第十話 入学式
「では今日からこのクラスを担任するマック・リーズムです。以後お見知り置きを」
マック・リーズムという青年はこのSクラスの担任だ。見た目はとても若く二十代前半に見える。髪は白髪だが普通の白髪とは何か違うようだ。
「さて、これから入学式になります。皆さんには別室に移動してもらい、全クラス合同で入学式を行います。入学式が終わったら各自で下校しても構いませんが、先ほど問題を起こした生徒は残ってくださいね」
マックはケントや問題を起こした貴族の子供達を見る。問題を起こした生徒っていうのはケント以外の三人も含まれているのか、それとも含まれていないのか。ユアンは先ほど堂々と結界魔法を使ったため、どちらにせよユアンは悪目立ちすることが確定している。
「先生、それって俺ら三人も入りますか?」
「......そうですね。王女殿下のクレアさんには悪いですが君たち三人も残ってくれますか?」
ユアンはため息を吐いて「わかりました」と力なく答えた。
「それでは会場に移動しましょうか」
マックの指示で会場に案内される。案内された会場は思っていたよりも広く二百人は軽く入る広さだった。ユアン達三人は学校の体育館を思い出していた。
「なんかちょっと懐かしく思えるよね」
「そうだなー。部活動に参加してる人は会場を作るのに手伝わされたよな」
「俺は部活には入ってなかったからわからないけど...この入学式の感じは懐かしく思えるな」
少し前世のこと思い出すユアン達三人。もし事故がなければ今頃社会人となって社会で生きていく大人になっていただろう。そんな自分も見てみたかったと思っているとマックが話しかけてきた。
「いつまでもそこに立っていないで君たちが座る席はここだよ」
会場の中を見ていたユアン達は座ることを忘れて前世を思い出していた。マックの言う通りに案内された席につき入学式が始まるのを待った。席に座ってから数分が経つと壇上に一人の男性が立った。
「ではこれから入学式を始めます。最初は学園長の言葉です」
男性は言い終わるとお辞儀をし舞台袖に消えていった。入れ替わりと同時に入学試験であった学園長が壇上に立つ。
「学園長のマーシュ・ブライです。まず最初に皆さんご入学おめでとうございます。この学園では貴族平民関係なく勉強ができます。そのため皆さんは安心して勉学に取り組んでください。もし、貴族の権力を振りかざすようなことがあったらペナルティーを課しますのでそのようなことがないように学園生活を送ってください。私からは以上です」
学園長の言葉が終わり司会の人が進行を進める。前世の学校と同じように入学式は長く感じる。次々と進行が進んでいく中、生徒会長の言葉があった。
「生徒会長のロック・フィーンです。この学園には生徒会という組織があります。生徒会での主な動きは校内を安全に生活してもらうために校内の清掃をする美化部や悪さをする人に注意する執行部などがあります。年齢関係なくやりたいと思う人がいたら生徒会室に来て簡単なテストと面談をしてもらいます。もしそれに受かったら私たちの仲間になり、この学園を良くしていきましょう」
なっがったらしい生徒会長の挨拶が終わると次は新入生代表の言葉だった。少し緊張して壇上に上がるケント。それを見てると少し笑いがこみ上げてくる。
「ええっと、新入生代表のケントです。この学園では貴族平民関係なく勉強を学ぶことができます。そのため自分が積極的に学べる場所だと思います」
昨日の作文に書いてあることをそのまま読んでいるケントを見て安堵するユアン。昨日の作文では特に変なことは書いてなかったのでこのままいけば担任のマックの評価は少し上がるだろう。
「最後に平民の僕が納得いかない人たちがいたら遠慮なく僕と戦いましょう!それで白黒はっきりさせましょう。いつでも待ってます」
ケントの謎発言で会場は一気に静かになる。参列している教師を見ると全員何が起きているのか状況が読めていなかった。いや、一人だけ状況がわかっている人がいた。マックだ。マックはケントの発言で腹を抱えて笑っている。学園長でさえもまだ理解が追いついていなかった。ケントは話が終わると壇上をおり自分の席に戻ってきた。
「いやー緊張したなぁ。変じゃなかったか?」
「いや、変だった。めちゃくちゃ変だった。なんだ最後の一言は」
「なんか平民だからって舐められたままだとムカつくからあの状況で言えば何か変わると思って」
「ああ、変わるよ。悪い意味でな!」
司会の人がこの静寂と化した空気をなんとかするように色々な話をして空気を戻した。その後閉会の言葉を言って入学式は終わりとなった。入学式が終わり各自解散になる...はずだったが問題を起こしたせいで居残りとなってしまった。皆教室で担任のマックを待つ。しばらくするとマックが教室に入ってきた。
「やあお待たせ。さて今回の処遇だけど.....君たちで決闘して勝った方の言い訳が通ることになったよ。これは先ほど学園長と話して決まったことだよ」
ケントはそれを聞いてやる気に満ちていたが、され以外のユアンとアイとクレアはマックの言ったことが理解できずその場で固まってしまった。
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