第32話 太陽と太鼓
第32話 太陽と太鼓
「少し熱くなるぞ」
トウヤがそう言うとトウヤの周りの空気が揺らぎ温度が上がり始めた。
「兄者! 雷を!」
「おうよ!」
雷神は雷太鼓をリズム良く叩き続ける。その度にトウヤの体に雷が落ちるが、トウヤは全く気にせず温度を上げ続け周囲の空間が歪み始める。
「弟者! 雷が効かないぞ!」
「兄者! 私が時間を稼ぐ! 最大限溜めた雷をお見舞いにしてやれ」
「任せろ!」
風神は雷神を空中に留め、自分は甲板に降りた。
「来い、何かするなら早くしろ」
「火は空気がなきゃ燃えぬはず!」
風神は風袋を手に持つと風袋は甲板の空気を吸い込み限定的にトウヤの周囲の空気を限りなく薄くした。
「残念、太陽は空気を燃やしているわけじゃない、これをあげるよ」
トウヤは空気を吸い込み続ける風神に向かって何か煌めくものを指先から放出した。
その煌めくものが風袋に入った瞬間に両手を広げたぐらいの大きさの火球に変わった。
「それが太陽だ。 居るべき場所に帰れ風神」
太陽は風袋を飲み込みながら、段々と大きくなり風袋を全て飲み込んだ。
「弟者! 大丈夫か!」
「大丈夫だ!集中しろ!」
風神は体勢を整えるために、後方に後ずさるが体が動かず、徐々に太陽の方に引っ張られていく。
「俺の太陽は引力を持っている。さよならだ風神」
「兄者!後は頼んだ!先に戻っている」
風神は体を太陽に体を飲み込まれながらも身じろぎ一つせず消えていった。
「弟者ぁ! 噂以上の強さだな勇者よ。 この借り物の体どこまで持つか分からんが限界まで上げてみよう」
雷神の体内から雷太鼓が更に飛び出し、周囲に20個ほど浮かんだ。
雷神はいきなり口調が変わり一心不乱に太鼓を叩き始めた。
雷神が太鼓を叩くたびに雷が雷神自身に落ちた。 雷神の体は帯電を始め電気を帯びていった。
「俺の電気は街を何日も賄えるほどの電気らしい、地球での生活の話だがな。 とある女が言っていた。 ま、そいつも死んでしまったがな、遠い昔の話だ」
雷神は太鼓を叩く手を止めた。
「これで全開だ、全力の雷を見せよう」
「来いよ、片付けてやる」
トウヤは腕を上げ、太陽を放とうとしたその時トウヤの腕に雷が落ち、太陽は放出前に阻止された。
「どんなに強い武器でも撃たせず触らせなければ脅威ではない、俺の雷は体の動作の起こりにピンポイントで落ちる。 そうすると魔術の発動や能力の発動を体が行う前に無しにする事が出来るってわけだ。 なんだっけ人体は電気信号で動かしてるだのどうたらこうたららしい」
「そうか、それは大体のやつは殺せるな。 術を無効化出来て、正確で強力で不可避な雷か」
「電光雷轟」
雷神は自分の体に雷を落とし続け、辺りは常人なら失明し鼓膜が破裂するほどの光と轟音を発していた。
「雷は落とすもんじゃない、俺が雷だ」
雷神は雷を体に落とし、纏うとそのままにトウヤに向かい突進をしてきた、だがそれは突進というには余りにも早く雷が横に落ちたようだった。
トウヤの体は雷神に触れた瞬間に全くの踏ん張りも効かずに船から大きく飛ばされ、雷の痺れから解放された時にはヒンメルの端まで来ていた。
「まだ届かないのか、お前の体はどうなってるんだ」
「無理だよ、地球の自然現象と太陽じゃどちらが強いかはバカでも分かる」
雷神の体は右腕が消し飛んでいた。
「そもそも俺は太陽の力を借りなくてもありえないぐらい強い、今のは一瞬片手に力を集めて衝突される瞬間にお前の右腕を掴んだだけだ。後はスピードで勝手に腕がとんでいったな」
雷神の腕は消し飛んではいたが借り物の体だからか傷口からは血が出ず、変わらず皮膚があるだけだった。




