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第十九話 魔人襲撃7

 ケントがアオとミドリと交戦している同時刻、レインは必死にアカの攻撃を避けていた。


 「オラオラどうした?賢者?守ってばかりで張り合いねーぞ!」


 アカは休むことなく火弾(ファイヤーバレット)獄炎の矢(フレイムスピア)を撃ち込む。他の魔人との威力は桁違いで、レインの魔力障壁が簡単に壊されてしまう。


 相性がいいとしても、魔法の威力が高いため水属性で相殺ができなかった。


 「くっ...!大海の衝撃(マリンインパクト)!」


 水の上級魔法としても、アカの攻撃を完全に打ち消すことはできず、威力を弱めることしかできない状況だ。これ以上動き回って攻撃をされると被害が大きくなる可能性がある。


 「そんなもんか?三年前に戦った賢者の方が頑張っていたぞ」


 その言葉を聞いてレインは激昂する。


 「お前がエレクを語るな!!!」


 レインは大海の衝撃(マリンインパクト)水槍(ウォーターランス)を同時に出した。アカ目掛けて攻撃したが、余裕な顔をして耐えている。流石に少しは後ろに下がったが、あまりダメージを受けていない様子だった。


 「こんなものか...久しぶりに水属性の賢者と戦えると楽しみにしていたんだが、少々過大評価をしていたみたいだな。これ以上何もないなら殺して力を奪うまでだ」


 ジリジリとアカは距離を詰めて行く。後退りするレイン。久しぶりにレインは恐怖を感じていた。魔法が効かない相手と戦うのは、自分がまだ未熟な時に初めて戦った魔人を思い出す。

 あの時も、相手は火属性を使っていたことを思い出す。負けそうになったところをエレクに助けられ二人で一緒に魔人を倒したレインはアカを見て微笑んだ。


 「何を笑っているんだ?これから殺されるってのに...」

 「ああ、ごめん。ちょっと昔のことを思い出してね」

 「昔のこと?」


 アカは少し不思議がっていた。先ほどまで恐怖に満ちていたレインが昔のことを思い出しただけで、怯えていた様子はなくなっていた。だが、戦いが楽しければそれでいいと思うアカだった。


 「まぁいい...それよりもっと他にあるんだろ?」


 アカはニヤリと笑いながらレインを見つめる。レインもそれに答えるように「ええ」と言った。


 レインの周りには大量の魔力が集まる。


 「精霊召喚」


 レインが唱えるとそこには小さな精霊が現れた。それを見てアカはニヤリと笑いながら高笑いを上げた。


 「はっはははは!!いいぞ!賢者!そうでなければ面白くない!」


 アカはレインに精霊化を進めるような発言をする。それを聞いてレインは不思議に思った。

 精霊化をすればアカは死ぬかもしれない。にも関わらずそれを勧めるということは、よっぽど精霊化に勝つ実力があるのか、それともただ単純にギリギリの状態で死闘を繰り広げたいのか...レインには理解できなかった。


 『レインちゃん、ひっさしぶりだね!結構怪我してるけど大丈夫?』

 「うん...大丈夫だよ。それよりスイちゃん...力を貸して!」

 『レインちゃんのお願いならお安い御用だよ〜』


 スイは光の粒子状となりレインの周りを囲んでいく。


 「精霊化!」


 スイが完全にレインと一体化しレインの持つ魔力はとんでもない量へと変化する。それを見てアカはニヤニヤと不気味な笑みをこぼす。


 「さすが、と言ったところだな...だが、俺も本気を出すぞ!」


 アカはさらに自分の魔力を高めていく。先ほどよりも本気なのが嫌でもわかる。


 「さぁ!こちらかーー」


 アカが攻撃モーションに入ろうとしたその瞬間、目の前にいたはずのレインの姿はどこにもなかった。

 

 「どこだ!」


 見失った?俺が...魔人の中でも高位の魔人のはずなのに人間一人の動きも見ることができなかったのか?

 アカは少しパニックになり、すぐに後ろを見るが誰もいない。

 

 逃げたのか?いやありえない。あの賢者は俺に恨みを抱いていたし、精霊化を使って逃げることなど微塵も思っていないはずだ。

 だが、どこを見てもレインがどこにいるのかわからなかった。


 「ここだよ」


 次の瞬間、左脇腹に激痛が走った。先ほどまでは攻撃を喰らっても、自分の覆う魔力が多かったためダメージを軽減することができたが今回の攻撃は今までと違う。先ほどよりも強い魔力で覆っていた。なのにダメージが大きい。

 左の脇腹部分には血が流れている。


 攻撃を受けた方向を見ていると、そこにはレインの姿があった。


 「さぁ、まだまだこれからだよ」


 次第にレインの姿が見えなくなっていく。そしてまた見失ってしまった。周囲を見渡すがどこにも姿はない。

 またしてもアカは攻撃を喰らう。今度は腹部に激痛が走る。次は頭上、その次は右脇腹など...どこにも姿はないのに攻撃は伝わってくる。アカは何か仕掛けがあるのではないかと思う。


 「そろそろ死ぬ恐怖はできた?」


 姿を表したレインが言う。


 「なんなんだ!お前の能力は!?」


 必死なアカを見てレインは鼻で笑う。


 「さっきまであんなに強気だったのにもうそんな弱気になっているんだね...いいよ。教えてあげる。私が精霊化をするとある一つの能力が使えるようになるの。それは透明。これは水の特性で水は光を通しやすい性質を持っているの。その力で私の姿は見えないと言っても過言ではない」


 さっきまで見えない攻撃は全てレインが精霊化で強化した拳で攻撃していたものだ。それに加えて自分の姿を見えなくするのに繊細な魔力コントロールを要するのに、アカの魔力を上回る威力の攻撃を与えることができるのはまさに神業と言えるだろう。


 流石のアカも精霊化したレインの攻撃は効いている。

 レインはダメージを負っているアカを見て総攻撃を仕掛ける。同じように透明化をしてアカに襲いかかった。

 

 ゴツっ!


