第十三話 後始末
貴族との決闘は、ケントの圧勝だった。失禁し気絶した貴族達は医務室へと運ばれた。貴族達はケントの魔法が当たったわけではなくギリギリのところでケントが魔法を相殺させただけなのでお互い怪我をすることなく決闘は終わった。
クレアは観客席から飛び出してケントのいるグラウンドまで走って行った。
「ケント様お疲れ様です!ケント様の魔法とてもカッコ良かったです!」
「応援ありがとなクレア。これであの貴族達も静かになればいいんだけど」
「そのことなら大丈夫だと思います。あとはお父様に任せておけばその後の処理など行ってくれるはずです」
「そっか、じゃあこれで終わりだな」
そう言ってケントはクレアと一緒にユアンとアイがいる観客席まで歩いてきた。
「よう!どうだった?俺の試合」
「まぁ良かったんじゃねーの?怪我人も出さずに勝てたんだから良い方だろ」
「そうだねー。あの火の玉を投げた時はヒヤヒヤしたよ」
「でも、ケント様が風の玉で相殺した時はカッコ良かったです!」
ケントとクレアがいるだけで空気が変わる。ユアンとアイがいるのにもかかわらず、イチャイチャする。これについてはクレアがケントを好きすぎるせいか周りが見えていない。ユアンとアイはその空気に耐えつつ、話の流れを変えた。
「それで、とりあえずはあの貴族達は全員一番下のクラスってことだよな?」
「多分そうだと思うよ。さすがにクラス全員とは思わなかったけどね」
貴族達は気絶しているせいか、教師達によって医務室へと運ばれている。観客席にいた人たちは試合が終わると自分のクラスに戻って行き、観客席に座っていたのはユアン達四人だけだった。
「さて、君たちお昼休憩はもう直ぐで終わりだから教室に戻りなさい」
グラウンドで後処理をしている教師に声をかけられた。教師の指示通りにユアン達は教室へと戻る。
「あっ!そういえば昼食べるの忘れてた!」
学園の廊下を歩いているとアイが何かに気付いたかのように大きな声を出した。そう言われてみるとユアン達も昼ご飯を食べていなかった。
「そういえば忘れてたな。食堂も閉まってるしもう時間はないだろ?」
「てか、俺たち授業に出なくても良いから購買探して何か食べようぜ」
ケントの言葉を聞いてそうするかと納得した。アイはそれを聞いてすぐに止めた。
「いや、ダメでしょ。私たち四人がいなくなったら、マック先生一人で教室にいることになるんだよ?」
「そうですね。とりあえずここは我慢して午後の授業を終わらせましょう。帰ったら料理長に何か作らせるように指示を出しますから」
マック一人で教室っていうのもかわいそうだからここはクレアの意見に賛成する。ユアン達は教室のドアを開けるとやはり誰一人いなかった。
「さて、先生が来るまで寝るか」
ケントは最初に座っていた席に座り机に頭を置いて眠りにつく。ケントが机に頭を置いた瞬間、勢いよくドアが開きマックが入ってきた。
「やあ君たちご苦労様!すごい戦いだったね。特にケント君!さすが最年少賢者なだけはあるよ。それにユアン君のあの壁はすごかったね。あれは見たことないけど自分で作ったのかな?」
「そうですよ。あれは俺のオリジナルですよ。良かったら教えましょうか?」
「良いのかい!?」
マックは少し驚いている。オリジナル魔法は自分しか使えない技だ。それを安易に人に教える人は滅多にいない。バーンは自分のオリジナル魔法を教えてくれたから、ユアンもお返しに結界魔法を教えた。
「ええ、どうせこのクラスにはこの四人しかいないわけですし、何の問題もないですよ」
「ありがとう。では早速教えてくれるかな?」
「わかりました。この結界魔法は、防御魔法の基礎、魔力障壁を同時に四つ使用して作られたものです。まずは魔力障壁をどのくらい出せるかやってみてください」
ユアンはその場で魔力障壁を四つ出した。マックは魔力障壁を一枚しか出せていないかった。
「ぐっ...はぁはぁ..とてもじゃないが四枚なんて出せないよ」
マックが弱音を溢す。ユアンはマックが悪い部分を指摘する。
「まず、魔力障壁を二枚出すコツは一つの手で一枚出す用意しましょう。そうすれば二枚は出せます。三枚目からは自分の作り出した魔力障壁の前に作るイメージです」
「難しいことをさらっというね。さすが賢者様ってところだね...」
マックはユアンに言われたことをずっと反復して練習している。ケント達を見てみると同じく結界を出すのに苦労しているようだった。
「おっ!ケントとアイはもうすぐだな。あと一枚がんばれ。クレア様もあと二枚頑張ってください」
さすがケントとアイは飲み込みが異常に早い。クレアも賢者との特訓で魔力操作が上達している。これならみんな思っていたよりも早く習得できるかもしれない。
