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第一話 出発

 三日間の月日が立ち、クローム王国に向けて出発することになった。一日前にはザルク公爵が王都に着き馬車での移動を王都で休んでいた。もちろん俺とアイの準備はとっくにできているのでいつ出発してもいいように準備はできていたが。

 朝十時、王城の前に豪華な馬車が用意されていた。通常の馬車よりもサイズは大きく大人が六人ほど乗れるような馬車だ。見た目も豪華で装飾品などがつけられており、いかにも貴族が乗るような馬車だった。


 「さて、ユアン君、アイちゃんもう乗っていいよ」


 すでに馬車に乗っているザルク公爵に乗るように促される。


 「あの...俺たち護衛なんで馬車に乗るとかは...」


 ユアンはことわりの言葉をザルク公爵に言うが、ザルク公爵もその返しを予想していたのであろうか。予想通りというような顔をしてユアンをニヤリと見つめていた。


 「いや、これは命令だよ?ユアン君。護衛としてついてくるなら護衛主の命令は絶対だよね?」


 ザルク公爵の言葉に返答できなかったユアンはチラッと横にいるアイに視線を移したが、豪華な馬車に乗れると知ったアイはユアンとザルク公爵の会話など耳にも入っていない様子で馬車に見惚れていた。それを見てユアンは肩をガックリと落とし、渋々馬車へと乗った。


 「それでザルク公爵。私って隣国に着いたら何をすればいいんですか?」


 まだ特にやることを伝えていないアイは何をすればいいのかわかっていなかった。


 「そうだなぁ。ユアン君は森に調査しに行っちゃうから、アイちゃんは僕の護衛か負傷者の手当とかしてくれたらいいかな?基本はユアン君と一セットだけど、濃霧の森は何が起きるか危険だからユアン君一人で向かってもらうことは知っているかな?」

 「はい聞いています。その時はザルク公爵の護衛をしていればいいですか?」

 「うん。それで頼むよ。クローム王国に着くまで三日はかかるから各自寛いでいていいよ」

 「「わかりました」」


 クローム王国に着くまでかなり時間がかかる。暇していたユアンは何か新しい魔法を開発しようかと思い馬車の扉を開け上に登った。


 「ちょっとユアン!?」

 

 いきなり外に出たため、何かあったのかと思いアイは驚いた様子だった。


 「大丈夫。新しい魔法を創ろうかと思っただけだからさ」

 「それだったら何か言ってから外に出てよ。急に出たから何かあったのかと心配になったじゃん」

 「ごめんごめん。アイは中でゆっくりしててよ」


 そう言ってユアンは馬車の上であぐらを書いて新しい魔法のイメージを咲かす。


 「防御系...いや、攻撃系でもいいな...雷魔法を軸として考えて...空から雷を落とす魔法にするか...いや、それだと雷撃(サンダーボルト)と同じだ」


 ぶつぶつとつぶやくユアンは二十分ほどで新しい魔法のイメージが固まった。


 「これでいいか。あとは魔法を試したいけどここで練習すると大変なことになるからなぁ...やめとくか」


 大規模な魔法を放った場合、アウスト王国に帰った時に陛下に大目玉を喰らうことは確実にわかっている。ぐちぐちと文句を言われるのは目に見えているので撃たない方が賢明な判断だろう。

 ひとまず考えがまとまったユアンは再び馬車の中へと戻っていく。


 「あれ?もう終わったのかい?」


 読書をしているザルク公爵が話しかけてきた。


 「はい。一通り考えはまとまったので今度実戦してみようかと...今魔法を撃ったら帰った時に陛下に何を言われるか堪ったものではないので...」


 と苦笑いしながら答える。ユアンの言葉を聞いて、それほどの威力なのか...とザルク公爵は生唾をごくりと飲み込んだ。


 「とりあえず、今はゆっくりでもしてたらどうだい?ほら見てみなよ、アイちゃんなんてぐっすりだよ」


 ザルク公爵が指を刺す方を見てみると、窓側に寄りかかってうたた寝をしているアイを見つける。


 「よく大貴族の馬車で寝れるよな...」

 「あははは、そんなに気にしなくていいんだよ?君たちとは随分と長い付き合いだし、賢者様だからね。このぐらい全然平気だよ」


 そう言ってもらえて少しホッとする。もし、不敬を働いたら不敬罪と言われてもおかしくはない。そうなった場合死にたくないので、国を脱出するしか手はない。


 窓に寄りかかって寝ているアイを起こさないように、寄り掛かる場所を窓ではなくユアンの肩に移動させた。


 「優しいんだね」

 「たまにはこういう事しないと...」


 ユアン達三人はゆっくりと馬車に揺られて目的地であるクローム王国に到着した。

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