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第124話。邪気に覆われて滅んだ国の中央に到着する鞠絵たち。そこには、濃い邪気に覆われたひとつの影があった…。

第124話です。

「大丈夫だよ、聖銀ちゃん。私たちがついているからね」

「ミンティちゃん…」

「ここは黒鋼竜の結界の中。邪気は入り込んでこないよ。もしものことがあっても、私が風で吹き飛ばしてあげる」

 耳元で囁かれる優しい声は、私をなだめようとしてくれているのだろう。

「はい、私は皆さんを信じています。だから怖くなんてありません」

 するとラナクリフ様の声色が変わった。

「ううん、怖くていいんだよ。あれは怖がらなくてはならないものだから、聖銀ちゃんの恐怖は正しいんだよ」

「ミンティちゃん…」

「でも、皆がいるからね。心配はしないでいいよってことだよ」

「はい」

 そうだ、その通りだ。

 あれは恐ろしいもの。

 でも皆がいて護ってくれるから、案ずることはない。

「聖銀様」

 そのとき、先頭を飛ぶエリン様が振り返り私に呼びかけた。

 風の音がしないので、その声はクリアに私たちに届いた。

「もうじき、国の中央に到達します。我らが知る…邪気の最も濃い場所です。お覚悟は、よろしいか」

 後頭部に白いヴェールをまとった青銀色の頭をしっかりと上げた私は、きりりとまなじりを強くして頷いた。

「はい。覚悟はできています」

 私の中でナギも頷く。

『うむ』

「それでは降下します。あなた様を包んでいる結界がありますので、地上に直には下りません。それに…この辺りの地上は大変邪気が濃くて、とても下りられたものではありません」

「わかりました。あっ…あれは…」

 私のローズクォーツ色の瞳に映ったもの、それは。

 夜空に上がった二つの満月の月明りを受けて、何もなかった地上に大きな影が浮かび上がっている。

 それは真っ黒で、楕円形から細長い何かが伸びた形をしていて、地上に近くなるにつれてはっきりと見えてきた。

 あっ…あれって…!

 私は驚きの声を上げる。

「あれは…黒鋼竜のしかばねだわ…!」

 黒々とした影は、もやがかかったように濃い邪気に覆われていた。楕円形に見えたのは胴体で、細長く見えたのは長く伸びた尻尾だった。

 長い首は見えないから、おそらくは胴体の横に添うようになっているのだろう。

「なんて…大きい」

 同行してくれた黒鋼竜たちはいずれも巨大な体躯だったが、地面に横たわったしかばねはそれより倍近く大きかった。

 私の後ろに乗ったラナクリフ様が、私の耳元で囁いてくる。

「創世の頃の黒鋼竜は今よりずっと、大きかったんだよ」

「そうなんですね…」

 なんてこと。

 あれが、この国の中央にある…意味。

 私は夢の中でマ・コトが言った『おじちゃん』という言葉を思い出していた。

 きっと、あれが…エレサーレなんだわ。

 八千年の間、聖銀竜の子マ・コトを抱いてあやし続ける魂の、しかばね。

 おばば様から聞いた、その壮絶な最期。

 その身にマ・コトを殺した邪気だまりを全て吸い込んでブレスのように吐き、全属性の竜巻をもって国中を破壊し滅ぼした…巨大な黒鋼竜。おばば様の祖先。

 そのしかばねが眼下にはっきりと見えるくらいまで降下したとき、私を乗せたハリル様の前を飛ぶ、おばば様の息子エリン様が私を振り返った。(続く)

第124話までお読みいただき、ありがとうございます。

とうとうエレサーレを見つけましたね。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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