表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/307

第十話 依頼

 ラグレスたちの修行を始めてから一ヶ月が経った。

 ラグレスは光属性の魔法を初級から上級まで覚えることができた。現在はユアンに言われた通りに魔力制御の練習をしている。エルクは火属性魔法とユアン直伝の結界の魔法を覚えることができた。ユアンの結界を覚えるのに半月かかったが、ユアンの初級魔法を防ぐことができたのでユアンから合格を言い渡された。リキトは一ヶ月ずっとケントと模擬戦をしているだけだったが、リキトの身体強化はラグレスやエルクよりも優れていて体術だけなら騎士団長のガルムさんと同じくらいの実力を持っている。


 そして、現在ユアンは陛下に呼び出されている最中であった。


 「で、俺をここに呼んだ理由は?」

 「ふむ、一週間前アウスト王国とクローム王国の国境付近で謎の遺跡が発見されたのは知っておるかの?」

 「ああ、知ってるよ。見つかってすぐに派遣隊と冒険者を何人か送り込んだんだろ?」

 「実は...遺跡に入った派遣隊と冒険者が行方不明となって、何人かは遺体で発見されたようなんだ」


 陛下の言葉を聞いてとんでもない遺跡だと思う。


 「それで、俺を呼んだ理由はその遺跡に行けってことですか?」

 「話が早くて助かるの。そうじゃ、お主にはすぐに遺跡に行ってもらい攻略をしてほしいと思っておる」


 ユアンは呆れて物が言えなくなりそうだった。

 ただでさえ、魔人達がいつ襲ってくるかもわからない。まだ、襲ってくる未来は見えていない。もし、俺がいない時に襲撃でもされたらこの国は一巻の終わりだ。


 「陛下、今この国の状況はわかってますよね?もし俺がいない時に魔人の襲撃されたらどうするんですか!?」

 「もし、来たとしてもケントやアイがいるし賢者もいる。一人くらい居なくても平気じゃろ」


 ユアンはここで何か違和感を感じる。

 いつもの陛下なら、国民を最優先に行動をとるはずだが、今の陛下は国民というよりかは俺を王都から出したいと言っているように聞こえる。


 「もし、魔人の組織(カラー)が複数人で襲撃に来たらどうするんですか?」

 「そこはうまく対処して撃退する。お主は早く遺跡の調査へ行ってくれ」

 「どうしてもですか...」

 「どうしてもだ。これは命令だ」


 ユアンはため息を吐き「わかりました...」と力無く答えた。

 部屋を出る際、ユアンは陛下に一言いった。


 「もし、魔人に襲撃されてアイやケントが怪我でもしたら俺はあなたを許しませんよ」


 ユアンはそう言って扉を閉める。

 ユアンが部屋を出たあと陛下は一人でクスクスと笑っていた。


 「これで邪魔者は消えた......さて、どう攻めるか」


 それは陛下の声であったが、人格は陛下ではない別の誰かのようだった.......






 部屋を出たあと、ユアンは賢者がよく会議をする会議室へと向かう。扉を開けるとバーンとアークが部屋でのんびり過ごしていた。


 「よかった。とりあえず誰かいた...」

 「ん?ユアンじゃねーか。どうしたんだ?」

 「そんなに急いでどうしたんだい?またレインが修行で暴走でもしたのかい?」


 ユアンはそれどころではなく、今いる二人の賢者に先程陛下と話した内容をバーンとアークに話をした。

 バーンとアークは信じられないと言っていたが、事実だ。


 「とりあえず、今から俺はすぐに遺跡へと向かいます。このことは後で賢者を集めて言っておいてください。俺はすぐに攻略をして戻ってくるので」

 「ユアンがいないのはちょっと困るな...」

 「ちょっとどころではないよ!今もいつ来るかわからない状況でユアン君を行かせるなんて...いつもの陛下らしくないね」


 アークさんもこれに気付いた様子だった。


 「アークさん。陛下の調査をお願いしてもいいですか?俺も陛下がおかしい気がするので...」

 「いいよ。もしかしたら魔人と繋がっている可能性は?」

 「可能性は低いですがあると思います。いつ接触したのかはわかりませんが...」

 「今結構やばいことが起きてるよな?」

 「やばいどころじゃないよバーン。もし、ユアン君がいない間に魔人が襲撃してきたらわかるだろ?」

 「ああ、最悪の場合この国は終わる」


 それほどまでにユアンの力は強大であるということ。「未来予知」の能力は国では必ず重宝されるレアスキルと言っても過言ではない。それに加えて「透過」のスキルを持ち合わせているので、攻撃がくるところを「未来予知」で予測して、攻撃が当たる部分を「透過」をすれば攻撃が当たらない。まさに無敵の最強コンボができる。


