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第二十五話 アイ奪還3

 ユアンは魔女三人の相手をケントに任せて、王城へとたどり着く。

 

 「ここにアイがいるのか...」


 そう言って王城の中に入ろうとするが、門番に止められてしまう。


 「おい!そこの者止まれ!」


 その言いつけを無視して「透過」を使って中に入る。

 透かさず門番はユアンの前に立ち塞がる。


 「邪魔!」


 ユアンは殺気で門番を気絶させる。

 倒れている門番を無視して急いで城の中に入る。殺気に気付いて城の周りを巡回していた兵士が駆けつけてきた。


 「貴様!何をしている!」

 「侵入者だ!拘束しろ!」


 ゾロゾロと兵士が集まってくるのが見える。

 

 「急いでんだよ!邪魔だぁ!」


 ユアンは同じように殺気で気絶させようとするが、半数の兵士はユアンの殺気に耐えている。

 さすがは王族を守る近衛騎士だと思う。だが、ユアンには時間がなかった。一刻も早くアイを助け出さなければならなかった。


 「何だこの子供は...はぁ...はぁ」

 「怯むな...国王様には近づけるな!」


 ユアンの殺気に耐えた半数の兵士が一斉に襲いかかる。

 相手をするのも時間が惜しいと思ったユアンは「透過」で兵士の間をするりと抜けた。攻撃がすり抜けた兵士は鳩が豆鉄砲を食ったように目を丸くしている。


 「一体何が起きたんだ......」

 「わからない......ただ、攻撃がすり抜けて、俺らの体もすり抜けて通ったような」


 兵士は理解が追いつかないようで、そのあとは襲ってくることはなかった。

 城のドアの前に立ち取っ手を引っ張るが鍵がかかっている。が、ユアンには関係なかった。スキル「透過」を使えば、壊すことをしなくても中に入ることができる。

 「透過」を使って中に入ると大剣を自分の前に突き刺している大柄の男性が立っていた。


 「貴様か、侵入者は」

 「そうだよ」

 「悪いな、お前はここで終わりだ。素直に投降するなら命だけは助けてやる。抵抗するなら殺す」

 「別に、抵抗も何もあんたらは俺に触れることもできねーよ」


 ユアンは大柄の男性の前まで行き、「透過」ですり抜けて進むつもりだったが、大柄の男性は「透過」が発動しているユアンに斬りかかってくる。ユアンは微動だにせず、そのまま進もうとしたが嫌な予感がしたためその大剣を避ける。ユアンは避けたつもりだったが、右腕が少し掠れていた。


 「!?」

 「気付いたか。この大剣は触れたもののスキルを一つ一定の時間使えなくする能力を秘めた魔剣なんだ。貴様のスキル、先程兵士がすり抜けられているのを見てもしやと思ったが当たりだったようだな」


 初めて「透過」が効かなかったことに驚きを隠せないユアンだった。が、すぐに落ち着きを取り戻し、今行う最優先のことだけを実行するだけだった。


 ユアンはゆっくりと刀を抜き、いつでも攻撃ができるように刀を構えた。





 ***


 「国王様。司教様がご到着になりました」

 「おお!そうか!早く連れてこい」


 そう言って連れてこられたのは杖をついた老人だった。老人は白いローブに金の刺繍を施してある豪華なローブを身に纏っていた。


 「これはこれは国王様。今日はどのような御用件で」

 「司教どの、今日はこの子の呪いを解いてほしいんだ」

 「呪いですか、ふむふむ...この呪いは...難しいですね」

 「何だと!?」


 思いもよらない司教の言葉に国王のクルートはひどく激昂する。


 「解くことはできるのですが、少々お時間が必要になられます。一時間ほどお時間をいただければ...」

 「何!そんなにかかるのか!?」

 「普通の呪いでしたら簡単に浄化ができるのですが、この子がかけられている呪いは他のものとは次元が違います。この子にかけられている呪いは二つあります。一つは肉体を蝕む呪い。これは急激な熱を引き起こす事例が多いです。二つ目は精神を蝕む呪いです。これは精神に呪いをかけ相手を少しづつ死へと導く呪いです。肉体を蝕む呪いは簡単に浄化をすることが可能ですが、精神を蝕む呪いは浄化をすることが極めて困難です」

