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青団テーマ決め

 自己紹介を無事? 終えてようやく本題へと入る。


「えーっと……。まずは『テーマ』からかなー」


 自然とギャル先輩が教壇に立ち、仕切りのポジションに入ってくれる。最高学年で自己紹介も回してくれたし、当然といえば当然。

 ちなみに筋肉ダルマ先輩は先程の自分の失態を反省しているのか、目を瞑ったまま腕組みをして微動だにしなかった。


「テーマ?」


 右も左も分かっていない1年生2人は首を傾げてギャル先輩へ疑問の念をぶつけた。


「そ。応援団は格団毎にテーマを決めてそれに沿って応援合戦をするんだ」

「例えばどんな感じですか?」


 朝倉くんが聞くと「そだなー」と天を仰いでギャル先輩が思い出す様に呟く。


「ウチらは『青団』だから『青色』な物がテーマにふさわしいかも」

「そうですね。去年やった時もそんな感じで決めてましたし」


 ギャル先輩の言葉に雫が頷きながら肯定する。


「お。星野は経験者?」

「はい。去年やりました」

「まじか。経験者いるならありがたいな。ちなみに去年はどんな感じだったん?」

「去年の私達のクラスは『黒団』だったので、全員で学ランを着ました」

「あー! そういや、そんな黒い集団いたな。あはは」


 思い出したかの様にギャル先輩が手を叩いて軽く笑う。


「――ま、そんな感じで『青団』のテーマを決めていきたいんだけど――堂路なんか案ある?」


 自然の流れで俺が当てられ、瞬時に青といえばと脳裏に思い浮かぶ。


「『空』ですかね」

「なるほどね」


 安直な考えだが、ギャル先輩は素直に受け入れてくれて黒板に『空』と書く。


「――ほんじゃあ……五十嵐。何かあるか?」

「あ……。えっと……」


 いきなり当てられて五十嵐さんは少し動揺しながら眼鏡をいじる。


「何でも良いぞ? 思った事言ってくれたら」

「――『海』……です……」

「はいはいはい。海ね」


 ここまで王道の2つが出て納得のギャル先輩は『空』の横に『海』を書く。


「朝倉は? なんかある?」

「――えーっと……」


 朝倉くんは頭を掻きながら考えていた。

 確かに、いきなり『青といえば』のお題に対して『空』と『海』以外の答えがパッとは出ないな。


 すまないな1年坊主。パイセンが王道を取っちまって。ま、これも試練と思えや。


「――『かき氷』……ですかね?」

「かき氷?」


 ギャル先輩が微妙に首を傾げた。


「あー。分かるわ。ブルーハワイだろ?」


 王道を取ってしまった軽い罪悪感と、彼の発言が大いに賛同出来た事で、助け舟って程ではないが、声に出して言うと、朝倉くんは「はい」と頷いた。


「かき氷といえばブルーハワイっすよね?」

「だな。あれ食わなきゃ夏じゃないな」

「分かります! 俺も堂路さんと同じで、あれ食わなきゃ夏って感じしません!」


 1、2年の男子2人が盛り上がりを見せるとギャル先輩が反論してくる。


「は? かき氷は『いちご』だろ」


 その言葉を雫が受け取り「ですね」と頷き肯定する。


「だよな? 星野」

「ええ。日本のお祭りに行ってかき氷の『いちご』を食べないのは、それは最早お祭りに行った、とは言えません」

「あれを食べて『あ、夏だわ』って感じるんだよな」

「そうですね。それを『ブルーハワイ』だなんて……。くく」

「お子ちゃまだよな」


 2、3年女子がブルーハワイを馬鹿にしてくるので、こちらも反撃する。


「いちごの方がお子ちゃまだわー」


 それを言うと朝倉くんも便乗してくれた。


「ピンクを追いかける……。いつまでも童心でいたい表れですかね」


 1年生が大人ぶると何でこうも腹ただしいのか。だが、これは俺にではなく2、3年女子への口撃である。

 それが結構効いたのか、軽くギャル先輩が舌打ちをした後に「五十嵐は?」と問う。


「五十嵐はいちご派好きだよな?」


 ギャル先輩の問いに「あ、えと……」と戸惑う五十嵐さん。


「決まっています。女の子ですから」


 雫の追撃が入って「あの……。その……」と更に戸惑ってしまう。


「おいおい星野。女の子だからっていちご好きとは限らんぞ」

「そうですよ。――五十嵐? 別に良いんだぜ? 何も変じゃない。ブルーハワイ派だよな?」


 男子2人の言葉に「あわ……。あわわ……」と戸惑いを加速させる。


「お前ら星野を困らせるなよ」

「元を言えばギャル先輩が五十嵐さんに話を振ったんでしょーが」

「待て待て待て待て! 誰がギャル先輩だ!」


 あっと……。つい、熱くなって心の中での名称が出てしまいギャル先輩は苦笑いをする。


「ギャル先輩――ぷっ……」と雫が吹き出し、つられて1年生2人も小さく笑う。


「――あれ? ちょっと待って。もしかして定着しちゃった感じ?」

「良いあだ名ですよ」


 そう言うと「なら、いっか」と軽いノリで言う。

 良い人だな。やっぱり。


 そんな良い人のギャル先輩だが、スタスタと教壇を降りて筋肉ダルマ先輩の後ろに立ち、軽く頭を叩く。


「己はいつまで寝とるんじゃ!」

「――ぬ? 寝てないぞ!」

「今、大事な話してんだよ! お前も参加しろや!」

「ふむ……。お前らの意見はしかと聞いていたが――甘いな」

「――あん?」

「宇治金時こそ至高だろう! なにが『いちご』だ! なにが『ブルーハワイ』だ! かき氷の真髄に辿り着いていない者共よ! 俺から言わせたら全員ガキだな!」


 この言葉を聞いた瞬間に派閥争いをしていた2つの流派が1つになるみたいな結束が生まれた。


「この空気でそれ言うのはないわ」

「確かに美味しいですけどね」

「今は『いちご』か『ブルーハワイ』かの話をしているのに」

「――私が言うのもなんですが……。それは……」

「筋肉ダルマ先輩は寝ていて下さい」


 最後に放った俺の言葉に「筋肉……ダルマ……?」と呟いた後にYシャツをめくり、俺へと上腕二頭筋を見せてくる。


「――ハッ! ドヤっ!」

「いや……凄いんですけど……自分で『ドヤ』って言う人初めてみました」

「堂路。中々良いあだ名をくれたな! 悪くない。悪くないぞ!」

「そ、そっすか……」


 やっぱりこの人危ない人だなっと思った。

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