 何かがレインの顎にぶつかった。顎に何かがぶつかったレインは動けなくなり、目の前が揺れている。


 「なんだ..見えないと言っても対処は簡単だったな...」


 目の前にはアカがレインを見下ろしている。

 だめだ...逃げなきゃ... そうしたいが、アゴを攻撃されたレインは脳が揺れて軽い脳震盪が起きている。動きたいけど動けない状況だった。


 「お前が魔力を使って姿を見えなくしているんだったら、その微量な魔力を感じ取ることは俺たち魔人なら容易いことだ。お前の敗因は簡単に能力をしゃべったことだな」


 アカはレインの腹部を思いっきり蹴り飛ばした。


 「ぐはっ!!」


 蹴られたレインは五メートルほど飛ばされた。落ちてきた瞬間にレインは蹴られた腹部が激痛に悶え苦しんだ。今まで吐いたことない尋常じゃない量の血がドバドバ出てきた。この一撃で内臓のどこかがやられたかもしれない。だが、この痛みのおかげで脳震盪が少しおさまる。レインはその場所をゆっくりと立ち上がった。


 「さぁもっと殺し合おうぜ!」


 魔人は魔力を高めていき、魔人の前には魔法陣が描かれる。あの魔法は火属性最上級魔法灼熱(インフェルノ)だ。

 その魔法を止めるにはそれと同等以上の魔法が必要になる。ズキズキと痛む腹部を我慢しながら、同じように魔力を集中させていく。


 「灼熱(インフェルノ)!!」

 「極大水撃(ギガアクア)!!」


 お互いの魔法は拮抗している。相性ではレインが有利だが、魔力の多い魔人も有利だと言える。


 「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 レインが押すが、アカはまたさらに押し返し、振り出しに戻ってしまった。あと少しでレインの精霊化が解けてしまう。そうなる前にレインは早く決着をつけたかった。


 「スイちゃん、すべての魔力を貸して!」

 『オッケーわかった!』


 レインの極大水撃(ギガアクア)の力は強まっていき、アカの灼熱(インフェルノ)を打ち破った。

 激しい戦いで周りには相当な被害が出たが、それでも被害は抑えられた方だろう。


 精霊と一体化していたレインは精霊化が解けスイと別れてしまった。


 「スイちゃん力を貸してくれてありがとね」

 『いいよ、別に。けど流石の僕もちょっと疲れちゃったな...』


 力を使い果たしたレインとスイはその場に座り込んだ。


 次の瞬間、正面に座っていたスイが何者かに蹴飛ばされた。


 「スイちゃん!?」


 スイの行方を見てみるとピクピクと動いている。レインは何が起きたのかわからない状況だったので周りを見渡すと信じられない光景が目に飛び込んできた。死んだと思われていたアカが生きていた。しかし、右腕が欠損しており体中血だらけで今にも死にそうな状態だった。


 「はぁはぁ...なかなかいい攻撃だったぞ...思わず死の恐怖を感じたがやっぱり戦いはやめられないな...さて今のうちに力を...」


 アカはゆっくりとスイに近づく。レインはスイに近づけさせないように、アカの足元にしがみつくが簡単に振り解かれてしまった。


 「邪魔だ...」

 「きゃっ!」


 アカの狙いはスイのようだ。スイを殺して力を得ようとしている。それはなんとしてでも阻止しなくてはならない。

 レインはアカよりも早くスイのところまで走ってスイを抱き抱える。このまま走って逃げたかったが、疲労のせいで転んでしまった。立ち上がろうとしても体に力が入り切らなかった。


 アカはレインの元へと辿り着くとスイを殺そうとするが、レインが必死にガードする。アカはスイを守っているレインの背中をドカドカ殴るが、それでもレインはスイを手放そうとしなかった。


 『レイン...ちゃん...僕を置いて...逃げて...」

 「だめだよ!助けに来た人に逃げてなんて言わないで!絶対に守り切って見せるから!」


 アカは少しの魔力を使ってレインを殴るがそれでもレインは離そうとしなかった。


 スイは目から一粒の涙が溢れた。すると、スイの体は青白く光り輝き出すと小さな精霊だったスイはみるみると成長していき百六十センチほどの大きさへと成長した。


 「スイちゃん...その姿は...」

 『レインちゃんのおかげだよ。レインちゃんが僕を必死に守ってくれる想いが通じで成長することができたよ』


 スイはレインの強い思いによって普通の精霊から上位精霊へと進化を遂げた。スイが成長したこともありレインは気を失ってしまった。

 進化したスイはアカを睨みつける。


 「はっ...ここまでか...お前らとの戦いイッチバン楽しかったぜ...」


 戦意を消失したアカは進化したスイに首を落とされてその場に倒れた。アカが倒れると同時にレインが目を覚ます。


 「スイちゃん...アカは...?」

 『ごめんね。エレクちゃんの仇をとりたかっただろうけど、僕が倒しちゃった...』

 「ううん。いいよ。別に、最後倒してくれてありがとね...」

 『お礼なんて別にいいよ。それよりレインちゃんは休んでて。僕が安全なところまで避難させるから』

 「あ...りがと」


 レインはスイの胸元で意識を失った。

 




 



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