第41話 力の向き
41話 力の向き
「お前を殺す!」
健斗の拳が空を切り、ガイアに向かう。
「力は互角! 後は俺が健斗の技を上回れば勝てる」
ガイアは健斗の拳を避け、顎にハイキックをもろに食らわすが、健斗は怯みもせずにガイアを掴むと地面に叩きつけて、ガイアの体ボールの様に地面を跳ね飛んだ。
視界が揺れるし、肺が潰れて息が出来ない。力が互角だとしても儀式で強化されたあいつの体と俺の体じゃダメージを許容出来る幅が違いすぎる。同じダメージでもあいつは1000回殴られないと倒れないけど、俺は5回で限界だ。ならやる事は1つしかない
「悪いが、もう勝負を決める。億人力だ」
ガイアの体はまるで、燃えさかる炎の様にゆらめき、大きくなったり小さくなったりを繰り返した。
「今の俺は億人の人の力だけを受け取った単純で高密度な力の塊、前に進む事ぐらいしか出来ないがそれで充分だ」
ガイアはただ真っ直ぐと健斗に向かって足を踏み出した。ガイアの体は音速を超えた速度で健斗の頭に自分の頭をぶつけた。 辺りは衝撃波で建物は全て吹き飛び、くしくもガイアが1番ヒンメルの街を破壊した形になってしまった。
「終わりだな、多分原形も残ってないだろう。ゲミューには悪いが加減の出来る相手ではなかった」
ガイアの目の前に広がる更地から、男が1人こちらに向かってくる。
「健斗、生きてたのか」
「死ぬわけないだろう。俺が1番強いんだ」
「そうか、ならもう一度ぶつかるだけだ」
ガイアの体は再び炎の様に輪郭が揺らめき、すべてを置き去りにして、健斗にぶつかった。だが、ガイアの体は地面に落ちた水滴の様に人の形を留めずに弾けた。
「止められた?」
ガイアは理解が出来ずにその弾けた体が元に戻るのを待つ。
「人を辞めたなお前」
健斗の服はボロボロに敗れ、上半身か露わになっていたが、体には傷1つ付いていなかった。
「当たり前だ。億人の力を解放したんだぞ。エネルギーで人の形を保てる訳がない。制御も効かないしな」
「そうだろうな。俺の中には仲間のみんなが居る。みんなが力の制御の仕方を教えてくれた。それを器の力で増幅した。俺の力は力を制御する事だ。体当たりをするだけの単純攻撃は効かない」
「だから壁にぶつかった様になったのか、でもお前に勝つにはこれしかない。いつまで止めてられるか我慢比べだな」
「来い、ガイア」
ガイアは体を揺らめかせ、健斗に突進を繰り出す。健斗は片手でガイアの体をとめた。
「無理だよ。もう俺はお前より上の次元に行った、大人しく死ぬんだな」
健斗は拳を構える。
「お前がな」
ガイアの体が健斗に近づくと徐々に体のゆらめきが収まっていき、速度が落ちていく。
ついには健斗の体にガイアの手が触れた時、完全にガイアの体は停止した。
「俺は力を操る。時間が前に進むのも一瞬の力だ。それを0にした。お前の時はもう進む事はない」
ガイアの体が周囲に何も無くなったヒンメルの街に銅像の様に浮いていた。




