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第八話 時の魔女

※時の魔女の年数を四百年前から六百年前に変更しました。

 自分の目的がはっきりとしたユアンは先ほどと比べて明るくなっていた。


 「それで?なんで時の魔女がここにいんの?」

 「わしのことはユニバでいい。んーまぁ強いて言うなら誰にも邪魔されず静かに過ごしたかったからかのぉ」

 

 ユニバは紅茶を啜りながら本をめくっている。確かにここなら誰にも邪魔はされずに過ごすことはできそうだ。


 「だからって霧を濃くすることはないだろ」

 「ああでもしないとお主がここに来なかったろう?」

 「まさか俺を呼ぶためにこんなことを?」

 「それ以外に何かあるか?わしはお主と話したかったからな。ここに来させるように幾つもの未来の中からお主がくるように仕向けんたんじゃ」


 この大掛かりな仕掛けは全て俺を呼び寄せるために仕組まれたものだった。つまり俺は餌に誘き寄せられた魔物と同類と同じだ。少し落ち込むユアンにユニバは慰めるような言葉をかける。


 「まぁそんなにガッカリするな。これでお主はやるべき事がわかったのだから落ち込むことはない。それに...大事なものが何かわかったのならそれでいいじゃろうが」

 「まぁそうだな。てか、なんで時の魔女って呼ばれてるの?「未来予知」が使えるから?」

 「ふっふっふ!よくぞ聞いてくれた!わしが時の魔女と呼ばれている所以は時を止める事ができるからじゃ!」


 ユニバは自分のことを話したいのかそれともただ、元々このテンションなのかいずれにしろテンションが高い。


 「時を止める?冗談だろ、そんなことできるわーー」


 目の前からユニバの姿はなく目の前から消えてしまった。


 「え?」

 「ここじゃ」


 ユニバはユアンの背後でお茶を飲んでいた。

 全く気づくことはなく、身体強化をして動けば多少の魔力が体から放出されるのに全く反応がなかった。


 「どう言う仕掛けだ?」

 「さっきも言ったじゃろうが。わしは時を止める事ができるとな。まぁそれでも三秒が限界だがな...」


 三秒...強者同士の戦いなら三秒はとっても長い時間になる。だが、それでもユアンは信じる事ができなかった。


 「冗談だろ?そんな事ができるわけないだろ!」

 「冗談も何もこれが真実なのだからな。わしは本来光属性と闇属性の二つの属性を使う魔道士じゃった。六百年前、わしは国に認められた宮廷魔道士長をしていた。ある日魔術を生業とする集団を捕まえたとき、ある禁忌の書物を手に入れたんじゃ。その本の中身はわしの研究意欲をそそるものばかりで気づけば宮廷魔道士長の仕事を放り出して研究ばかりに力を入れていた。本を全て読み尽くした時、わしはもっと魔術を研究したい一心じゃった。仲間の宮廷魔道士に協力してもらい本に書かれていた最後の実験を行った......」


 ユニバの言葉はだんだんと声のトーンが下がっていく。この後の展開はスキルを使わなくてもなんとなく想像ができた。


 「そ、それでどうなったんだ?」

 「結果は失敗。そのせいでわしの仲間の命はなくなりわしも光属性と闇属性の力を失ってしまった。だが、その代償でわしは時を止める魔法と不老の力を手に入れた。これが時の魔女と呼ばれることになった所以じゃ」


 ユニバの表情はどこか寂しそうだった。


 「まぁ今ではそんなこと気にしてはないがな、昔の話じゃ」

 「でも、その話を聞いて信じろって言うほど俺は物分かりがいい方じゃないぞ」

 「はぁ全く頭の硬いやつじゃな。まぁいい、一旦外に出ようか」


 そう言われて外に出る。外に出るとうっすらと霧が出ていて最初よりも霧が引いている。この霧がいつもこの森で確認されていた濃度だと確信した。


 「スキル、属性魔法なしで身体強化のみの体術で軽く運動をしようじゃないか」

 「いいけど、これで何がわかるの?」

 「いいからいいから、ほれ始めるぞ」


 ユニバは身体強化をしてユアンに襲いかかる。ユニバの身体強化は一切無駄が無く、強い魔力を込めているのに魔力が体外へと放出されないようにちょうどギリギリまで押さえ込まれている。これができるのは一流の魔道士でもできる人は少ない。俺でもここまでは無理だ。そして殴りや蹴りの威力はケントと同じ威力をしている。身体強化のみで戦ったらユアンはケントには勝てない。それと同等と考えるとこのユニバとの運動では勝ち目がない。


