第十二話 未来の出来事
遺跡の最新部の部屋にユアン達はたどり着いた。
部屋は王城の自分の部屋と同じくらいの広さで、一つの通路があり、中央の台座には丸い水晶玉が置かれていた。
「これがお宝?」
ミレイユが手を伸ばして触れようとしたが、透明な壁に覆われていて触る事ができなかった。
結界と同じような魔法なのか?ユアンは気になり、その透明な壁を触れたが、透明な壁は存在せず、そのまま水晶に手が触れた。
「どうして...私が触ろうとした時は触ることもできなかったのに」
「俺もいまいちわからないけど...」
その瞬間、ユアンが触れた水晶から神々しい光が放たれた。
目を開けると、水晶に映像が入り込んでいる。
「何これ?」
「これって、アウスト王国だよな...?」
「そうだな...でもここって...」
水晶からの映像は王都から離れたドレーク領の近くだった。そこに写っているのはユアンと見たことのない魔人だった。
いや、この魔人どこかで見た事がある...
その魔人は髪が黒髪でサングラスをかけている。
ユアンには見覚えがあったが、どこで見たのかは思い出せなかった。
水晶に映る映像ではユアンとその魔人が激しい攻防を繰り広げている光景だった。
お互いに血まみれの状態でいつ倒れてもおかしくない状況だった。
「「「「え......?」」」」
次の映像でユアン達四人は言葉を失った。
***
最深部の部屋にあった通路を通ると、出口への道に繋がっていた。
久しぶりに見る日差しでユアン達四人は手で目を覆った。
「よ、ようやく出れたね」
「ああ」
「そうだな...」
ミレイユが場を盛り上げようとするが、ラージンとフィルは元気がないようだった。
「いいか、さっき見たことは誰にも言うなよ。これは命令だ」
ユアンがミレイユたちに注意する。
その言葉にミレイユたち三人は無言で頷いた。
「ごめんな...」
ユアンはその一言だけを残して、その場から立ち去ってしまった。
そのまま、王都に向かって走り出す。
外に出て「未来予知」を使うと、王都が襲撃されている未来が見えた。
「くそ!やっぱりか!!」
身体強化と雷魔法を身に纏い王都を目指してものすごい速さで駆け抜ける。
ユアンが遺跡から出る少し前、アークはユアンに言われた通りに陛下の調査をしていた。陛下はずっと部屋から出ることもなく、誰かが出入りするような感じでもない。
(おかしいな。いつもなら秘書がたくさんの書類を持ってきるはずなのに...)
もうすでに終わらせたのか?と思いつつアークは直接陛下に聞くことを決めた。
執務室の部屋のドアを軽くノックする。
「誰だ?」
いつも通り陛下の声で返事が返ってくる。
「アークです。少しよろしいですか?」
「ああ、構わんぞ」
そう言われて、アークはドアを開ける。
陛下を見てみると、いつものように書類を整理していた。
「それで、何か用か?」
「最近陛下の様子が変だとユアン君からお話を伺いました。それで様子を見てきてほしいと頼まれましたので」
陛下は書類を書くのを止めて、アークの言葉に耳を傾けた。
「それで、アークお前は何かおかしいと思ったのか?」
「はい。単刀直入に聞きます。あなたは誰ですか?」
陛下はゆっくりと椅子から立ち上がり、外が見えるところまで移動した。
「クックック、いつから気付いた?」
その声は陛下の声ではなく別の誰かの声だった。
その声を聞き、アークはいつ戦闘が起きても大丈夫なように戦闘体制に入る。
「別に今ここで争う気はない。今はな」
「どういうことだい!?陛下は無事なんだろうね!?」
「安心しろよ。俺のスキルで操ってるだけだからな。それに今この王都にユアンがいない時が一番都合がいいからな」
「やっぱり、ユアン君をこの王都から引き離したのは...」
操られている陛下は見事だと言わんばかりに色々な情報を話してくれる。
「そうだよ。ユアンを王都から追い出したのはこの俺だよ。できればケントとアイもいなくなって欲しかったけど、ユアンと比べるとユアンを選ぶしかないよな」
アークは攻撃したい衝動に狩られたが、体は陛下の体。精神を操っているだけだとしても、攻撃したらダメージを受けるのは操っている相手ではなく、陛下になる。
「それにユアンの「未来予知」全然使い物になってなかったなぁ!」
「それも君の仕業か」
「そうさ、俺がコックに頼んで全員の料理にある薬を入れてもらっただけだけどな。その薬はユアンにしか効果がないから他のものは気づかなかったみたいだが、あれだけスキルを抑える事ができたんだ。いい結果が出たよ」
アークは自分を抑えながらも操られている陛下の話を聞く。
「あの薬はユアンの「未来予知」を1時間先だけしか見れない薬だ。だから数時間後にくる俺らの侵攻の未来は見えなかったってわけだ。そりゃそうだよな。なんたって一週間も前から薬をもられているって思わないもんなぁ!!!」
「そんなことで誰が驚く。こっちには賢者とケント君やアイちゃんもいるんだ。君たちがどれだけ来ようと全て返り討ちにしてあげるさ」
「返り討ちか...そうだな。お前ら賢者は普通の魔人なら簡単に倒せるだろうが、それが十数体いたらどうなる?」
「!?」
「話は終わりだ。お前との話は結構面白かったぞ」
操られている陛下は指をパチンと鳴らすと、陛下はその場で倒れ込んだ。すぐにアークが陛下の安否を確認する。特に異常はないようだったので、セバスを予防としたその時、王都の上空から謎の黒い大きな穴が出現した。
穴からは大量の魔物や数十体の魔人が降りてくるのが確認できた。
「さぁパーティーの始まりだ!」
王城の頂上の先に立っているのは魔人の組織の幹部ミドリだった。ミドリは魔物に襲われる人々を皆がら笑みを浮かべていた。
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