 「そうか...ではお願いするとしよう。ではアイと司教どのは別室で作業に取り掛かってくれ」


 クルートは兵士を呼び出し、寝ているアイを抱えて別室へと移動していった。それに続きし今日も部屋を退出して行った。

 一人残ったクルートはニタニタと笑いが止まらない様子だった。


 「これで呪いが解ければ、あの娘はわしに感謝をする。そしてそのままワシと結婚。ぐふふ...いいこと尽くしじゃわい」




 これはユアンが城に入る前の少し前の出来事だった。


 現在ユアンは大柄の男と刀を交えていた。キィンキィンと刀がぶつかる音が城の中に響き渡る。


 「どうした?お前の力はそんなもんじゃないだろ!」


 大柄の男はユアンとの斬り合いを楽しんでいるようだった。


 「くそ...めんどくせーな」


 ユアンが呟くと身体強化の魔力を上げ、さらに早い攻撃を仕掛ける。だが、その攻撃も全て受け流されてしまう。


 「いい攻撃だな。でもそんな攻撃じゃいつまで経っても俺には勝てないぞ」


 そう言って、男は大剣を力一杯魔力を込めて真横に振り払う。

 ユアンは「透過」が使えないので「未来予知」で先読みして身を引くくして攻撃を回避する。

 後ろから何か崩れる音が聞こえる。確認してみると、先程の攻撃が斬撃となり後ろの障害物が切られていた。


 「ちっ、うまく避けたじゃねーか。でもこれからだぞ!」


 男は先ほどと同じように斬撃を飛ばしてくるが、今度は連撃で攻撃してくる。

 避けると被害が大きくなると考えて、刀に魔力をこめて、斬撃を受け流す。

 「透過」があれば簡単に懐に入り込めて攻撃ができるが、斬撃を撃ってくるため近づくことが容易ではないーーとなれば、斬撃を撃つときの隙を狙って攻撃するしかなかった。


 「どうした?そんな重い大剣をふってるから息切れが激しくなってきてんな。もう疲れたのか?」

 「は?この俺を誰だと思っていやがる!俺はドミノ王国騎士団所属団長のエヒート様だぞ!」


 内心知らねーよと思いながらも、エヒートの隙をうかがっている。

 エヒートが同じように斬撃を連続で打ち出す。斬撃を撃ち終わった後、数秒のインターバルが入ることを見逃さなかったユアンは、最速でエヒートの懐に入り斬りかかった。


 「ぐあっ...」


 着ていた鎧ごとスッパリと切られてエヒートは片膝をついた。エヒートの口からは鮮血が勢いよく溢れ出す。


 「くそ...こんな子供に負けるなんてな...」

 「こんな子供で悪かったね。けど修行以外で俺に傷をつけた人間はあんたが初めてだよ」

 「ふっ、そうか...お前との斬り合い面白かったよ」

 

 そう言ってエヒートはその場に倒れ込んだ。エヒートからは大量の血が流れる。戦闘を見ていた兵士はすぐにエヒートの近くにより血だらけのエヒートをどこかに運んでいた。


 「団長死なないでくださいよ!」

 「あなたが死んだら誰が団長するんですか!」


 部下の兵士たちが必死にエヒートに語りかけている。

 

 「あんたは死なないよ」


 ユアンはエヒートを「未来予知」でその後のエヒートの未来が見えていた。ユアンの「未来予知」は死が近い人の未来は見えるが、死ぬ時の映像しか見えない。が、エヒートの場合はそうではなく、身体中包帯を巻かれて寝ている未来が見えた。


 意外にも部下からの信頼は厚く、亡くなっては困るほどの人だったらしい。


 城内を魔力探知で気配を探ると上の階層から大きな魔力があることがわかった。


 「そこか!」


 そう言ってユアンは上の階層に行くための階段を探した。





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