第九話 出発
公爵が俺たちの魔法を見てから数時間がたった。村ではザルク公爵を歓迎するために豪華な食事が用意されていた。
「ザルク公爵様、今日は我が村にお越しいただきありがとうございます。本日は王都のような豪華な食事は出せませんが、村で一番の料理を出させていただきます。どうぞごゆっくりしていってくださいませ」
村長が公爵に感謝の言葉を述べた。
すると公爵は席を立ち、みんなに聞こえるような声で感謝を伝えた。
「皆さんどうもありがとう。私のためにこんなにたくさんの御馳走を出させてもらって、今回この村を訪れたのは、
アイちゃんとケント君とユアン君を王都に迎えに来るためにこの村を訪れました。今回は少しアクシデントがあったため今日はこの村に滞在することになりました。それでは、この村とこの三人の門出を祝しまして、乾杯!」
「「「「「乾杯」」」」
公爵の合図でみんなが料理に手をつけ始めた。
その日はみんな久しぶりの豪華な食事で盛り上がっていた。公爵も酒や料理を楽しんだ後、用意されていた家で一夜を過ごした。
朝になって俺たち三人は公爵のところに向かった。昨日の夜、両親には翌日村を出るかもしれないと伝えた。両親は涙を流していたが俺たちが村を出ることを許可してくれた。
公爵が泊まっている家に行くと家の前には数人の護衛が家の前にいた。
「おはようございます。ザルク公爵はいますか?」
アイが護衛に挨拶をする。護衛も俺たちに気づき挨拶を返してくれた。
「おはよう。ザルク公爵ならまだ家の中にいるよ」
俺たちはお礼を言って公爵が泊まっている家のドアをノックした。中から護衛の人が出てきた。
「君たちか。何かようかい?」
「私たちザルク公爵に会いにきたんですけど.......」
すると中からザルク公爵が出てきて、俺たちを見て挨拶をしてくれた。
「おはよう君たち。僕に何か用があるのかな?」
「おはようございます。あの、ザルク公爵は今日村を出て行くと聞いて最後に挨拶をしようと思って.......」
戸惑いながらもアイが応える。それを見て公爵はニッコリと笑う。
「そうかい、それは嬉しいね。中に入ってゆっくりして行きなさい」
公爵は家の中に招き入れてくれた。家の中には護衛が二人いて護衛の人が俺たちに紅茶を差し出してくれた。
俺は再びスキル「未来予知」で公爵の未来を見た。すると結果は変わっておらず襲われる光景が見えた。
でも今回は魔物に襲われている未来が見えた。
「あ、あのザルク公爵。お話があるんですけど.....」
公爵は飲んでいた紅茶をテーブルの上においた。
「どうしたんだい?」
「今、ザルク公爵の未来を見たんですけど、昨日と変わらず襲われる未来が見えました。でも今回は、魔物に襲われる未来が.....」
公爵は驚いた顔をしている。護衛の人も驚いていた。
「まさか、そんな事が.....それがもし本当だったら大変なことに....」
「それでお願いがあるんですけど、俺たちを王都まで連れていってくれませんか?」
「な、何をいっているんだ!君たちは!襲われる事がわかっていて君たちを連れて行くわけがないだろう。それに両親の許可をとっていないだろう。」
「ああ、両親の許可は取りました。泣いていましたけど許可は取れました」
ケントがあっさりと公爵に言う。
「しかし、君たちはまだ五歳なんだぞ。そんな危険なことはしなくていい」
「それなら大丈夫です。俺のスキルでケントとアイを見ましたけど大怪我とかはしなかったです」
「し、しかし......」
公爵は俺の言葉を聞いて考える。
「わかった。でも危なくなったらすぐに逃げること。わかったかい?」
公爵の言葉を聞いて俺たちがこの村を今日離れる事が決まった。俺たちはすぐに準備をするために公爵が泊まっている家をでた。
家に帰って公爵の家で起きたことを親に報告をすると
「無理はしないでね。未来予知のスキルがあるからって調子に乗らない事。たまには家に帰ってくる事。わかった?」
俺は頷いて家を出た。公爵の家に行くとケントとアイはすでに馬車の中にいた。
「遅かったね。ユアン君もほら中においで」
公爵に言われ俺も馬車の中に入った。馬車に入るとすぐに出発をした。
外を見ると村長や両親たちが手を振っているのな見えた。俺たちはそれを見て窓を開けて手を振った。
「また、戻ってくるからねー」
そう言って俺たちは村を出た。
いつもありがとうございます。