第126話。『一面の光の中、七頭の竜たちだけが、中央に光る大きな人影を抱いて浮かび上がっている。巨大だったというその国をまるまる飲み込む白と金の光は、はるか遠い国からも見えたという。』
第126話です。
二つの月と星々の光だけしかなかった夜の闇の中、七頭の黒い巨大な竜の真ん中に、まばゆい光をまとった大きなヒト型が現れる。
それは同じ詩を繰り返し繰り返し歌い続け、風の竜の長だけが使える、膨大な魔力の風魔法によって、黒く穢れた大地の邪気の上を光で覆っていった。
まるで、浄化の光をふりまく女神のように。
大地のあちこちから、さまざまな声が上がる。
呻くように、囁くように。
『おお…光だ…』
『あたたかい…』
『神が我らを、お許しになったのか…?』
『もう、眠っていいのか…?』
『苦しまなくて、いいのか…?』
『ああ…解き放たれる…』
光で覆われた黒き大地から、無数の小さな光の玉が生まれ始めた。
まるでホタルの光のようにポツ、ポツとあちこちから光り始め、あっという間に大地を埋め尽くす。
それらを黒い大地につなぎ留めていた邪気の鎖が、きらきらとした光に包まれて消えていくと、たくさんの光の玉はゆっくりと大地から解き放たれて宙に浮かび、ゆらゆらと揺らめきながら天に向かっていった。
一面の光の中、七頭の竜たちだけが、中央に光る大きな人影を抱いて浮かび上がっている。巨大だったというその国をまるまる飲み込む白と金の光は、はるか遠い国からも見えたという。
ゾロの背中の上で夢中で歌い続けていたマ・リエは、やがてナギの声で我にかえった。
◆ ◆ ◆
『マ・リエ。マ・リエ、もういい、これで十分だろう』
…はっ!
ちょっと歌に入り込んでしまっていたわ。
歌うのをやめた私は、己が状況に驚いて周囲を見回した。
えっ、これなに?私、なんでこんなに光っているの?
白と金の光が私を包んでいて、何も見えないんだけど。
ハリル様の背中に立ち上がったまま、背後を振り返って見たけれど、すぐ後ろで風魔法を使ってくれていたはずのミンティ・ラナクリフ様も見えない。
戸惑ってきょろきょろしているうちに、急に霧が晴れたように光が鎮まって、周囲が急速に暗くなった。
そうだった、今は深夜なのだったわ。
私を揺らさないようにゆっくりと羽ばたいているゾロ・ハリル様の背中の上に立ったまま、私はふう…と大きく息を吐き出した。
うまくいっただろうか。こんなに集中したのは初めてかもしれない。
「聖銀ちゃん!」
背後から明るい声がして振り返ると、ラナクリフ様が立ち上がって私に向かって大きく両手を広げていた。
「ミンティちゃ、…きゃっ!」
「やった!やったよ、すごいよ!すごいよ聖銀ちゃん!」
「え…え?」
「私たち、やり遂げたんだよ!」
えっ、それってつまり。(続く)
第126話までお読みいただき、ありがとうございます。
鞠絵はうまくやり遂げたのでしょうか。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




