38話 太陽
38話 太陽
「やはり通用しないか、ここまでは予定通り、だがここからは私も読み切れていない、あいつ次第になってくるな」
ゲミューはそう言うとトウヤに向かって歩き出した。
「ゲミュー! 俺に近づくな勝負はもうついた! あんたが死ぬ必要はない」
「トウヤ、お前の能力の弱点は大きすぎる所にある。俺を殺してその力を元に戻すのに何分かかる? その間太陽の能力は使えない」
「最初から勝つ気なんてなかったのか」
トウヤは必死に光を抑え始めたが蛇口を全開に捻った水はすぐには戻らない。
「ごめんな、お前は強すぎる。 こうでもしないと足を止められなかった。 俺の本当の目的はヴァルハラの保管庫から心神武器を奪う事だ。今頃は別動隊が武器を奪って逃げる所だろ、奪い出すにはお前の力を不安定にする事が必要だった」
「俺は作戦負けしたって事なのか」
トウヤは体を丸め必死に力を抑えながらそう言った。
「うーん、どうだかな、勇者派には俺より強い奴らはゴロゴロ居たのに本拠地の守りをいくら最強だとは言っても王将であるお前1人にしたのはだいぶ手薄だったな。
各地に散らばった勇者派の人間達を魔物との共存の為に活動させたい気持ちはわかるが」
「お前の思い通りにはさせないぞ、死なせるわけにはいかない」
トウヤはうめき声を上げながら無理に光を自分の中に押し込んでいるようだった。 やがてトウヤの体は元の老体に戻って行き、辺りの崩壊も落ち着いてきた。
「そんな無茶な事したらお前の体がもたないだろう」
ゲミューは力を抑えているトウヤに向かって近づいていった。
「5分前とは状況が一気に変わったな、こうしてお前の命に手が届くお前はやさし」
ゲミューが口を閉じる前にガイアの拳がゲミューの頬にねじ込まれた。
「お前が本当に嫌いだ! 二重儀式までして力を得たのになんだ、結局は口先の戦いでトウヤを弱らせた所を攻撃するなんて、戦いを正々堂々やれとは言わないがお前は卑怯すぎる」
ゲミューはトウヤの拳を受けて少し後ずさったがすぐに口の端から流れた血を拭った。
「ガイア! お前は今回の作戦の唯一の不確定要素だったがここまで計画が狂うとは、お前はこの手で始末する」
「俺も手加減無しだ。お前を殺すよ、全身全霊で」
「良い心意気だ! 最終決戦と行こうか!」
「うるせぇ、どうせなんか企んでんだろ」
ゲミューは背後から先ほどとはひと回り小さいがそれでも充分巨大な灰龍が体から生えてきた。
「本当にこれで最後だ、戦う前にイレイザの心とダンの右腕を自由にしろ」
「この状況で灰龍を操れていると思ってるのか? 無理だよ、この龍はただ暴れるだけだ」
「そうか、なら無理矢理吐かすしかないな」
「定着」
ガイアの雰囲気が変わり何人もが重なったようになる。
「さっきのでコツは掴んだ。 今回は1人を引き出すんじゃなくてみんなの単純な筋力だけを引き出した」
「灰龍!」
龍はガイアに向かい大口を開けて襲いかかる。 ガイアは身を捻りながら大振りの拳を準備した。 龍とガイアがぶつかり合うその瞬間。
「なーんてな」
ガイアは両手を広げ、灰龍に頭から飲み込まれた。
「お前! 何やってるんだ?」
「そのお前の計算が崩れたみたいな表情良いなぁ! このトカゲ本当はそんな怖がる必要はない。 俺の中の奴らに力を借りれば良いんだ」
ガイアの手から赤色のオーラが漏れ出すとその手で灰龍を掴んだ。
「どうして灰龍の中で意識を保っていられるんだ!」
「俺がこんなトカゲに食われる訳ないだろ、さっきは油断しただけだ」
ガイアの体から赤いオーラが漏れ出し、灰龍を赤く染めていった。




