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体育祭の準備期間

「――はーい! じゃあ今から体育祭の出場種目を決めて行きたいと思いまーす」


 5限のチャイムの後、葛葉先生は窓際の端っこにちょこんと座り、教壇に立つ完士が仕切りをやる。

 先程までの涙目は無くなり、切り替えて皆の仕切り役に徹する姿は流石は執事さん。辛い仕事だから切り替えも早い様だ。


 一応、生徒の自主性を尊重するとの事で、学校行事系はクラス委員等が中心となり進行していく。


 黒板には今年度行われる体育祭競技が書かれていた。

 個人競技や団体競技など、どれもこれも字を見ただけでどんな競技か容易に想像出来る。

 変な名前の何をする競技なの? みたいな物がないのは良くも悪くも普通の公立高校だなと実感出来る。

 変な競技は経験してみたい気もするが、それは怖い物みたさの人間の欲求みたいな物で、絶対に後悔するやつだから、無くても良いや。


『学年別団対抗リレー』と『2年団対抗綱引き』の下には『全員参加』と書かれているので、これには必ず出場しなければならないみたいだ。


 ちなみに『団』とは格学年、クラス別に色分けがされており、例えば、1年A組、2年A組、3年A組が『桃団』というチームとなる。


 A組は『桃団』


 B組は『赤団』


 C組は『橙団』


 D組は『黄団』


 E組は『緑団』


 F組は『青団』


 G組は『黒団』


 このように色分けされる。


 俺達2年F組は『青団』で、1年F組と3年F組とチームを組んで優勝を目指す事になる。




「――えーっと……。一応黒板に種目は書いたんだけど……。先に各クラス男女1人ずつ応援団をしなければならないんだけど――やりたい人いる?」


 完士の言葉に教室内が軽くざわつく。


「応援団か……」

「だるいよね……」

「あー、これ決まらんやつやわ」


 そんな台詞が飛び交う教室内。


 確かに、応援団は居残りで放課後練習がある為、部活やアルバイトで忙しい高校生には都合が悪いのかもしれない。

 ただ……去年の応援演説を見る限り楽しそうではあったし、実際楽しかったとの声を聞いて来年もまたやりたいと言っている奴もいた。それは俺の良く知る人物だ。


「私やりまーす」


 長い戦いになると思われた教室内に響き渡る声はまるでメサイアの様であった。


「雫ちゃんやるの!? すごーい!」

「おお。星野がやるのか。意外だな。これはありがたい!」

「あ、そういえば雫ちゃんって去年もしてたよねー。カッコ良かったもんねー」


 皆はまるで女神を見る様に彼女に注目し、称賛の声をあげる。


 雫の奴……今年もやるのか……。去年はくじでババ引いたって言ってて少し愚痴ってたけど、体育祭が近づくにつれてイキイキしてたもんな。


 そんな風に思っていると俺のスマホが震える。


 震えた長さからメッセージを受け取ったみたいだな。


 こんな時間にメッセージを送ってくるなんて広告か何かだろう。


 そんな事を思いながら前の席の前田を壁にしてスマホの画面を見ると――雫だった。


『手上げろ』


 その短い文だけで彼女が俺に何を言いたいのか瞬時に理解する。


 おいおい! マジか!? マジで言ってんの!?


 この時、クラス中は雫の事をメサイアなんて思っていただろうが、俺だけは悪魔にしか見えなかった。

 

 しかし……ここで断ったりなんかしたら、オヤツ抜きのご飯は野菜中心になってしまう。それは偏食マスターの俺からすれば死を意味する。それは避けなければならない。


「――女子は星野さんで決定で……。男子は――」

「はい」


 完士が男子はどうするか悩んでいた所に俺はしぶしぶと手を上げる。


 クラス中の視線が俺に集まる。


「あれ? 堂路。一ノ瀬さんじゃないけど良いのか?」

「そうだよー? 瑠奈ちゃんと一緒が良いんじゃないの?」

「あれ? もしかして雫ちゃん狙いとか?」


 おーほっほーい! 待て待て待て待て! ど偉い違いだな! お前ら。雫の時と全然違う反応だな。こちとら応援団入らなきゃ死活問題なんだよ!


「ふふ。もしかして浮気……ですか?」


 隣の席のお嬢様がそんな事を言ってきやがる。


「なんだよ浮気って……。つか、俺は去年の見て楽しそうだったからやるの!」


 俺の言葉にクラスメイト達は疑いの目を向けてくる。


「またまたぁ」

「瑠奈ちゃんだけじゃなく雫ちゃんも狙うとか――」

「可愛い子ばっかり狙ってサイテー」


 何で評価が下がっとるんだ……。訳分からん。


 この訳の分からない状況を作り出した当人はクスクスと笑ってやがる。ドSかよ……。




♦︎




 応援団が決まった後は応援旗のデザイン作成と垂れ幕作成も決めなくてはならなかったのだが、それは我がクラスの美術部である中里(なかざと)さん達が中心となりすんなりと決まる。


「――オッケー! それじゃあ先に決めたかった事は決まったから、本題の出場種目を決めていきたいと思いまーす!」


「おー!」と、ようやく本題に入りクラスのボルテージが上がる。

 それを見て葛葉先生が小さく拍手をしていた。


「それじゃあ100m走から――出たい人ー!?」


 そんな感じで完士が1つ1つ挙手制で出場種目を決めて行く。




「――それじゃあ男女混合二人三脚出たい人ー!?」


 段々と出場種目が決まっていく中で、それまで沈黙を保っていた隣の人物が、ようやく獲物がやってきた肉食動物の如く手を上げる。


「はいっ!」

「お、一ノ瀬さん。二人三脚ね。――他は? はい、はい! 女子は決まったよー! 男子ー! いないかねー?」


 まるで市場のせりの様に他の人に声をかける完士だが「あのー」と瑠奈がそのまま言葉を続けた。


「私の相手、指名しても良いですか?」

「――あ、うん。オッケー」


 完士が軽く言うと瑠奈がまるでカットインが入ったかの様に俺を見てくる。


「時人君。よろしいですか?」


 そう言った瞬間にクラスメイト達が囃し立ててくる。


「うわー。二股だー」

「女の敵ー!」

「うらやまけしからんぞー」


 あー……。自動的にクラスの評価が地に落ちていく。俺がいったい何をしたというのだ……。


「時人? 良いか?」

「いや、二股だの、女の敵だの言われたらやりたく――」


 俺の言葉が終わる前にクラスメイト達が言ってくる。


「一ノ瀬さんの誘いを断るなー」

「女の子が誘ってくれてるのにサイテー」

「女の敵ー」

「どないしろっちゅうねん!」


 何しても評価が下がるとか、嫌な世の中だな! チクショーが。


「――ふふ。早く私と婚約しないからこういう事になるんです」

「お前鬼だな」


 このクラスには鬼と悪魔がいるらしい……。とんでもないクラスだわ……。




 最新のパワ○ロを買ってどハマりしまして……笑

 いやー。久しぶりに12時間位ぶっ続けでプレイしましたよ。超面白いですね。個人的に神ゲーです。


 今回もお読み頂いてありがとうございます!

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