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第二十九話 目覚め

 体が熱い。意識が遠くなり、視界がぼやける。

 誰かが何かを言ってるが何も聞き取れない。


 ユアンはそのまま気を失った。



 目を開けると真っ白い空間の真ん中にユアンは立っていた。


 あれ...これ...どこかで...


 「あっ、お久しぶりです。えっと...私のこと覚えてますか?」


 声がした方を振り返るとそこには一番最初に出会った女神が立っていた。


 「確か...女神様?」

 「そうですよ!女神様ですよ!」


 最初のオドオドしい態度とは違って、ユアンは少し距離を置く。


 「なんですか?急に引き攣ったような顔をして」

 「いや、最初に会った時とは違う雰囲気でしたので...」

 「ああ、最初は初めて地球の人と会ったので、少し緊張してしまって。でも今はそんなこともありませんよ!」

 「あっそうですか。それで、ここに連れてきた理由は?」


 適当に話をあしらうと女神は頬を膨らませる。


 「ちょっと適当すぎませんか?私一応神様ですよ?」

 「理由はなんですか?」

 「あれ!?今私の話を無視しました!?私神様ですよ!」


 しつこい女神にユアンは思いっきり睨みつける。


 「ヒィ!!ごめんなさい、怒らないでください......」


 女神は体育座りをしてイジイジといじけている。


 「怒ってないから...それでここに連れてきた理由はなんですか?」

 「えっと...近況報告...的な?」

 「はぁ?」


 大事な要件かと思ったらただのおしゃべりでここに呼んだようだった。


 「だって神様がこの精神世界に呼ぶのなんて神の加護を持っているあなた達だけですよ!とても稀なことなんですよ!」

 「まぁいいや。でも近況報告なんて何もないよ」

 「またまた〜色々あるでしょ。例えば私が加護を与えたアイちゃんの事とか...」

 「なんでその事知ってんだよ!」


 ユアンはそのことを思い出して顔を赤くする。


 「おやおや図星でしたか。早く告白しないと可哀想ですよ」

 「うるさい!あんたには関係ないだろ」

 「関係ありますよ!私が加護を授けた子なんですから!」

 

 ああ、確かアイの加護は女神の加護だったなと思う。最初に会った時の印象のままだったら好印象で崇められている存在だなと思うが、今の素の女神を見たら崇めている人たちはさぞ驚くだろう。


 「まぁその話は後にして、少し真面目な話をしましょうか」

 「真面目な話?」

 「ええ、ユアン君。君はスキルを何個持っていますか?」

 「二個だけど?それが何か?」


 大事な話という割には大したことじゃないんだなと思った。


 「ユアン君の住む世界でスキルを二つ持っている人には出会ったことがありますか?」

 「いや、ないですよ」

 「スキルは元々一人一個なんですよ。洗礼の時に与えた祝福で私が決めたスキルを上げるつもりでしたが、突然異変が起こりあなたのスキルが二つになってしまった。何者かの手によって」

 「それって自分のミスとかは思わないんですか?」

 「自分のミスだったらミスって気づきます!けど、なんでユアン君だけスキルを二つにしたのかわからないんですよ。他にもケント君やアイちゃんもいたはずなのに......」


 それは確かに疑問に思う。最初に洗礼をしたのはアイが最初だ。初代勇者が持っていた女神の加護の持ち主なら、人為的にスキルをもう一つ増やしていた人物は普通ならアイを選ぶはずだ。


 「でも、それを出来るってことは相手も同じ神様ってことですよね?」

 「それしか考えられないけど...犯人はわからないんだ」

 「まぁそうですよね。今は別に困っているわけでもないんでこれでいいです」

 

 そう言うとユアンが立っている足元が光り輝く。


 「なんだこれ!?」

 「ああ、もう時間か...もう少しお話ししたかったな。じゃあ最後に一言だけ!ユアン君が与えられたスキルは多分ユアン君にしかできないことがあったから与えられたかもしれない。辛いことがあったとしても」


 それを聞いてユアンは満面の笑みで答える。


 「そう言うことにしとくよ。じゃあね」


 そう言ってユアンは足元に吸い込まれていくように消えていった。

 ユアンがいなくなったことを確認してぼそっと女神はつぶやく。


 「ごめんねユアン君。嘘...吐いちゃったな」

 「素直に教えればよかったじゃねーか」


 女神の後ろから現れたのは雷神だった。


 「びっくりした!?急にどうしたの!?」

 「俺が加護を与えた奴が来てるから見にきたらすぐに帰っちまうなんて」

 「今度来たとき話せばいいじゃない」

 「.........言わなかったのか。本当のことを」

 「言ったら、辛い現実が来るってわかるじゃない...」

 「けど、遅かれ早かれ知ることになる。ユアンの持っている「未来予知」はそういうスキルだ」






 ***




 ユアンは再び目を覚ました。

 今度は白い空間ではなく、自室のベッドの上だった。


 「あっ!やっと起きた!」


 声をした方を見ると袋に氷を詰めているアイがいた。


 「ああ、迷惑かけた...」

 「全く、体調悪いのは知ってたけど無理しすぎ!いきなり登場するし!倒れるし!」

 「返す言葉もない...」

 「それで、体は大丈夫なの?」

 「とりあえずは平気だよ。朝みたいに怠くないし」

 「じゃあとりあえずそこに正座して」

 「えっ?」


 そして、病み上がりの状態でアイの説教を三十分聞かされるユアンだった。


 「.........これで終わりにしといてあげる。これに懲りたらもうしないでよね!」

 「はい...わかりました」と返事をする。


 それを聞いてアイはにっこりと笑ってユアンに抱きつく。


 「ねぇユアン。この前の言葉、今ここで聞かせてよ」

 

 アイはユアンの耳元でボソッと呟く。

 

 「後で...」

 「それは聞き飽きた。今は二人だけなんだから...ね?」


 流石にこの状況じゃ逃げられないと勘弁したユアンは恥ずかしい思いを言葉に表す。


 「アイ...俺と..付き合ってくれ」

 「それだけ?もっと他に大事なこと言わなきゃいけないんじゃないの?」


 アイはユアンをからかうようにして見つめる。

 ユアンは視線をずらすが、アイの視線から逃れることができなかった。


 「好きです......その...付き合ってください...」


 ユアンは顔が真っ赤になっている。

 言わせたアイもユアンの告白を聞いて自分も顔を赤くする。


 「よく言えました!」


 そう言って満面の笑みでユアンの頭を撫でる。

 恥ずかしくなってユアンは撫でられているアイの手をどかす。


 「けど、最初に私が告白した時は振ったくせに自分が告白したら成功するってちょっと複雑だなぁ」

 「その節は悪かったって」


 それはユアンとアイが入学試験を終えた後に二人で王都をデートしていた時の話だ。


 「ねぇユアン。少しでも悪いと思ってるならさ、お詫びの印とかないの?」

 「なんだよお詫びの印って」

 「そんなの決まってるじゃない!キスよ」

 「馬鹿か、俺たち十歳だぞ!」

 「前世の年も入れたら二十七よ」


 精神年齢を出されたら何も言えなくなってしまった。

 

 「してもいいけど、風邪が治ったらな」

 「本当に?約束だよ?」

 「ああ」と言ってアイを部屋から追い出す。


 病み上がりでこんなに疲れる思いをしたのは初めてだと思うユアンだった。


 


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