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第十四話 偵察

 「近いうちにスタンピートが起き、王都は大変なことになります」


 ユアンの言葉にその場は静寂に包まれる。一番最初に口を開いたのは陛下だった。


 「スタンピートが起きるのか!?この国で!?」

 「はい。間違いありません。さっき集まったときにスキルを使ったら、ケントが大勢の魔物と魔人と戦っている未来が見えて」

 「それが本当なら急いで対処しなければ...敵がどっちから来るかはわからんのか?」

 「それはまだわかりません。少し時間をもらえるのなら周辺の村を見て対策を立てることは可能です」

 「わかった。ユアンは周辺の村を見て対策を立ててもらおう。ペトラとバーンには冒険者ギルドと宮廷魔導師に声をかけをしろ。その他の賢者達はいつ攻めて来ても大丈夫なように体制を整えてくれ!王都にいる市民はいつでも避難場所に行けるように手配しろ!」

 「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」」


 陛下の指示でみんなが動き出す。ユアンはすぐに周辺の村を見に行くために王城の執務室の窓から出ようとしている。


 「ユアン!」


 振り返るとアイが心配そうな顔をしてこっちを見てる。


 「気をつけてね... 」

 「わかってるよ。じゃあ行ってくる」


 ユアンは窓から飛び降りてアイ達の前から姿を消した。残ったケントとアイは他の賢者の手伝いをしようと執務室から急いで出た。

 ケント達は市民がいつ避難場所に行けるように非常食や水を避難場所に設置していた。この王都の避難場所は地下にあり、王都の市民全員が避難場所に入ったとしても十分生活できるスペースは確保されていた。


 「さて、ほぼ荷物は運び終わったから、私たちはいつでも戦えるようにしとかなきゃね」

 

 最後の荷物を運び終えるとレインは腰をトントンと叩きながら言った。


 「あのスタンピートってどんなものかわからないんですけど......」

 「スタンピートっていうのは大量の魔物が近くの村や王都に向かってくることなんだけど、それは二、三年に一度起きるか起こらないかなんだけど、今回は間が少し空いてるから少し嫌な予感がするんだ」

 

 レインは深刻な顔をして何か考えるような仕草を取る。

 ケントとアイもそうだがスタンピートに関してはまだわからないことだらけだ。今はいつでも戦える準備をしてユアンが帰ってくることを待つしかない。


 


 ユアンはすぐに王都を出て王都から一番近い村、ナイル村に向かっていた。ナイル村に行く道にはいつも見かけないフォレストモンキーなどの魔物があちこちいる。


 「クソ...邪魔だよ」


 ユアンは所持していた刀で魔物を一刀両断してその場を立ち去った。普段なら倒した魔物は素材として回収するのだが、今はそれどころではない。ユアンは魔物を斬る時も走るスピードを落とさずに次々と魔物を斬っていく。


 「この量は見たことがないな...いや、五年前の魔人と会った時と同じな気はするけど...気のせいか」


 ユアンの「未来予知」でもまだ原因がわかっていない。今見えていることは王都が大勢の魔物に襲われるという未来とケントが魔人と戦う未来しか見えていない。もしかしたらそれ以外でもどこかで被害が起きる可能性がある。ユアンは一刻も早くナイル村とプト村を「未来予知」で見てみないとわからない。

 ユアンが王都を出てから三十分が経過した。ユアンは思っていたよりも早くにナイル村に到着する。急いでナイル村に入り村長の家まで走った。村長の家に着き、ノックしてドアを開ける。


 「村長!はぁはぁ...」

 「ユアンか!?大きくなったなぁ」

 「それどころじゃないです。すぐに中央に全員集めてください」

 「なんだかわからんが、わかった。言う通りにしよう」


 そうして村長は急いで村人を村の中央に集めてくれた。ユアンは村人全員を「未来予知」で見た。予想通りこの村も大勢も魔物に襲われる未来が見えた。


 「クソ...やっぱりか...」

 「どうしたのユアン?そんなに怖い顔をして」


 話しかけて来たのはユアンの母親だった。今見た未来ではユアンの母親も魔物に殺される未来が見えた。

 ユアンはその場にいる全員に聞こえる声で今回のことを話した。


 「みんな落ち着いて聞いてください。近いうちにこの村は大勢の魔物に襲われる未来が見えました」

 「なんだって!?」


 大きな声で驚いたのは村長だった。無理もない、自分の村が襲われると聞いて驚かない人はいない。


 「でも大丈夫です。未来で襲われることがわかれば対処ができるということです。あともう一つの村、プト村を見終わったらすぐに王都に帰り、急いでこの村に賢者と冒険者の人たちを送ります」

 「そ、それは本当か?それならこの村は...」

 「誰も怪我をせずに村が崩壊することはありませんよ」

 

 そう言ってユアンは急いでナイル村を出た。出る間際に母親から「休んでいかないのかい?」と言われたが、今は一刻を争う事態なので「また今度」と言って村を出た。この前行ったときはナイル村からプト村まで一時間はかかったが、今のままで行けば三十分ぐらいで着くかもしれなかった。ユアンは自分に身体強化と雷魔法を纏わせて走った。

