第七話 洗礼
俺たちは三日間リズの修行を受けた。
リズからは俺たちが使える魔法の初級魔法と身体強化の使い方を教えてもらった。リズは俺たちに魔法を教え終わると村を出て行ってしまった。行き先を聞くと王都に行って知り合いに一応報告してみると言っていた。
俺たちはリズが村を出て行ってから魔法の練習をした。属性魔法は危険なので身体強化の魔法で体術の訓練をした。
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二年の月日が流れて神様からスキルをもらう日がやってきた。
村には豪華な馬車がやってきてその中から白と金のローブを纏った司教が出てきた。司教が出てくると村の人たちは司教の周りに群がった。
「ホッホッホ、みなさん落ち着いてください。今日は子供たちの神からの祝福の日ですよ。話は後で聞きますからまずは、子供たちを集めてください」
司教は笑顔で村の人たちに言った。
数分もすると村の中央に子供たちは集められた。人数は俺たち含めて五人しかいなかった。
俺たちは司教が持ってきた聖水を飲んで、一人ずつ神様からの祝福をした。
最初はアイから祝福が始まった。アイは司教の前で祈りを捧げる。
「神よ。この子供アイに聖なる祝福を与えたまえ」
するとアイの体から神々しい光が放たれた。それを見て俺たちは驚いたが、一番驚いていたのは司教と一緒に来ていた教会の人たちだった。
アイが祈りを終えると司教がものすごい勢いでアイに近づいた。
「あ、あああ、あなた。今な、な、何を」
「え?普通に祈りを捧げていましたけど?」
アイはキョトンとして話に答えていた。
「す、ステータスオープンと言うと神様から授かったスキルがわかります。」
「本当ですか!?じゃあ、ステータスオープン!」
アイがその言葉を言い放つとアイの目の前に四角い物が浮かび上がった。
「スキルにな何と書いてありますか?」
「えっと....再生って書いてあります。あっっ!!ねぇ、ケント、ユアン!私水属性の他に光属性も使えたよ!!」
アイは嬉しそうに俺たちに話しかける。その言葉を聞いて司教は腰を抜かしていた。
「水属性と光属性も....それに再生とは....」
「あの司教様。一つ聞きたいことがあるんですけどいいですか?」
アイはステータスプレートに疑問があったらしく不思議そうな顔をしていた。
「はい。何でしょうか?」
「あの、ここに女神の加護って書いてあるんですけどこれって何ですか?」
それを聞いて司教と教会の人は驚いていた。教会の人は何人かその場に倒れていた。
「め、めめ、女神の加護とは、ほほ、本当ですか!?」
「はい。これって何ですか?」
「女神の加護とはこの世界でたった一人しか持っていなかったと言う伝説の加護です。それは昔人々を魔王から助けた勇者が持っていた加護です。そもそも加護をもらえる人はいません。今この世界で持っているのはあなただけでしょう」
アイはそれを聞いて喜んでいた。自分が特別となれば王都に行ける確率は上がるのでその場で飛び跳ねている。
勇者とは約四百年前に実際に存在していた人間のことだ。その勇者は賢者と聖騎士とともに、この世界で悪事を働いていた魔王を倒し、世界を平和へと導いた伝説の人間。魔王を倒した後、勇者は貴族の娘と結婚して幸せに暮らした...と言われ、現在では絵本として皆に伝えられている。
アイの洗礼は終わって次はケントの番になった。ケントも同じように司教の前で祈る。
すると、ケントも同じようにケントの周りから神々しい光が放った。司教と教会の人はすごい顔をして驚いてる。
ケントが祈りを終え、ステータスを確認する。
「俺のスキルが豪腕だね。属性は火と風の二種類。最後に炎神の加護?」
「ま、また神様の加護を.....」
司教は驚いたように崩れ落ちた。この国の大司教でさえも神様からの加護は持っていないらしい。加護持ちというのはとても貴重な存在だそうだ。
「司教様。炎神の加護って聞いたことありますか?」
「いえ、私たちが確認できているのは女神の加護だけです。炎神の加護は聞いたこともありません。」
司教は残念そうに言う。神に祈りを捧げているとは言え全ての神を知っているとは限らないらしい。
ようやく次は俺の番になった。俺も同じように祈りを捧げる。終わるとみんな俺の方を見て固まっていた。
「あ、あなたも先ほどの二人と同じような光が.....」
俺は察してステータスを開いた。
「俺の属性は火と雷でスキルが......」
「おい、スキルはなんだよ」
ケントが俺のスキルを見ようとして近づいてきた。ケントに見せるとケントも驚いていた。
「何で二つも持ってんの!?」
「いや、知らねーよ。そもそもスキルって二つ持ってる人いるの?」
俺の言葉に司教は反応した。
「スキルを二つ!?」
「はい、えっと、未来予知と透過です。」
「まさか、未来予知とは....他には?」
「スキルはこの二つだけです。後は、雷神の加護ですね」
司教はもう驚かなくなっている。周りにいた村の人たちも何も動じていない。
はやく洗礼を終わらすために俺たちの後ろの子たちも洗礼をするが、俺たちとは違う光が出た。神々しい光ではなく白い光に包まれるだけであった。
洗礼が終わると俺たちは親と一緒に村長の家に集まった。村長の家に行くと中には司教がいた。
村長に促されて席に座ると司教から話をされた。
「単刀直入に言います。この子たちは立派な魔導師になれます。なのでこの子たちを王都で引き取らせてくれませんか?」
俺たちはそれを目標にしてきたから言われて嬉しかったが、俺の母親が声を荒げた。
「急にそんなことを言われても困ります!まだ五歳なんですよ。それにいきなり親と離れて暮らすなんて考えられません」
アイとケントの親もそれに賛同する。確かに母親の言っていることは当を得ている。まだ五歳になったばかりの俺たちをいきなり外の世界に行くことは普通はあり得ない。
「でも、子供たちの将来のことを考えると今王都にいって生きるための必要な力を得ることができます」
「しかし.....」
生きるための必要な力と聞いて親たちは黙ってしまった。長い沈黙が流れた。
「わかりました。まだ答えは出さなくていいです。ですが、一応このことは国王様にご報告します。それで後日遣いのものがやってくるかもしれないのでその時までに答えをお出しください。」
そう言って司教は村長の家をでた。
こうして俺たちの洗礼は終わった。
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