 ユニバは一通り攻めると距離を置いた。


 「ふぅ...これでわしの身体強化の強さがわかったか?」

 「ああ、確かにすごいよ。こんなことできるのはそうそういないだろうね」

 「そうじゃろう、そうじゃろう。よくわかっとるじゃないか」

 「でもなんで身体強化のみで?なんの意味があるんだ?」

 「まぁ慌てるな。今からわしはお主に時魔法を使って攻撃を仕掛ける。お主は好きなように防御してくれ。もちろんスキルや魔法もありだ」


 流石にこれだけバカにされれば少し頭にくる。ユアンは全力で攻撃を回避してやろうと思っていたが、そう簡単にうまくはいかなかった。

 ユアンは「未来予知」と「透過」を使ってユニバの動きを見ようとしたが、また目の前から消えていた。必死に全身を透過させてユニバからの攻撃を回避する。


 「やるではないか!」


 ユニバは背後に回っていたらしく背後から蹴りをしてきたつもりだったが、ユアンの「透過」で攻撃が当たらなかった。ユニバを一眼見ようと攻撃が通り抜けた瞬間に一眼見ようと思ったが、またしても姿を捉える事ができなかった。


 「「未来予知」を持っているやつと戦う時は相手の視野に入らない事がベストじゃよ」


 ユアンの腹部にユニバの攻撃が入る。


 「ぐふっ!」


 全くどこから攻撃されているのかわからない...そして威力が高い。見えないし攻撃が防げないとすればどうすることもできなかった。次々とユニバの攻撃が当たるが、ユアンは最初の一撃を防いだだけで後の攻撃は全て受けてしまった。


 「はぁはぁ......」

 「これでわかったじゃろ。わしの時魔法の力を」


 流石にここまでやられれば信じることしかできなかった。


 「まぁわしの時を止める能力は相手が感じることができないので体で覚えてもらうしかないんじゃ。じゃがこれでお主も勉強になったろ?「未来予知」の戦い方は相手に姿を見せないように戦うのがベストじゃよ。まぁお主と戦う相手だとこの世界ではわししかおらぬから安心せえ」


 久しぶりに修行というものを受けた気がする。でも、このレベルの修行はレインさんと同じぐらいなのでできればもうやりたくないと心に思っていたユアンだった。


 「そうじゃ、お主もう帰るんならこの魔石を持っておいてくれぬか?」

 「いや、失くしそうだから無理」


 ユニバの提案に速攻で否定するユアン。


 「この魔石にはわしの魔力が込められていてな離れていてもお主がどこにいるかなんと無くわかるんじゃよ。お主いつも手放さないものとか身につけておらぬのか?」

 「んーこの刀とか?けど、この刀は俺の魔力しか入らないぞ?」

 「一応貸してみな。ふむふむ......よし出来たぞ!」

 「はや!てか、どうやって!?」

 「お主の魔力しか入らないのなら極限までお主の魔力に似ている魔力で合成したまでじゃよ。そしてそこからわしの魔力に変化させて終わりということじゃ」


 ドヤ顔で大きな鼻息をしているユニバを見て少しだけイラっとするユアン。


 「普通そんなことできないだろ...」

 「魔力の性質変化などわしにしたら朝飯前と同じことじゃよ」

 「ああそうかよ。じゃあ、とりあえず帰るわ。ユニバはまだここにいるのか?」

 「そうじゃな...もう十年以上はここで過ごすつもりじゃ。わしがここにいることは極秘だとルーカス王に言っておいてくれぬか?もしふざけて会いにくるようだったら国を滅ぼすと言っておいてくれ。頼んだぞ」


 そう言ってユニバは大きな大木の中へと戻っていった。

 これで時の魔女が住む濃霧の森を出てユアンはクローム王国の王都へと戻っていった。

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