第119話。おばばが話していた邪気祓いのドレスを着ることになる鞠絵。タニアが着るのを手伝ってくれる、そのドレスとは一体どのようなものなのか…?
第119話です。
そしてその日の深夜。
マ・リエはタニアを引き連れて、中庭へやってきた。
その場には長男エリンと話をしているエリアスもいて、彼女を振り返りひとつ頷く。
「お待たせいたしました、皆さん」
飛びつくようにミンティが傍にやってくる。
「その雷虎の娘は納得してくれた?」
「はい。タニアは頭がいいですから。すぐに理解してくれました」
「それは良かった」
エリアスがゆっくり進み出てきて、ひとつお辞儀をする。
「聖銀様、お待ちしておりました。ささ、近くの部屋にお着替えを用意しておりますから、参りましょう」
「お話されていた、邪気祓いのドレスですね?」
「そうです」
「わかりました。タニア、手伝ってくれる?」
「もちろんです、姫様」
「ミンティちゃんもお手伝いする!」
「小娘がおると邪魔になる、ここで待っておれ」
「ええ~っ、やだあ~」
頬を目いっぱい膨らませ、地団太を踏んでいやがるミンティの手を、マ・リエの小さな手がそっと包み込んだ。
「すぐですから。待っていてください。ね?」
「ぷー…。聖銀ちゃんがそう言うなら…しょうがないなあ、もう…」
「ありがとうございます、ミンティちゃん」
「でも、ほんとにすぐ戻ってきてよ?」
「はい、もちろんです。黒鋼竜の皆さんもお待たせしないよう、すぐに戻ります」
ミンティと黒鋼竜たちに一礼して、マ・リエはエリアスとタニアと共に館の中へと入っていった。
エリアスが言った通り、入ってすぐの部屋に通されたマ・リエは、長椅子の上に置かれたドレスを見て、わあ…と声を上げた。
「きれい…」
「そうでございましょうとも。ささ、お着替えいたしましょう」
それは目にもまぶしい純白のドレスだった。
生地は二重になっていて、しっかりした純白の生地の上に、少し透けた白い布が被さっている。
首元は下の生地が、両肩を結び胸元近くまで開いているデザインなのに対し、上の透けた布は首元まで覆っていた。小さなレースのようにひらひらとした布が、何重にも首を包むようになっている。
手首までの白い生地の上に被さった、やはり白い透けた布は、手首にゴムでも入っているようにきゅっと締まったあと、手の甲までふわりとかかっている。
下の生地がウエストで締まったデザインなのに対し、上の透けた布は胸の下で締まって、そのままドレスの下まで流れていた。
「このドレス、裾は足元まであるんですね」
「きらきらしていて綺麗です、姫様!」
タニアがそう声を上げた通り、純白のドレスは二層ともに細かい銀色の光の粒がちりばめられていて、ドレス自体が発光するようにきらきらと輝いていた。
下の純白の生地の胸元には不思議な紋様がびっしりと、やはり白い糸で刺繍されていて、それを覆う透けた布ごしにもはっきりわかるほど発光している。
その刺繍は手首や裾にもほどこされていた。さらに上の布をめくってよく見ると、下の生地は真っ白ではなく、細かい白い模様でびっしりと覆われていて、やはり淡く発光しているのだった。(続く)
第119話までお読みいただき、ありがとうございます。
綺麗なドレスを、鞠絵は着ていくようですね。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