 「じゃあ行ってきますね。他の人たちにも伝えておいてください」


 ユアンは急いで部屋を出て行った。


 「新しく見つかった遺跡ね...」

 「なんか知ってるのか?」

 「いや、詳しくは知らないけどAランク冒険者のパーティーも数グループ入っているって話を聞いていたから...もしかしたら厄介な場所かもって思っただけさ」


 アークの感はいつも当たる。今回だけは外れていてほしいと願うバーンだった。


 「じゃあ、すぐに賢者達を集めないとな。陛下には極秘でな」

 「ああ、そうしようか」



 アーク達はセバスに任せようと思ったが、いつ陛下の耳に入るかわからないので手分けして賢者達を呼び集めた。

 部屋に集まったのはユアン以外の賢者とアイの七人だ。ソイルもいてほしかったが、今は一人旅に出ているという。


 「さて、今さっきユアン君はこの前見つかった遺跡へと向かった」


 アークの発言にみんなは驚く。


 「なんでそんなところに行かせたんだ!いつ魔人が襲ってくるかわからないんだぞ!」


 ヴァントが大声をあげるが、バーンがそれを静止する。


 「落ち着けヴァント。アークの話を最後まで聴け」

 「ユアン君は陛下からの命令だと言っていた。今の状況を見てユアン君を王都からとざけるのは何かおかしいと思わないかい?」

 「ん、確かにおかしい。普通ならユアンは必ず王都の中に留まらせておきたいのが普通」

 「ユアンの未来予知なしでこの国が守れるのかどうか」

 「僕はユアン君から言われた通りに陛下を監視することにする。みんなは各自で王都の中を警備しつつ、騎士や宮廷魔導士にも王都の中を警備してもらおう。必要なら冒険者ギルドにも依頼をしてくれ!」


 「「「「「「了解!」」」」」」


 賢者達は内密に騎士団や宮廷魔導士達にこのことを知らせる。

 一番いいのは魔人達が襲ってこないことだけど、戦争では賢者が一人いるいないでは話が違ってくる。


 





 ***







 王都を出発してから二時間が経過した。

 もう少しで、クローム王国との国境が近くなってきている。そこに問題になっている謎の遺跡があるらしい。


 「とっとと終わらせて戻らないと...でも今のところ未来は見えないから大丈夫だと思いたいけど...」


 全速力で走っているため魔力と体力の消費が激しい。このまま遺跡に行って王都に戻ったとしても魔力はほぼ尽きているだろう。流石にに時間を全速力で走るのはユアンでもキツかった。

 走っていると何やら人が集まっているのが見える。


 「あそこか!」


 ユアンはその場所を目掛けて一気に走っていく。

 どうやら国の兵士が集まっているようだった。


 「おい、何があった?」

 「ん?こら!子供が来ていい場所じゃ......って賢者様!?」


 兵士はユアンがつけていた黒いローブを見て賢者だと判断した。


 「で、何やってるんだ?」

 「はっはい!先程遺跡の中からまた遺体が発見されたのでその処理を...」


 その遺体を見てみると外傷は少なく、魔法の類で死んだわけじゃないことはわかった。


 「全員この亡くなり方と似ているの?」

 「はい。全員同じ亡くなり方です」


 となると考えられることは死因は毒と見て間違いはなかった。

 腕にはかすり傷の痕があることから毒矢にでも当たったと考えるのが妥当だと思う。


 「じゃあ、その遺跡まで案内してくれ。陛下の命令で攻略してこいって言われてんだ」

 「あの遺跡をですか?」

 「ああ、それにまだ遺体は全部じゃないだろ?」

 「はい...今見つかっているのは全員騎士達のものとAランク冒険者数人だけです」


 それを聞いてユアンは耳を疑った。


 「Aランク冒険者が入ってるのか!?」

 「ええ、三つのパーティーと騎士達が一緒に入っていますが、何も聞かされてなかったんですか?」


 Aランク冒険者はSランク冒険者には届かないが十分優秀なレベルだ。三つのパーティーなら魔人を倒せるレベルだ。そのパーティーが手間取っているとなるとこの遺跡は十分注意をしなきゃいけなくなる。


 「着きました。ここが入り口です」

 「じゃあちょっと行ってくる」


 ユアンは遺跡へと足を踏み入れる。

 ここから先は「未来予知」と「透過」を使って進まなければ自分も死んでしまう可能性がある。


 中を進んでいくと早速矢が正面から飛んできた。

 「未来予知」をつかていたから簡単に避けられたが、これからもっと矢が飛んでくる未来が見える。「透過」も使いながら前へと進んでいく。通路をまっすぐ進んでいくと誰かの声が聞こえてきた。


 「....す...けて」


 急いで声のした方へ向かうと冒険者の人たちが隠し部屋で休んでいた。


 「あんた達がこの移籍の調査を任されたAランク冒険者か?」

 「そうだ...お前は?」

 「俺は陛下から直接依頼された賢者だ」

 「そうか...賢者が来てくれたんなら安心だな」

 

 全員ほぼ瀕死で誰も動けそうにない。

 ユアンは持っていた食料と水と回復薬を渡した。

 全員ハイエナのようにユアンの持ってきたものにがっついた。


 「いやーありがと!食料と水が尽きてて困ってたんだ...」

 「賢者様本当にありがとうございます!」

 「よくこんな場所を見つけられたな」

 「偶然ですよ。毒で倒れた仲間が壁に寄り掛かったらこの部屋が現れて今に至るってことですよ」


 何より、死ぬ人がいなくてよかったと思う。毒の治療も光属性を使える人が治療をしたみたいだったので命には別状ないとのこと。


 「じゃあ俺は先を急ぐから頃合いを見て脱出してくれ」

 「あの...私たちも一緒に行ってもいいですか?」

 「いや、邪魔になる」

 「でも、攻略した時の報酬が...」

 

 この遺跡の報酬はいつもよりも数倍の量らしく、誰か一人でも攻略をすれば報酬を支払われるとのこと。


 「じゃあ、各パーティーの代表者一人づつならいいけど、自分の身は自分で守ること。これが条件な」


 冒険者達は顔を明るくさせて笑顔になった。こんなに辛い仕事なのに報酬が払われなかったら無駄骨だからな。

 ユアンと冒険者三人がついてくることになり、一緒に攻略することになった。




 

いつもありがとうございます。面白かったらブックマークと評価をお願いします。感想もお願いします。

次回の更新は来週の火曜日です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