第3話 ヴァルハラ
タイトル変更しました! 前は漢字が多すぎたので、よろしくお願いします!
第3話 ヴァルハラ
「ガイくん起きて」
ガイアの頬に軽く手が触れる。
「あんた誰?」
ガイアは模様が全く無い白い床と全面ガラス張りで外の木々が見える部屋で目が覚めた。
「ここはヴァルハラ寮だよ! パパが作ったの! 私はハル、ガイくんのお世話を頼まれたから、よろしくね! しかも同い年だよ!? やばくない?」
「パパって?」
「パパはパパなんだけど、えっと、勇者! そう、勇者トウヤだよ! 後、この部屋は空き部屋なんだよね、地球の技術力に任して作ったのは良いんだけど、寝る部屋がガラス張りって落ち着かないってみんな言って誰も使わなくなっちゃったんだよね。 角部屋なのに」
桜色で長い巻き髪で見るからに派手な見た目、指や首には数多くの指輪やネックレスにイヤリング。 父とはかけ離れているようにも思えるが、顔は父の面影を備え、凛々しく逞しい顔をしていた。
「部屋の事はまず置いといて、トウヤの娘!? トウヤはどこにいるんだ?」
「パパはさっきどっかに出てっちゃったよ! 1ヶ月とか遅い時は1年ぐらい帰ってこないからね。 聞きたい事が合ったら私に聞いて、てかパパと引き分けたんでしょ? 超すごいね! パパに傷をつけられた団長はこれまでに居なかったのに!」
ハルは巻き髪を指で弄りながらそう言った。
「ありがと、それで俺はここで何をすれば良いんだ?」
「あれ? 素直に力を貸してくれるの?ちょっと意外だったよ」
「トウヤとの約束だからな、あれはほぼ俺の負けと言っていい戦いだった」
「まぁね、凄まじい規模の爆発だったし、パパは咄嗟に太陽を解除して爆発を止めようとしたんだけど間に合わずに大爆発、衝撃で相当な傷を負ったからね」
「そうか、俺も負けたくは無かったからな、ほぼヤケクソだったよ」
「良いと思うよ! 最後まで戦い抜くのって素晴らしいじゃん! ま、爆発で空いた穴を塞ぐためにヴァルハラの職員ほとんどが駆り出されてるけどね」
「それは本当に悪い事したわ」
「いいよん! 仕事だし、とりあえずガイくんが手伝ってくれるのはブチ上げだわ! ガイくんはここの事知らないと思うから手伝って貰う前に説明するね。
ここはパパが作った寮で、訳あってヒンメルで過ごせなくなった人の保護とか、重病人の治療をしたり、重犯罪者の拘束とかヒンメルのサポートとしての機能を果たすための役割があるの。
そして1番の仕事が使える人材の職員が200名、患者や一般寮生、犯罪者が300人行くか行かないかで合計500人ほどで運営してるよ。 そして私がこの寮の責任者って所かな、パパに最近任せられてさ、パパは忙しいからね」
「そうなのか、それでここはヒンメルのどこにあるんだ?」
「ここ、ヒンメルじゃないよ? 地上だよ!」
「地上? 地上に普通の人が生活出来る場所があるのか? 厳しい環境に凶暴な動物達。 到底生活が出来るとは思わないが」
「わざわざ説明ありがと、だから毎年、君達屈強な団長達をパパが招待というか拉致? してきて仲間に迎え入れてるんだよ。 ここら辺の魔物達は全部躾けてあるし、割りかし、ここは安全な地域だしね」
「そういう事か、ならギリギリ納得は出来るな、それで俺は人の器を持ってるやつを見つけてくればいいのか?」
「えっと、そうだねまずは……」
ハルはしばらく俯き考え込んだ様子をみせる。
「そうだ! ガイくんはブル・エリックって知ってる?」
「知ってるに決まってるよ。 ヒンメルの大英雄だし、俺も剣聖ブル・エリックの伝説は小さい頃よく読んでたよ。 ヘカトン島での巨人との戦いで剣が戦いの最中に折れてしまって、咄嗟に巨人の爪を剥いでその爪で剣を作り巨人を倒した話はヒンメルの国民なら一度は聞いた事あるでしょ」
「私は幼い頃からここに居たからそういう昔話とか分かんないけど、とにかく有名な人なんだね」
「うん! 超有名だよ。 俺の憧れだ」
「じゃあ本題のお願いなんだけど、ガイくんにはエリックさんを部屋から連れ出して欲しいの」
「は?」
ヴォルトはハルの言葉に気の抜けた返事しか出来なかった。
「そんなの誰でも出来るんじゃないか? なんで俺なんだ?」
「なんか、最近エリックさん、塞ぎ込んでて元気がないの。 だからせめて日の光を浴びて欲しいんだけど、職員に行かせても部屋に入った途端、みんな殺気に当てられて気絶しちゃうし、だからガイアに頼みたいってわけ!」
「そういう理由ならわかったよ、エリックさんに会ってみたいし、やるよ」
「ありがと! じゃあいつからやる? 2、3日眠ってた後だし、今昼だけど、今日はご飯でも食べてゆっくりすれば? ここの料理気絶するほど美味しいし」
「もちろん今からやるよ、2、3日も寝てたなら尚更体を動かさないとな」
「良いね! 外に職員を置いとくから準備が出来たらエリックさんの部屋に案内してもらってね、後今日からこの部屋好きに使って良いよ、誰も使わないし」
「あぁ、ありがとう」
ハルはドアを開き、部屋を出て行く。
「中々良い部屋だと思うんだけどな、俺は気に入った…………角部屋だし、みんな角部屋嫌いなんかな」
ガイアはガラス張りの部屋から木々を見つめそう呟いた。