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第107話。喜ばしい情報として、最後のウロコからの情報を話す鞠絵。その内容とは…?そして鞠絵の耳に、また遠くから声が響いてくる。いったい何の声なのか。

第107話です。

「それからこれが最後のウロコからの情報となりますが、私たちにとってとても喜ばしいことです」

「ほう?」

「なんでしょう」

「お教えくだされ、聖銀様」

 長たちやおばば様が期待をこめて私を見つめる。

 ええ、その期待に応えられるだけの情報だと思うわ。

「実は、ヴァレリア様のタマゴたちと、私が名前をつけた聖銀竜のタマゴたち以外にも、神金竜と聖銀竜のタマゴは残っているようなのです」

「なんと!」

 見事なまでに、全員の声がハモった。

 それは私が思わず耳をふさいだほど大きな声となって、広い部屋の中に響き渡った。

「どこに…という情報までは、そのウロコには入っていませんでした。ただヴァレリア様のタマゴたちと、黒鋼竜に託したナユのタマゴたち以外にも、神金竜と聖銀竜のタマゴは眠っている…とだけ。別のウロコに、詳しい情報を残すとありましたので、もしかしたら欠けたウロコに入っていたのか、それとも別のウロコがどこかにあるのか…」

「というか、ナユ様のタマゴが黒鋼竜のところにあるのですか?」

「それは初耳です」

 長たちが一斉におばば様を見る。彼女はひとつ息をついて立ち上がった。

「もう隠しておくこともないでしょう。そうです、ここにはナユ様が残されたタマゴが眠っております」

「おお…」

「そうだったのですね。黒鋼竜は閉鎖的だとずっと思っていましたが、そんな理由があったのですね。それならば無理もない」

「そこまでして、聖銀様のタマゴを守ってきてくださったのですね」

「ありがとうございます」

 おばば様に向かって、七人の長たちは深く頭を下げた。それは黒鋼竜のことを少なからず誤解していたという、謝意を表するものでもあった。

「皆さま、お顔を上げてくだされ。しかし場所がわからないとは…これは、もしかしたら」

 もしかしたら?

「どういうことですか、おばば様?」

「実を申しますと、この地に移ってくる前に我々がいた元領地にも、ナユ様のウロコが眠っているのではないかと考えております。これについては早急に使いを出し、探してまいります。もしあれば、そのウロコの中に、タマゴの位置についての情報が入っているかもしれませぬし」

 それは確証のあることではなく、おばば様の推測にすぎなかったが、決して有り得ないことではない。

 私はぜひお願いします、とおばば様に向かってお辞儀をし、この件に関しては黒鋼竜が早急に対応してくれることと決まった。

 そしてその後皆が落ち着くのを待って、光竜スーリエ様が、皆を見回して厳かに言った。

「それでは次の議題に移ってもよろしいですかな?」

「そうですね。では七竜の長たちがそれぞれ把握しているほころびの場所と規模を、中央のテーブル上の地図に書きこんでいってくだされ」

 その、時。

 私の耳にまた、遠くから声が響いてきた。

 また…だ。

 黒鋼竜の領地にやってきてから、どうしてこう幾度も声が聞こえてくるのだろう。

 一体何を言っているの?わからなくてもどかしい。

「あの、おばば様」

 私は真っ先に地図にほころびの情報を書き込み終わって、椅子に戻ってきたおばば様にこっそりと聞いてみた。

「なんですかな?」

「あの、ここに来てから何度も、遠くから声が聞こえてくるのですが」

「気のせいではなく、ですか?」

「はい。泣き声のような…子どもの声のようにも思えるのですが、どこから何を言っているのか全くわからないんです。お心当たりはありませんか?」

 するとおばば様は思い当たったことがあるように黒い瞳を見開き、私をじっと見つめた。

「なんと…本当に、まさか、そんなことが」

「はい?」

「い、いえ…なんでもありませぬ」

 何か隠しているのかしら?でも今は、その話をしている時間はないわよね。

 気のせいではない…とは思うのだけれど。この話はあとにしよう。

 私はそれ以上おばば様に追及することはせず、長たちが情報を書き込むのを待った。(続く)

第107話までお読みいただき、ありがとうございます。

おばば様は何か知っていそうですね。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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