第17話世界の半分をお前にやる⑨ 時計修理魔術師 辻褄合わせ
第17話世界の半分をお前にやる⑨ 時計修理魔術師 辻褄合わせ
「お前!! 魔王様賜った大事な大事な時計を!」
「あの騎士の攻撃が掠ってたのか、どうするか」
「貴様が間抜けなのが悪い、もうこいつは殺すしかないな」
ヒルゼはユーベルの首筋にナイフをより強く当て、そこから血が流れ出た。
「待て待て待て! 殺すな! 何か手があるはずだ」
「うるさい、もうこれしか手はないだろ」
「僕を殺したらヒンメルの住民達を暴れさせるぞ!」
「どういう事だ!」
ガイアが声を荒げるとヒルゼがユーベル頬を引っ叩いた。
「喋れ」
「この騎士達を操った時にそれと一緒に一般市民達も大勢操った。 僕が操れば死ぬまで市民を殺し合わせることも自殺させる事も出来る。 保険ってやつだよ、僕の崇高な目的な邪魔された時の為の、分かったら大人しく僕を離してくれ」
「このガキ気に食わないな、今すぐ殺したい所だが、魔王様の手下として一般人が被害を受けるのは避けたい所だな」
「俺が直す」
「貴様ごときが治せるわけがないだろう、魔王様が作った時計だぞ」
「俺の中の器を使う、ユーベルを見てて俺の器の力が分かった。 俺の器の力は記憶だ。 俺の中に居る奴らの記憶を引き出す」
「好きにやれ、お前ら人間の不始末だ」
「人々の記憶の回路を、辿り、即席の時計修理魔術師を作成する」
ガイアの荒々しい雰囲気が穏やかになり全身の逆立つ毛が落ち着いてきた。
「お前メガネなんてかけてたのか?」
「今俺の中に居る、時計屋や魔術師や、整備士、いろんな奴らの力を一瞬借りる。 この時計の構造は…………」
ガイアの目が緑に淡く光ると、指の先から細い箸状に魔力を留め、凄まじい速度で時計を解体していった。
「良し、大体分かった。 完全に直すのは無理だが一度なら発動させられる」
ガイアは腕時計の部品を組み替え、指輪を2つ作るとそれを中指も親指にはめた。
「ヒルゼもう良い、離してやれ、問題は全部解決した」
「解決したってどうするんだ、こいつをもう根から腐ってるぞ、人を殺して自分の目的の為だけに力を使うだろう」
「だから全部元に戻す。 時計を限界まで強化した、その代わり一度きりだが、ユーベルだけじゃなくてこいつに操られた村人、ヒンメルの騎士1年前まで、時間を戻してそれぞれ都合の良い記憶を用意する。 その周囲の人間の記憶も改竄して」
「そんなの魔王様の時計にない能力じゃないか! 人の記憶どころか時間を巻き戻してその周囲も変化させるなんて」
「それが俺の器の力だ物や人や何でも力を増幅させる。 ほぼ無限大に」
「これだから器は嫌いなんだ。 能力が無茶苦茶すぎる。 1人で全てをひっくり返す」
「本当に俺もそう思うよ。 ヒルゼには事の顛末を魔王に伝えてほしい、時間の辻褄を合わせたら森で起きた村人の失踪も無くなって魔王から俺が時計を貰ったという事実だけがなくなる。 俺は魔王に伝言を伝えにここに来ただからヒルゼから事の顛末を話してほしい」
「わかった、伝えよう」
ヒルゼはユーベルを踏みつけた足を離すと腰のナイフケースにナイフをしまった。
「お前らは僕が作る新しい世界に絶対に入れないからな! 旧世界で死ね!」
「わかった、わかった、お前は性格から直してやるから。 ヒルゼ手を繋いでくれ、時間の巻き戻しにヒルゼも巻き込まれちゃうから」
「良いだろう、光栄に思え」
ヒルゼはガイアに上から偉そうに手を出すと、ガイアはそれを見て少し笑いながら手を握り人差し指と親指を指輪を擦り合わせた後指を鳴らした。
その瞬間周囲は真っ暗な闇に包まれ何もない空間にガイアとヒルゼだけが取り残され、ポラロイド写真の様に次第に風景と地面が戻り、2人は村の入り口に立っていた。




