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第十三話 魔人襲撃1

王都の上空に巨大な穴が出現した。

 それは誰が見ても「危険」なものだと人間の本能がそう言っていた。

 巨大な穴から、百体以上のさまざまな種族の魔物や十五体以上の魔人がその穴から落ちてきた。


 大勢の魔物は一斉に市民を襲い出した。宮廷魔導士や騎士が助けに入るも、その数に押されて食い殺されてしまう。


 「賢者様がくるまで持ち堪えろ!!!市民には一才触れることは許さんぞ!!!」


 一人の騎士が宮廷魔導士達や騎士達に対して喝を入れる。それに応えるかのように、近くにいた宮廷魔導士や騎士達は「おお!!!」と言って国を守るために立ち上がる。


 「へぇ、じゃあ頑張って耐えてね♪」


 声のする方を振り返ろうとした瞬間、首に激痛が走る。それと同時に何かが落ちる音が聞こえた。何かが落ちた音...それは自分の首だった。薄れゆく意識の中、自分の体が崩れ落ちていくのを見ながらその騎士は死んでいった。


 「さぁミドリ様に言われた通りにこの国民皆殺しだ♪」


 貴族街でも同じような事が起きていた。護衛としていた騎士達も多くの魔物達のせいで死者が出ている。貴族達は全員王城に集まって避難をしている。そこで護衛として選ばれたのがアークだった。アークは陛下を保護した後、戦いに参加をしようとしたが、陛下の護衛がいなくなるとセバスに言われたので他の貴族達も集め、まとめて護衛をしている。


 「ここまで来れば安心だな。なんたってアーク君が私たちの護衛をしてくれるんだ」


 集まっている貴族達は皆安堵しているが、その中で一人だけ嫌な予感を感じていたザルク公爵だった。

 

 (なぜ、市民街は大勢の魔物や魔人で襲われているのに対して、貴族街は魔物の数が少なかったのだろうか。それにここにくるときも魔物も襲って来なかった。)


 ザルク公爵の不安は的中する。

 勢いよく扉が開く音が聞こえると、そこには魔人が二人立っていた。

 一人は熊のような耳が生えていて眼鏡をかけている。多分ブラッドベアの魔人だろうか。もう一人は身長はアイちゃんと同じくらいの背丈で、頭からツノが一本生えている。どの種族かは分かっていないが、とにかくこの状況はやばいとしか言えない。


 「いるねぇ、人間のゴミが」

 「ふむ、こいつらを殺してからゆっくりとこの国をもらうとしよう」


 ツノが生えた魔人は手から炎を出すと、それを貴族達に投げた。

 アークがそれを阻止すると、ツノが生えた魔人は怒り狂ったように次々と炎を出すとそれを一斉に投げてきた。アークは貴族達を守るためにまとまっている貴族に結界張った。


 「ねぇ?それなーに?」


 ツノが生えた魔人が口を開くとアークはにっこりと笑みをこぼしながら「君たちの攻撃を守るための防御魔法だよ」と答えて光剣の刃(ライトニングカッター)で二人の魔人を攻撃する。幸い、ツノが生えた魔人はその衝撃で王城から落ちて行って、もう一人の魔人は手で払っただけで光剣の刃(ライトニングカッター)を振り払った。


 「ふむ、この威力さすが賢者といったところだろうか。まだ、あの子ではこの威力には耐えられないか...」

 「お褒めいただき光栄だけど、できればさっきの一撃で倒れて欲しかったんだけどな」

 「ふむ、それは無理だろう。なんたって私は魔王様からキイロという名前をもらっているのだから」


 それを聞いてアークはゾッとする。三年前、スタンピートで魔人のアオという魔人に遭遇したが、アオのスピードは自分の目では追う事ができずに何もできなかった自分がいた。


 「まさか、いきなり幹部に当たるとはね...これはハズレを引いたかな...」

 「我からしたら当たりだけどな...せいぜい楽しませてくれよ。賢者よ」





 ***




 「助けてぇ!」「こっちにくるな!」


 市民達は魔物から逃げ惑い、騎士や宮廷魔導士達に守られながら必死に逃げている。

 市民街では魔物の数で溢れて騎士や宮廷魔導士では手に負えなくなっている。次々と目の前で仲間が殺されるのを見ていると、精神がおかしくなり、戦意を喪失している者が出てきている。戦争は何度か経験をしてきたことがあるが、これほどまでに圧倒的にやられるのは初めてだった。

 一人の宮廷魔導士が戦意を消失し、その場に座り込む。目の前には大勢の魔物の軍勢。もう何もできずに死を待っていると、人は笑ってしまうんだろう。今実際自分はすぐに死ぬはずなのに何故か笑っている。

 死ぬ覚悟を決め、魔物の口が大きく開き顔の前にそれが近づいてくる。

 

 「ああ、つまんない人生だったなぁ......」

 「諦めんなよ」


 その瞬間目の前にいた魔物はいなくなり、その後方にいた魔物は全ていなくなっていた。周りには炎がチリチリと燃えている。


 「仮にも国に支えている魔導士が戦いをやめてどうするんだ。俺らがいなくなったら誰が国民を守るんだ?」


 目の前に現れたのは賢者バーン・ナックル。賢者の中でも戦闘能力が高いと言われている賢者だ。


 「お前は早く国民を安全なところに避難させろ。わかったな!」

 「はっはい!」


 そう言って宮廷魔導士は逃げている国民を避難させるためにどこかに消えた。

 バーンは周りに倒れている仲間の死体を見て、激昂する。血の匂いに釣られてさらに魔物が寄ってくる。


 「来いよ!俺の炎でまとめて焼き払ってやる!!!」

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