第105話。ルイとダグとサラのユニコーン三人に、カルロスについていって帝国の情報を探ってほしいと頼む鞠絵。角があるから只人のふりは難しいという三人に申し出られたのは…。
第105話です。
「なるほど、それは頼もしいですな」
「私は幸いにして、まだ出奔したとは気づかれていないようですから、水竜に操られた挙句に捕らえられていたとでも言って戻ってみます。しかし出来れば、何人か補佐がいてくれれば動きやすいのですが…」
私は頷いて、ユニコーンたちに言った。
「ルイ、ダグ、サラ。あなたたちでカルロスを補佐してはもらえないかしら。できればこの会議に同席していた者のほうがいいと思うし、同族だったら連携もとりやすいと思うの」
すると三人は一様に顔を見合わせて、でも自分たちはマ・リエの傍にいなければ…と言い出した。
「大丈夫よ、私はしばらくはタニアについていてもらうから。それよりも、あなたたちにしか頼めないの。私は何かあった時のために、ここに残っていようと思うの。だからお願い」
両手を顔の前で組んでお願いのポーズをとり、必死に三人の顔を交互に見やると、私の後ろにタニアと並んで座っていたルイが、ひとつ溜め息をついて私を見やった。
「本当に、オレたちがいなくても大丈夫なんだろうな?無茶なことをしたり、遠出したりしないな?」
遠出に関しては、これから出る情報次第であったけれど。
「もし必要があれば、ちゃんと護衛をつけてもらうから」
「………」
おばば様も横から口添えしてくれた。
「もし何かあれば、聖銀様は我らの背に乗せてすぐにでもお送りいたします」
「………」
その言葉にルイはむっとしたように口をへの字にしたが、何も言わなかった。
しばし黙り込んでいた三人のうち、今度はダグが口を開く。
「カルロス殿はいいとして、我らは額に角がある。只人たちの街にカルロス殿の傍仕えとして入り込むには無理がないか?」
すると二人の魔法師たちが手を挙げた。
「我らが協力いたしましょう。魔法をもって御三方の角を隠し、混じりものの魔力も誤魔化します。そのためには我らも近くにいたほうがいいので、我らも同行させていただければ」
それはとても有り難い申し出だった。ダグもそれならば…と頷く。
「ルイ、マ・リエが心配なのはオレたちも同じだ。だがヴァレリア様の居場所と状態を探りださねば、事は進まない。マ・リエのためにも、ここはカルロス殿に同行して協力しよう」
「そうね。私もマ・リエの傍にいたいけれど、それでは何も進まない。この会議に参加して情報を持っている私たちだからこそ、できることもあると思うの」
ルイはううう…と唸ったが、私がまたお願いのポーズをすると、わかった、と難しい顔をしながらも承諾してくれた。
「マ・リエのためなら…」
「ありがとう、ルイ!ダグもサラも、ありがとう!」
「皆で協力して、必ず早急にヴァレリア様の情報を手に入れます」
カルロスが私に向かって敬礼する。それに応えてから、私はあらためて皆に向かって発表した。
「それではカルロス、ルイ、サラ、ダグ、そして魔法師のお二人に、この後落ち着いたらアトラス帝国に向かってもらいます。六人は互いに協力して、ヴァレリア様の居場所と状態を探ってください。それからもう一つ、調べてほしいことがあります」
「それは?」
「何でしょうか」
私には気になっていることがあった。水竜の隷属紋に使われた邪気のことだ。
魔法師たちが持っていた杖の先端についていた石もそうだったが、あれらは比較的新しいものだった。
つまり、新しくできたほころびから漏れ出たものだということだ。
と、いうことは。(続く)
第105話までお読みいただき、ありがとうございます。
ということは…なんでしょうか。
また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。




