第三話 確認
「あれ、ここはどこだろう」
目を開けると知らない天井だった。自分は神様とあって転生したことを思い出す。
「ああ、ほんとに転生したんだな...」
太陽は体を起き上がらせようとしたが、体に力がうまく入らない。周りを見ようとしても首しか動かせない。自分の手を見てみると赤ちゃんと同じくらいの大きさの手になっていた。ダァブゥ《なにこれ》思わず声に出てしまったのか奥から女性の声が聞こえてきた。
「あらら〜もう起きちゃったのかな?もうちょっと寝てて欲しかったけどなぁ」
そう言って太陽を軽く持ち上げた。女性は太陽を抱き抱えたまま外に出た。外に出ると陽の光が太陽の視界を奪う。
「あら、ユアンちゃんもお散歩?」
後ろから女性の声が聞こえた。しかもユアンって誰だ?太陽を抱き抱えている女性が、声のした方向に振り向いた。
振り向くと、赤ちゃんを抱いている女性が立っていた。
「あっラミさん!」
太陽を抱き抱えている女性が後ろにいた女性の名前を読んだ。
「こんにちは〜ルリさん。ユアンちゃんもこんにちは」
太陽を抱えている女性はルリという名前らしい。ラミは自分が抱えている子供を俺に顔が見えるように挨拶してきた。
「初めましてケントです。仲良くしてねユアンちゃん」
ラミが抱えている子供の名前はケントというらしい。見た感じは俺と同じ。それよりも、ケントを見たときにケントの周りに白いモヤモヤが見えた。神様が言っていた「見ればわかる」っていうのはこういうことだったのかもしれない。
まだ、お互い話せる年齢ではないので短くても三年が経たないと会話が成立しない。あのケントという子供が大地か由依かわからないが、俺の予想では大地のような気がする。俺は早く三年が経って欲しい。大地や由依に会えるかもしれないという理由もあるが一番の理由は、母親からもらう授乳やトイレなどのおしめを替えられる精神的苦痛は味わいたくない。
頼むから早く三年経ってくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!
***
月日は流れ苦しくて長い三年が経った。俺は一人で歩けるようになって家の外でも遊べるようになった。三年間暮らしていてわかったことがある。俺の名前はユアンという名前だ。俺が住んでいるのはアウスト王国の一番端にある小さな村、ナイル村。小さな村だから国からの物資など来ないんじゃないかと不安になったこともあるが、幸いにも国がちゃんと物資を運んできてくれるので、飢餓や病気で苦しむ人はいない。この国では五歳になると国から教会の人がやってきて神様から祝福を貰うらしい。この祝福で人生がほぼ決まるらしい。珍しいスキルなど授かれば王都で生活することもあるそうだ。また、十歳になると村の子供たちは王都の学校に五年間通う必要がある。この国には魔法を極めた七人の賢者がいる。一人一人が違う属性を持っていて火、水、風、雷、土、光、闇、無の八つの属性が存在する。まれに二つの属性を使える魔導師もいるらしいが極めてまれな存在らしい。三年間も住んでいると色々わかってきたこともあったが、少し問題が起こった。ケントと初めて会った日から約二ヶ月後村で女の子が生まれた。その女の子の名前はアイ。俺が初めて会ったのは一歳の時。アイのお母さんに家に招待された時に初めて知り合った。招待されたのは、俺とケントのみだった。お互い同い年ということもあったので家に招待されたらしい。アイを見た時にも思ったが、ケントと同じようにアイの周りにも白いモヤモヤが見える。俺は、今日三人で遊びに行ってる間にケントとアイに前世のことを覚えているか確認するつもりだ。
「ママーちょっと遊んでくるー」
俺は急いで家のドアを勢いよく開けた。台所で洗い物をしている母から
「ケント君とアイちゃんと仲良くするのよー」
という声が聞こえたがそのつもりだ。もしかしたら、今日、あの日に死んだ俺たちがまた出会えると思うとわくわくが止まらない。俺は駆け足でケントの家に行った。ケントの家の前に立ってドア何回か叩いた。ドアを叩くとケントのお母さんが出てきた。
「おはよう、ケントママ」
「はい、おはよう。今日はどうしたの?ケントに用があるの?」
「うん!一緒に遊ぼうと思って」
「わかったわ、すぐに呼んでくるわね」
と言ってケントのお母さんは家の中に戻っていった。数十秒後にドタドタと足音が聞こえてきて勢いよくドアが開いたと思ったらケントが息切れをしながら俺の前にきた。
「おはよう!ケント。一緒に遊べる?」
「おはよう!遊べるよ」
「じゃあアイも入れて三人で遊ぼうよ」
「わかった!すぐ準備するから待ってて」
そう言ってケントは家の中へ戻っていった。五分後に戻ってきたがさっきと格好が全く変わっていない。何のための時間だったんだと思いながらアイの家に二人で向かった。アイの家に行くと、アイは外でお母さんと一緒に洗濯物を手伝っていた。
『アイママおはよう!』
「あら、ユアン君とケント君。何か用事?」
「アイちゃんと遊ぼうと思って」
「あら、そうなの。アイ行ってきなさい」
アイのお母さんがそういうとアイは持っていた洗濯物をお母さんに渡してこっちに来た。
「おはよう!ユアン、ケント!」
『おはよう!アイ』
俺たちは三人で集まってなにで遊ぶか話しているところで俺は提案した。
「アイこの近くに人があまり来ない場所ってどこかない?」
アイは困った顔をして数分悩んだが、割とすぐに返答がきた。
「今ならうちの倉庫なら誰もいないと思う。お父さんこの時間はいつも畑にいるから今は誰もいないよ」
俺はその答えを聞いてその場所に決めた。俺は一刻も早く確かめたかったので二人を急かすようにアイの倉庫へ向かった。倉庫に行くと誰も人はいなくて話すなら絶好のチャンスだと思った。
「ねぇユアン。こんなところでなにするの?」
アイは不安そうに聞いてきた。
「ちょっと話したいことがあって......」
『話したいこと?』
ケントとアイは不思議そうな目で俺をみる。
「ねぇ、二人とも。佐藤大地と一条由依って名前は知らない?」
読んでくださりありがとうございます。