第9話 世界の半分をお前にやる。① ポータル
第9話 世界の半分をお前にやる。① ポータル
ガイアは全面ガラス張りの部屋で目を覚ました。 少し遅れて、部屋のドアが開けられる。
「ガイくん、おはよう! 愛しのハルが来たよ」
「おはよ、はぁる」
ガイアは歯ブラシを上下に動かしながらそう答えた。
「この椅子座るね!」
ガイアは洗面台で口を濯ぎそのまま顔を洗い、タオルで顔を拭いた。
「ここはヒンメルって言うより地球に近いんじゃないか? トイレにはウォシュレット着いてるし、建物も師匠の国の物に近いし」
顔を拭いたガイアはタンスから白子が着ていたシャツを取り出し、渋い顔で着ると、ハルと机を挟んだ向かいの椅子に座り質問した。
「そうね、この星は北に行けば行くほど技術力は地球に近くなっていくわね、ヒンメルは真ん中ぐらいでヴァルハラはほぼ地球と同等ね。
じゃないとパパと一緒にこの星に来た人達が不便だからね、逆に自然な暮らしがしたいって言って、ほぼ、開拓が進んでない南の方の国に行った人も意外と多かったらしいけど」
「やっぱりね、懐かしい感じがしたからさ、聞いてみた」
「良かったよ、快適に暮らせそうで、じゃあ早速次の仕事についてお話があるんだけど」
「その事なんだけど、エリックさんと」
「皆まで言うな」
ハルはガイアの唇に手を当てて目を瞑り顔を左右に揺らした。
「分かってるよ、魔王の件でしょエリックさんから聞いたよん!
今日はその事で話があってね、魔王がパパに負けて逃げ込んだ森の近くの村から住民が忽然と姿を消してしまう事件が起こってね、
ガイ君はそれを解決してきてよ!
魔王が関わってたらその時会えるし、関わってなかったら解決したら会えば良いじゃん?」
「そうだな、その仕事受けるよ。 魔王が原因だったら倒してしまって良いんだよな」
「うん、ガイ君の好きにして良いよ」
「わかった、じゃあ出発するか、あんまり遠くないと良いけど」
「ガイくん、時代はテクノロジーなんだよね」
ハルはポケットから手のひらサイズの鏡を取り出し、机の上に置いた。
「これは?」
「ポータルだよ、現地のヴァルハラ職員の居る場所とここを繋げられるの。
これで問題があった時とかすぐに駆けつけられるってわけ! コストが高すぎて全員が持ってるわけじゃないけどね」
「めちゃくちゃ便利じゃん! さすが地球だな!」
「でしょ! じゃあここに手を置いて!」
「おう!」
ガイアはポータルに手を乗せる。 その瞬間部屋中に笛のような高い音が響き渡りガイアの体は鏡に吸い込まれていった。
「ガイ君頑張ってね!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「気持ち悪い」
ワープに成功したガイアは自分の体を確かめるように手を握った。
「誰が気持ち悪いって?」
ガイアの目の前には斧を担いだ男が立っており、ガイアに斧を振り下ろする。
「へぇ?」
ガイアの脳天に斧が振り下ろされ、ガイアは思わず目を瞑り、恐る恐る目を開けると斧は刃が根元から折れて、ただの木の棒になっていた。
「クソ痛い!! 何だよ!」
斧を持った男は唖然とした様子で立っている。
「ヴァルハラから来たやつには毎回やってるんだが、避けるか斧を破壊するかのどちらかなんだが斧を頭で受けて破壊する奴が現れるとは驚いたよ」
「あんたが助けを求めた村の奴か? 随分手厚い歓迎で」
ガイアは嫌味たらしく答える。
「ポータルなたまに変な奴を連れてくる事があってな、確認する為にやったんだ。 本当にすまなかった。
俺はパーシバル、このドルグ村を守る守り人をしている。 こっちが弟子のユーベルだ、よろしくな」
ガイアは茶髪で髪と全く同じ色の目をしており、短い口髭を蓄え、彫りが深く少し出た頬骨が特徴なパーシバル。
青い髪に猫のような鋭い目つきでこちらを見つめ、金色の目をして、頼りない体つきと雰囲気纏った青年ユーベルを前にし、さっきの事をまだ根に持った様に2人の間を通り後方の少女に話しかけた。
「君、名前は何て言うの? 村を案内してくれない?」