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第十九話 ユアンの結界

 ケントたちが指定された村に向かった時、王都では市民が地下の避難場所へと誘導されていた。避難指示を出しているのは王都の兵士が誘導していた。

 宮廷魔導師、冒険者の人たちは王都の門で魔物が来るのを待っていた。


 「たく、本当に大量の魔物がくるのかよ...これで来ませんでした。じゃ話になんねーぞ」

 「そう言うな。賢者様が言ってるんだ、あの人たちが言ってるんだから言うこと聞かないわけいかないだろ」


 前衛にいるAランク冒険者は口をこぼしていた。


 確かにここ最近は特に何も変わっていなかった。魔物を狩っている冒険者が一番よくわかっているはずだ。それなのに、森に入って魔物を狩っていない賢者に指示されるのは腹が立っていた。だが、権力的には賢者が上だ。冒険者ギルドでもSランクの称号を持つ賢者の言うことを聞かないわけにはいかなった。


 「まぁこれで何もなくても報酬が三割ほどもらえるんだ。いい仕事だと思えよ」

 「そうだな...でもよくこれだけの冒険者と宮廷魔導師を集めたな。これだけいると王都の守りはいいのか?」

 「それについては問題ないらしい。王都を守るのは一人の賢者らしいから」

 「はぁ一人だけ!?いくら賢者でもさすがにやばいだろ」


 そう王都を守るのはユアン一人だ。ユアンが一人で守ることは賢者のみんなが同意している。


 「まぁ賢者様の考えることだ、俺らにわかるわけないだろ」

 「それもそうだな。俺らはこの仕事だけ考えとくか」


 この場にはAランク冒険者は十五人、Bランク冒険者が二十三人、Cランク冒険者が三十人ほど。各ランクごと数人のパーティが組まれている。王都にはAランク冒険者が五人ほど残り、B,Cランクの冒険者は十人ほど残った。後の冒険者はナイル村とプト村に行くために準備をしている。


 「みんな聞いてほしい!僕は賢者のアーク・ペンデントだ。今回君たちにはスタンピートで発生する魔物を倒してもらう。ここにいる冒険者は王都、ナイル村、プト村の三つの場所に行ってもらう。すでに分けられていると思うが、倒した魔物は各自持ち帰っていい。それとこの任務が終了したら報酬は金貨三枚だ。宮廷魔導師たちは特別報酬が陛下から支払われる。君たちは強い!だから選ばれた!無事に戻ってくることを願う」



 冒険者たちは盛り上がっている。賢者のアークがここまで言ったんだ。盛り上がらない筈がない。移動する冒険者たちは荷物を持って出発しようとした時、ナイル村の方から魔物の唸り声が聞こえた。




 「ぐうぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」




 立っている地面が揺れ、座り込む冒険者もいるほど強い揺れが起きた。



 「もう来るのか...思っていたよりも早いな」


 王都で待っているユアンは魔物の声を聞き、すぐに王都に結界を張るように行動した。

 王都全体を囲む結界はユアンはやったことがなかった。ユアンでさえも結界を貼るのに三分はかかるだろう。ユアンはいつもは使わない詠唱をして結界を作り出す。


 「この魔力を糧にし我の盾となるものを作りだし、あらゆる災厄から身を守る結界を作りだせ!!」


 王都全体の結界を貼ることに成功したユアンはその場に座り込む。


 「はぁ...はぁ...さすがにこの大きさを作り出すのはきついな...魔力を半分も持ってかれた...」


 この結界がある限り、魔物が突進して来るぐらいなら簡単に防げる。魔人の攻撃でも数発は耐えられるだろう。



 王都に巨大な結界が張られていることに気づいた冒険者たちは腰を抜かしていた。


 「おい...なんだよあれ...」

 「知らねーよ...あれが賢者の力なのか」


 先ほどまで王都を守る賢者が一人だけと聞いて信じていなかったAランク冒険者たちだが、結界の中にある王都を見て納得する。


 「「俺たちじゃ絶対に超えられる気がしない」」


 冒険者がこう思うのも仕方がない。一緒にいる賢者でさえも同じこと思っていた。


 「ははっ...さすがユアンだな」

 「ん、凄すぎる」

 「これで、王都は平気そうだね。僕たちはこれから来る魔物に集中しよう」


 だが、あの唸り声から三十分以上経っても魔物が来る気配はない。それどころか一匹も現れない。


 「どう言うことだ?あの声はなんだったんだ...」

 「ん、魔物全然こない...つまらない」

 「おかしいね。もう来てもいい筈なんだけど...ちょっとユアン君に聞いて来るよ」


 そう言ってアークは結界の上にいるユアンに話を聞きに行った。


 「ユアン君、何が起きているんだい...」

 「俺もまだ何が起きているのか分からなくて...「未来予知」で見てもここで魔物と戦っている未来しか見えなくて...少し変わったことはケントとアイとヴァントさんがここに戻って来るくらいしか」


 未来が見えるユアンでさえも何が起きているのか分からない状況だった。アークは嫌な予感を感じていた。

 プト村の方角から微かに爆撃音が聞こえる。魔物が集中してナイル村とプト村に現れているのかもしれない。

ここで王都を離れると、王都の守りが手薄になってしまい危険にさらしてしまう。


 ナイル村とプト村に行く冒険者たちは、この予測できない事態に動けないでいた。





 ***



 ナイル村に向かっているケント、ヴァント、レインは急いでいた。魔人が言っていたことが本当だとすると王都は大変なことになる。ユアンがいるとは言え、魔人と魔物が二千匹となると規模が違う。


 「アイちゃん大丈夫かな?一人で任せちゃったけど...」

 「アイなら大丈夫じゃないですか。あいつも強いし」

 「ていうか、お前ら三人の中で一番強いのって誰だよ」


 ヴァントの質問にケントは即答する。


 「一番はユアンですかね。二番目は多分俺で、三番目はアイかなだと思う」

 「やっぱりユアン君なんだ。さすがにあのスキルは強いもんね」

 「いや、スキルもそうですけど、厄介なのがユアンが持っている刀が凄すぎて...」

 

 最後まで言おうとしたら、ナイル村が見えてきた。会話よりもケントたちは走るスピードを上げてナイル村へと向かった。


 到着したナイル村を見てみると、村には結界で覆われており、周りは氷の世界となっていた。

 巨大な氷の柱の上にアイが立っておりすぐにこちらに気づいた。


 「あっ!レインさーん!全部終わりましたよー」


 村の周りの森は全て氷漬けになっており、現れた魔物も全て氷漬けにされている。

 アイは氷の上から降りて、レインから今の状況を聞かされる。


 「それが本当ならおかしくないですか?」


 レインの話にアイは疑問を持った。


 「アイちゃんどう言うこと?」

 「だって、二千以上の魔物が王都に攻めて来るんだったらこっちに来る魔物は少なすぎませんか?王都に行くにはこっちの道を必ず通らないといけませんし、もし遠回りしてきたとしても魔力探知で何か引っかかるなので」


 アイの言葉に三人は何か嫌な予感を覚える。

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