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第二十七話 帰還

 ドミノ王国を出て、ユアン達はアウスト王国に向かっていた。

 アイをお姫様抱っこでアウスト王国まで向かっていると、「恥ずかしいから!自分で走る!」と言われて無理やり降りた。

 まぁ今は急ぐ必要はないからいいか...と思いながら、アイがついて来れるペースで走る。それでも馬車で行くよりもスピードは速い。これなら三時間ほどで王都まで着くペースだった。


 「そう言えばアイはあの後の記憶はあるの?」

 「んー魔人に首筋を噛まれてからの記憶はないかな。なんかずっと変な夢を見ていた気がする」

 「へぇーどんな?」

 「はっきりとはわからないんだけど、ほら!一回神様と会った時の場所に似ていて、誰かと話をしていた...ぐらいしか覚えてないかな?」

 「変な夢だな」

 「聞いといてその反応はひどいんじゃないの!?ユアンも何か言ってよ!」


 アイは先頭に走っているユアンにも話を振る。


 「なんで俺なんだよ」

 「だって、さっきから会話に参加してくれないじゃん!」

 「疲れてるんだよ。夜もあんまり寝てないし」

 「あっそうだよね...いきなり連れ去られたからユアン達は急いでくれたんだよね」

 「いや、そういう意味で言ったわけじゃなくて...」


 アイを攻めたつもりではないが、ユアンの考えて発言しなかったせいでアイは落ち込んだ。


 「まぁでも、アイが攫われた時もユアンは必死になってたし、さっきのあの国王との会話でもね...」

 「何?国王との会話って...」

 「ユアン言っていい?」

 「別に覚えてねーよ」

 「許可はとったからな。確か...「お前みたいなゲス野郎に俺のアイを渡すわけねーだろ!!」だったかな?」


 それを聞いてユアンは、あの時咄嗟に言ったことを思い出す。

 恥ずかしすぎて、ユアンは一度その場に止まる。そしてユアンの顔はまるで茹で蛸のように真っ赤になっていた。


 「ち、違うって。あ、あれは...言葉の綾で...」

 「ふーん。いつから私はユアンの物になったのかな〜?」

 「いや、だから......」

 「いい加減正直になれよ、ユアン。お前のあの行動は大切な人じゃないとあんな行動できないぞ。それにアイを助ける前と助けた後じゃ雰囲気が全然ちげーぞ」

 

 それを聞いてアイは益々ユアンの方をニヤニヤと見ている。


 「わかったよ...でも、その話はまた後でな。今は早く戻らないと」


 ユアンは観念したようにため息を吐く。だが、それを後回しにしてユアンはアウスト王国に帰ることを優先した。


 「別にいいだろ、少しくらい」

 「言わないとは言ってない。それにアイにもあのことを話しておかないと......」


 あのこととはエレクが魔人に殺されたことだ。それで、賢者たちは本格的に魔人の集団(カラー)が動き出したことに戸惑いを感じている。


 「何があったの?」

 「走りながら説明するから、とりあえず行くぞ」


 再び王都に向けて走り出す。

 道中でアイが寝ていた時に起こったことを全て話した。

 全てを話すとアイは非常に驚いていた。


 「エレクさんが殺されたなんて......犯人はアカって魔人なのよね?」

 「ああ、けど相手は賢者だったエレクさんを殺すほどの力を持っている。今は徹底的に魔人の情報をもらって二人一組で調査に行くってことになってる」

 「それはユアン達も参加するんでしょ?」

 「当たり前だろ。俺たちも参加しないと仕事じゃねーだろ」

 「じゃあペアはユアンとケント?」

 「いや、俺たちは一人で行動。まぁ神の加護を持ってるから大丈夫だろうと」


 ケントの発言に納得がいかないアイだった。


 「ほんとに大丈夫?怪我とかされたら...」

 「大丈夫だよ。ユアンも俺も強いから」


 それでもまだ納得していない様子だった。


 「もうすぐ国境だぞ。全力で走れよ」


 そう言ってユアンは身体強化と雷魔法を自分に纏わせる。ケントも同じように身体強化と風魔法を纏わせる。

 アイはそういったことができないので、ユアンがアイを抱えて国境を越えることにした。


 「喋るなよ。舌噛むからな」


 そう言ってアイは噛むことを恐れて口をつぐんだ。

 ものすごい速さで移動するユアンに驚きを隠せなかった。

 人ってこんなに早く移動できるんだと...ものすごい速さで景色が変わっていく。

 前世では新幹線に乗ったことがあるが、それと同じ...いや、それ以上かもしれないとアイは思った。

 予定通り、国境を無事に越えることができ、アウスト王国に入ることができた。

 ユアンはそのままアイを抱えたまま、王都に向かった。途中のエイマス谷をジャンプで越える時が一番アイがうるさかったが、走っている時は慣れたようで行きと同じ時間で帰ることができた。


 王都につくと急いで王城へと向かう。

 城に入ると、使用人は城の中を走り回って移動している。


 「な、何があったんだ?」

 「さぁ?」


 ユアン達は急いで会議室へと向かう。到着すると使用人が急いでいた理由がわかった。

 エレクの遺体がドレーク領から運ばれていたことだ。今、エレクの遺体は霊安室で保管されていると言う。

 陛下は明日国民にエレクが殉職したことを国民に告げて全員でエレクを見送ることを決めたらしい。


 「だからあんなに忙しかったんですね」

 「そうなんだよ。けど、早い方がエレクも喜ぶかなって...」


 レインの目には涙が溜まっている。エレクのことを思い出すと涙が止まらないレイン。


 「絶対にエレクを殺した魔人は許さない...」

 「俺たちも許さないですよ。仲間を殺した償いはからなず!」

 「そうだね!それにアイちゃんの呪いが解けてよかったね。朝のユアンくんよりずっと元気だね!」


 レインにもケントと同じことを言われて顔が赤くなる。


 「まぁ今日は君たち三人はゆっくりと休みなさい。後のことは大人に任せて」


 時計を見るとすでに午後の四時を回っていた。

 お言葉に甘えてユアン達はゆっくりと休むことにした。

 


 

もうすぐで二章が完結します。番外編のユアンとアイのデートの話も出しますので楽しみに待っててください。

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