自分でも驚くほどの速さで駆け抜ける。このやり方は以前ケントと入学試験で戦った時にケントが風魔法を自分に纏わせて戦っていたことを思い出したのがきっかけだ。


 「うわ、すっごい速さだな。これならすぐに着きそうだな」


 ユアンは一気にプト村まで走る。ユアンの予想の三十分よりも早くに村に着く。急いで村に入り、村長の家まで案内してもらった。


 「村長さん。急いで村の人を全員中央に集めてくれませんか?」

 「ん?急に子供が来たと思ったら村人を集めろ?大人をからかうのもいい加減にしなさい」

 「ふざけているわけじゃないです。今は緊急事態で....」

 「緊急事態?何を言うか。子供の言うことなんて信用できるわけがなかろう!」


 確かにユアンはみんなから見れば子供だ。それは違いない。けど今はスタンピートがいつ起こるかわからない状況でこんな人の話を聞かない村長と話すのは時間の無駄だった。


 「もういいです。私はこれで帰ります」

 「こんな時間に子供一人で帰れるものか!明日の朝に帰りなさい!」

 「時間がないんです!!とりあえずあなたの未来を見て賢者が必要かどうかを決めますので!」


 そう言ってユアンは村長の未来を見た。ユアンが見た未来ではこの村にも大勢の魔物が見える未来と魔人が現れる未来が見えた。


 「クソ...ここだったか」


 ユアンはそう言い放つと急いでプト村を出た。村長はユアンを止めようとしたが村長が止める前には、物凄いスピードで目の前からいなくなっていた。


 「あの子は一体....」



 プト村での対応は散々だった。ユアンは苛つきに駆られつつも急いで王都に向かっていた。最初と同じ道を行かずに直接森を抜けてショートカットをしていた。一々木を避けるのは面倒なので「透過」を使いながらものすごいスピードで駆け抜けた。約三十分という短い時間で王都に到着した。ユアンは急いで王城まで行き陛下の部屋までたどり着く。


 「陛下今帰りました。それと至急賢者達を...」

 「わ、わかった。すぐに呼び出そう。それまでお主は休んでおれ!」


 そう言って陛下は部屋を飛び出て応接室へとみんなを集めて会議が始まる。会議には追加でギルドマスターと宮廷魔道士長がいた。


 「じゃあとりあえずおれが見た未来ではナイル村とプト村の両方はスタンピートの被害に遭います。ナイル村は魔物だけですが高ランクの魔物もいると思われます。そしてプト村には魔人が出現します」


 魔人と聞いてみんなが反応する。


 「魔人って本当か?」

 「はい本当です。村長だけしか見れませんでしたが、確かに魔人はいる未来が見えました」

 「ユアン君ちょっといいかな?ユアン君の未来では魔人は何体出現しそうなの?」

 「確定とは言えませんが予想では一体から二体です。プト村で見た魔人とケントが戦っている魔人とは違っていたので恐らく二体だと思います」

 「そっか、ありがとね」

 「とりあえず、七人賢者がいる中でどこに配置をするか決めましょう」


 ユアンは全員に提案した。全員はそれに頷きどこにいくのかを決める。


 「ナイル村には賢者が二人でいいんじゃねーか。後は冒険者を連れて行けばいいだろ」

 「じゃあプト村はどうするの?魔神が現れるんじゃ三人は欲しいよ」

 「それにソイ爺とアイちゃんもいる事ですし一人増えると考えればプト村に三人行っても大丈夫そうだね」


 レイン、バーン、アークが決めていき話が進んでいく。ユアンが進行しなくても話が進んでいくのでとても楽に感じた。相変わらずペトラは少し眠たそうにしているけど、今回はちゃんと起きている。


 「よし!じゃあ、ナイル村には賢者が二人、プト村には賢者が三人、後は王都を守護って感じだな!」


 先ほどの意見をバーンがまとめる。そして次は誰がどこにいくかだ。


 「行く人はユアン君が決めればいいんじゃないかな?私たちの未来を見てもらって確実に勝てる場所に決めて貰えば」

 「そうだな!頼むぜユアン!」


 ユアンはため息をつきながら賢者全員とアイの未来を見た。この中で一番危ない未来が見えたのはバーンとペトラだった。


 「危ないのはバーンさんとペトラさんですね。バーンさんとペトラさんは王都の護衛に回ってください。レインさんとアイはナイル村に、ケントとソイ爺とヴァントさんでプト村で、後の人たちは王都の護衛でお願いします」


 ユアンの言ったことにみんなが驚く。


 「いや、ユアン君。ケント君をプト村に行かせるってどう言うことだい?さっきプト村の魔人とケント君が戦う魔人は違うって言ってたじゃないか!」

 「そうですよ。プト村にはバーンさんとペトラさんとソイ爺でしたがバーンさんとペトラさんが魔人と戦って負ける未来が見えたので変更しました。今のケントが本気を出せば大体勝てますよ」


 ユアンの言葉でアークは納得する。ユアンは自分の言葉に付け足しをした。


 「それに王都付近にも魔人がでますが、バーンさんとペトラさんなら討伐は可能だと思います」

 「よしわかった!ユアンお前の未来信じるぜ!」

 「ん、わかった」

 「冒険者ギルドの方ではできればDランク以上の方でお願いします。それ以下だと足手纏いになる可能性が高いので、宮廷魔導師については基本的に王都の守護でお願いします」

 「「了解しました!」」


 「ではみんな各自自分の指定された場所に速やかにいくように!解散!!」


 陛下の指揮でみんなが一斉に散らばる。ケントとアイはプト村とナイル村にいくので急いで準備に取り掛かる。


 「お互いがんばろうぜ!」

 「帰ってきたらお祝いしようね!」

 「お前ら死ぬなよ」


 ユアン達三人は散らばる前にお互いを励まし合って自分の指定された場所へと行った。


 



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