第2話勇者の目的
第2話 太陽の勇者の目的
「ほら、1発打ってみろ」
男は両腕を腰に当て、脱力した体勢を作った。 ガイアは言葉を言い終わる、はるか前に殴りかかっていた。
「違う」
ガイアの拳は空を切りいつの間にか視界がひっくり返り、地面に叩きつけられた。
「まず能力、腕力も知らない敵に挑発されたら乗るな。 このように差がある場合は一瞬で制圧されてしまう」
「そんな差はないみたいだな」
男の袖にはコゲのような黒い痕が付いていた。
「これはなかなか、筋が良いな。 初撃の突きが外れた瞬間、そのまま腕を引いて肘でよ瞬時な攻撃見事だ。 危うく腕が飛ぶ所だったな」
「もう、修行は終わってるんでね、上から目線はムカつくな、全力で行く」
「もちろん、むしろ手加減されたら私が困る。 次はこちらから行くぞ。 目を見開け、見失うなよ」
男はガイアと同じようにただ地面を蹴って、加速し殴りかかってきた。
ガイアは未だかつて体験した事が無かったその速度に対応出来ず、正面から胸に拳を喰らい。 地面を何度かバウンドしながら後ろに転がっていった。
完全な検討違いだった。 この男は格上どころじゃない、普通の人間が雨を避けるぐらいの力の差がある。 1発食らっただけでギリギリだ。 ガイアは砂だらけになった服を引きちぎり鍛え上げられた上半身をあらわにする。
「今のは避けて欲しかった所だな、どうだ? もう降参する気になったか? 私はこのまま続けても構わないが」
「あんたが時間をくれたたおかげ充分回復したよ。 確かにあんたは強い。 勇者と言う話は本当だな、ならこっちも奥の手があんだよ。 ケルベロス、定着」
ガイアが呼ぶと、両腕の肘関節の、上あたりに大きな噛み跡が現れた。
「ほう! ケルベロスの器か! 姿を眩ましていたのは知っていたがまさか器の中に入ってるとはなしかも力を自在に扱えるレベルにまで、これは面白くなってきたな」
ガイアの体はさらに筋肉質になり、爪は尖り、歯は鋭くガイアの体さらに全てを噛みちぎれそうなほどだった。
「やろう。 これが俺の全力だ」
「素晴らしい、圧がさっきとは段違いだ! これほどとはな、どうやら私が名乗る価値がある人間らしい。 私はトウヤ 昔は勇者と呼ばれていた」
「この世界の技術を発展させて、ヒンメルを空中に浮かばせた存在。 強いわけだ、ていうかあんた何歳だ? 何百年生きてるんだ?」
「細かい事は気にするな、色々あったんでな、ガイア、勝負の続きのまえに俺が勝った協力すると約束しろ」
「どうせ拒否権はないんだろ、願いを叶えるのはいつだって勝った方だ。 負けたら何も残らない」
「よろしい、なら来い。 俺は地球からこの星に来た、その時に通常の人間は星間の移動の衝撃に耐えれない事がわかった。 だから器というシステムを作り出し物や人を濃縮する事に成功した。 そして200年経った今、器はこの世界に馴染み、そこら辺に居るやつの中にも器を持つ者が増えてきた。 お前は器の中でも人の器を持ってるやつを探し出してスカウトしろ。 人数が揃い次第、地球を再建させる。
ま、お前が勝ったら手伝わなくて良いがな、集中しろここから先は気を抜いたら終わりだ」
ガイアは両腕、両足を地面に着け、爪を地面に食い込ませた。体の重心を後ろ預けると、同時に両足で地面を噛み締め、跳躍の体勢を取った。
ふくらはぎ、太もも全ての筋肉が限界まで膨れ、張り詰めた線が切れたようにトウヤに弾丸のように向かっていく。
そのスピードはトウヤが拳を構える前に眼前へと到達しガイアは獣のように型も何も無く、大振りで拳を振り下ろした。
トウヤの鎖骨あたりに拳が当たると骨が砕ける鈍い音を立てながら、拳が体に食い込んで行く、トウヤは体をそらし拳をいなすとガイアの拳はそのまま地面に振り下ろされ、地面を叩き割った。
「驚きだ」
トウヤはガイアの拳の形に凹んだ肩を見てそう呟いた。
ガイアは地面を割った勢いでまった砂煙に紛れ、間髪入れずに前蹴りを繰り出す。 トウヤはそれを片手でガイアごと弾くと砂煙もその勢いで飛んでいった。
「痛みを感じたのは久しぶりだよ。 私は元から体術は得意じゃないんだ、君みたいにその道を極めてるやつには敵わない」
「それは光栄だな、悪いけどもう楽しい時間も終わりだ。 そろそろあんたを仕留めて帰らないと、寝不足は次の日に響くからな」
「強がるなよ、本当は初撃でほとんど力は残ってないんだろ、ガイア」
「うるさい、もう本当は口を動かすのも疲れるんださっさと来い決着をつける」
「じゃあ私本来の器の戦い方で決着をつけよう。 太陽、定着」
夜だったはずの夜空に太陽が登り辺りが明るくなる。
「はぁ? お前、太陽の器って無茶苦茶すぎるだろ」
「無茶苦茶に強くないと、世界は変えられなかったからね。 さぁどうする? まだやるか?」
「当たり前!」
ガイアは拳を構える。
「そう言うと思ったよ、戦いにこの力を使うのは久しぶりだ、手加減が効かなかったら許して欲しい」
トウヤの背後に直径10mほどの小型の太陽が現れた。
「来なよ」
(なんだあの球体は太陽そのものなのか、ここからでも皮膚が火傷するぐらいには熱い。 近づくだけで死んでしまいそうだ、だがやるしかない)
ガイアはより素早く動き、トウヤに向かって行く。
「そんなに小刻みにフェイント入れる必要はないよ、私の背には太陽があって君が攻撃できるのは前からだけだ。 近づけば近づくほど焼けるがね」
ガイアはトウヤに近づこうとするが、腕が焼け、怯んでしまい身を翻す。
「ちなみに太陽を定着させた時の私の単純か腕力と素早さは元の状態より遥かに上昇する」
ガイアの横に瞬間的に移動したトウヤはガイアの腕を横から少し叩いた、するとガイアの体は物凄い勢いで横滑りを始め、なんとかスピードを殺した頃にはガイアの右腕は関節が逆に曲がり使い物にならなくなっていた。
「破ァぁぁぁ!!!」
ガイアは大きく息を吸った後雄叫びを上げた。
「体燃焼、獄火!」
ガイアの体は紫の炎に包まれ、皮膚が少しずつ爪ほどの大きさほど剥がれ灰になっていった。
「どうせ、太陽の熱で焼かれると分かって、自分を燃やして身体能力の強化か! ピンチの時に守りじゃなく攻めにでるその姿勢! 気に入ったぞ!」
ガイアは今までの19年間の中で1番速く鋭い、スピードでトウヤに迫っていった。
「見事だが、これで終わりだ」
トウヤは自分の体の全面に太陽を移動させた。
ガイアは構わず突っ込んでいき、太陽に手を触れた。
「今だ! ケロ!! 全部ぶちまけろ!」
その瞬間ガイアの胸が一瞬何倍にも膨れると一気に口から紫の炎が放出された。
「お前! その炎はまず………」
獄炎と太陽が触れた瞬間、太陽はその場で大爆発を起こし、地上にどこまでも深く先が見えない穴を開けた。