縮めるようにして、マ・コトは泣いていた。
『わたし、タマゴに戻るのがこわい』
『マ、マ・コト…泣くな、泣かないでおくれ』
おろおろと、エレサーレがマ・コトに白い骨の手を伸ばす。けれど邪気にまみれたその手で抱くことはためらわれたのか、途中でその手は止まった。
すると、ナギが私に語り掛けてきた。
『マ・リエ、マ・コトに話しかけてみよ』
えっ、私が?
ナギは静かに頷いた。
『本当の叔父である我と融合しているそなたの言葉なら、マ・コトに届くかもしれぬ』
なるほど、そうかもしれないわね。
私はそっと、マ・コトに語りかけてみた。
「ねえ、マ・コト。私のことわかる?」
すると小さく縮まっていたマ・コトは顔を上げて、私を振り返ってくれた。
『…うん、ナギおじちゃんと…いっしょの、おねえ…ちゃん』
マ・コトは涙まじりに、それでも懸命に私に応えてくれた。
『あの時は…わたしの言葉を、聞いてくれて…ありがとう』
「いいのよ、マ・コト。あなたの言葉を聞いたからこそ、私たちはここに来ることができたの。ありがとうね」
『…うん』
「ねえ、何を怖がってるの?何で泣いてるの?夢の中では、あなたはおじちゃんに…エレサーレに言葉が届かないって泣いてたと思ってたのだけど、タマゴに戻るのが怖いっていうのはどういうことなの?」
マ・コトは小さな竜の手で涙をぬぐい、懸命に私を見て言った。
『あの時は、おじちゃんに話をしたくていっぱいだったの…でもこうして力をもらって形になったら…タマゴに戻らなくちゃならないって思ったら…それが、こわくなったの』
そして衝撃的な言葉をつづった。
『わたし、また生まれてくるのがこわい』
『ど、どういうことなのだぁ…!マ・コト様はタマゴに、戻れるというのかぁ…!?』
エレサーレが戸惑うのも無理はない。彼はマ・コトが双子だとは知らないのだから。
「そうよエレサーレ。マ・コトは双子なの。片割れのいるタマゴに魂が戻って一つになれば、聖銀竜として生まれてくることができるわ。でもあなたがそうして抱えていると、マ・コトはあなたを心配して離れることができないの。お願い、マ・コトを離してあげて」
私がそう言葉をかけると、エレサーレはおお…と低い声を上げて、胸元の小さな輝きを見つめた。
『そうで、あったのかぁ…わたしが、あなた様をしばりつけてぇ、おったのかぁ…』
その声は涙に濡れているように感じて、私は思わず胸がつまるのを感じたけれど、ここで引くわけにはいかない。
マ・コトだけでなく、エレサーレのためでもあるのだもの。(続く)
第137話までお読みいただき、ありがとうございます。
ようやくマ・コトと話ができましたね。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