一時間あれから結界魔法の練習をして少し成果が出たのはケントとアイだった。ケントとアイは魔力障壁を四つ出すことに成功はしたが、結界のようにそれを組み合わせることはできていなかった。クレアとマックは魔力切れでリタイヤして椅子の座って休んでいる。ちょうど授業のチャイムが鳴るとみんな作業を中断した。
「そうだ。君たち次の授業休みたかったら帰っても平気だよ」
「えっ!?何でですか?」
「君たちの実力なら授業に出てなくても良いって言われているし、次の授業の担当も僕だから疲れていたら帰っても問題はないよ。それにお昼を食べていないみたいだしね」
そう言われると全員お腹から音がなる。
「どうする?もう帰る?」
「今日はそうしようよ。みんな疲れているだろうし」
「そうだな。クレアも魔力切れ起こしているから今日はきついかもな」
そう言って今日の授業は終了して帰る支度をした。帰り支度を終わらせ教室を出ようとするとマックに今日のお礼を言われた。
「ケント君達。今日は本当にありがとう。君たちがいてくれたおかげで穏便に解決できたよ。本当にありがとう」
マックは深々とケント達に頭を下げた。
穏便に解決なのか?と思いながらもユアンは口には出さずに心の中に留めた。
「別に良いですよ。あれはただケントがおかしなことを言ったのが始まりですから。先生達が気にすることではありませんよ」
「そうですよ。無事に全員怪我なく解決できましたしそれで良いじゃないですか」
「君たち....本当にありがとう!思い出した!今度学園長からも今回の件について話があるみたいだから近いうちに呼ばれるから覚えておいてね」
「「「「あっ....はいわかりました」」」」
ユアン達全員は何か嫌な予感をしつつ学園を後にした。城に戻ると全員陛下に呼ばれて執務室に全員呼ばれた。用意された席に座るとメイドがお茶を出してくれる。
「さて、ケント。今回のお主の活躍は見事じゃった」
「いえ、別に大したことないですよ」
ケントは陛下に敬語を使って話さないので隣にいるアイに頭を叩かれる。
「今回の貴族の子供達に関してじゃが...クラス全員お主達の敵になったことで間違いはないか?」
「はい。間違いはありません」
「む、そうか....実はなリーダー的存在の貴族がおったじゃろう。その子の名前はサリン・フォン・イルームと言ってな、テクダール伯爵の嫡男でその子はわがままな性格だそうだ」
ユアン達全員はその光景を見ていたからあのわがままっぷりを見ているので全員納得した。
「テクダール伯爵はとても真面目で優秀な貴族なんだが、どうも息子のサリンがわがままが過ぎるようで今回このような事件が起こったらしい。そのサリンって子はなんとかケント達との決闘に勝つために、ユアン達に敵意のないクラスメイトまで貴族の名前まで使って無理やり決闘に参加させたようなんだが......」
「それでその子達のクラス降格は無しにしてくれないか?ってことですよね?陛下」
言葉が詰まった陛下にユアンが容赦ない言葉を陛下に問いかける。
「そういうことだ。よくわかったなユアン」
「まぁ大体は予想できますが、スキルのおかげですよ。俺としてはその子達の降格は無しでも良いですよ」
「本当か!?」
「はい、その子達もサリンっていう子に弱み握られて仕方なく参加していたんならこっちと同じ被害者ですしね。その子達まで道連れにしちゃかわいそうですよ」
「そうだね。私もそれで構わないです」
ユアンとアイの言葉に続いてケントとクレアもそれに賛成する。
「俺もそれで良いよ」
「私もそれで良いと思います」
「わかった。では、その子達の親には私から連絡をする。急に呼び止めてすまなかったな。もう休んで良いぞ」
話が終わりケント達は、部屋から出て行こうとした。がユアンがそれを引き止めた。
「みんなちょっとだけここにいてくれないか。陛下大至急賢者のみんなをここに読んでもらって良いですか?」
ユアンの言葉にケント達はそれぞれ座っていた席に座り直す。
「構わないがどうかしたのか?」
「ちょっと今不吉な未来が見えて......」
「どんな未来なのだ?」
「それは全員が来るまで待ってください」
陛下はすぐにセバスにこの部屋に集まるように賢者のみんなに伝えてくれた。三十分後には全員が集まり、引退したソイルまで来てくれた。
「エレクさんはいないんですか?」
「エレクは引退してから旅に出たっきり帰ってきてないよ」
ユアンの問いかけにレインが答えてくれる。レインの言葉を聞いてユアンが少し落ち込んだ。
「それで話ってなんだよ、ユアン。俺たちも暇じゃないんだぞ」
みんなの集まりの悪さにバーンが少し苛ついている。
「率直に言うと、近いうちにスタンピートがこの王都で起こり、この国は絶大な被害を受けることになります」
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