表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
291/307

第四十話 救出

 ユアンとアイはその後、食堂で朝食を食べて各自部屋に戻った。

 部屋に戻ったユアンは、外に行く準備をして着替え始める。着替えが終わり、賢者の証である黒いローブを身につけようか迷ったが、今のユアンは賢者ではないため身につけずにそのままロッカーの中にしまう。

 刀を持って部屋を出ようとすると、ドアを叩く音が部屋に響く。「またか...」と思いつつも今回のタイミングはユアンにとって完璧だった。ユアンはドアを開けると、そこにはアイが賢者の格好をして立っていた。


 「えっ!?ユアンどこ行くの!?」

 「んーちょっとね...」


 はぐらかすユアンにアイは鋭い目でユアンを睨みつける。


 「行き先ぐらい行ってくれないの?それとも...私にいえない場所なの?」


 声だけで段々と不機嫌になっていくアイを見てユアンは素直に行く場所をいう事にした。


 「クローム王国に行ってジェロンドさんに会ってくるんだ。生き返った報告もしなきゃだし...」

 「なんだ...それならそうと早く言ってよ。私はてっきり...」

 「てっきり?」

 「知らない場所で女でも作って会いに行ってくるのかと思った」

 「そんなことしてねーわ!」


 一瞬冗談なのか本気なのかわからなかったが、ユアンはアイにある頼み事をする。


 「アイ、悪いんだけどこのポーションに完全回復(パーフェクトヒール)をかけて欲しいんだ」

 「これって...魔力回復のポーションだよね?」

 「そうそう。二本あるからちょっとお願いしてもいい?」


 アイはユアンの頼みということで、一度ユアンの部屋に入り部屋の中で神化をして魔力回復ポーションに完全回復(パーフェクトヒール)をかけた。

 

 「よっしゃ!じゃあ行ってくる!」


 ユアンはアイに完全回復(パーフェクトヒール)をかけてもらったポーションを持って窓から外に出た。


 「ちょっとユアン!?」

 「すぐ帰ってくるから、マルタのことよろしく頼む!」


 そう告げると、ユアンは身体強化と雷魔法を纏いながら屋根を伝って高速で移動する。障害物などは「透過」で回避しながらクローム王国を目指した。


 このぐらいだったら一時間ぐらいで着くか...急がなきゃな...



 クローム王国王都では、人々は普通に暮らしをしていたが貴族達は大慌てだった。その理由として、先の戦いでクローム王国最強であるジェロンドが魔神ヘラに敗北したことが原因だった。トドメを刺されそうになったところをルリネが参戦したことと、突然ヘラが戦力を引いたことでジェロンドが死の一歩手前まで来ていた。

 ジェロンドは現在、居候しているウェント公爵の屋敷で集中治療が行われていた。集中治療といっても、薬で少しづつ毒を中和していくことしかできなかった。


 「ジェロンドの容体はどうだ?」


 ウェント公爵が専門医である男に声をかけるが、専門医は静かに首を横にふる。


 「一応ですが、調べた毒の解毒薬は少しづつ射ってはいますが...完全に解毒が完了するまでジェロンド様の体が持つかどうか...本来であれば即死していてもおかしくない怪我ですし、何より私たちでも知り得ない毒も入っているのでもし、万が一一命をとりとめたとしても完全に回復するのには長い時間が必要となります」


 専門医の言葉を聞いてウェント公爵は膝から崩れ落ちる。ウェント公爵はジェロンドを初めて引き取った時や学園での生活など父親がわりのことをしていた。血は繋がっていないがジェロンドのことを息子のように接していたが、そのジェロンドが自分よりも先に死ぬかもしれないとなるとウェント公爵にとっては耐え難い苦痛だった。

 それと同時にジェロンドが死んだ場合、同じように魔物が攻め込んできたらおそらく押し返す力はなかった。圧倒的なジェロンドの力のおかげでこの国は守られていたが、それもなくなるとなると絶望でしかなかった。


 「ウェント...公爵...」


 振り絞るような声でジェロンドがウェント公爵を呼ぶ。


 「ジェロンド!」

 「ウェント公爵...今までお世話に...なりました。俺、ウェント公爵と一緒にいるの楽しかったです」

 「やめてくれ...そんな言葉は聞きたくない...ちゃんと前向きな話を...」

 「無理ですよ...俺はもう自分の命がないことはわかっています」

 「ジェロンド!そんなことは言うな!諦めるな!」

 「だって...ユアンが...俺を迎えにきてるんですから...」


 ジェロンドが指を指すとそこには死んだはずのユアンの姿があった。それに気づいたのはジェロンドだけで、他のみんなはジェロンドにしか注目していなかった。


 「だいたいあいつは...死んでからもこっちに連絡ないし...アイちゃんを泣かせるクソ野郎だし...迎えにきといてあの顔...結構ムカつくな。けど...迎えがユアンってのも悪くなーーー」

 「うるさい」


 ジェロンドが最後まで言葉を言おうとした瞬間、ユアンは持っていた一本のエリクサーをジェロンドの口の中に流し込む。


 「ガボッ!がボボボボ!?」


 その光景を見て専門医とウェント公爵は腰を抜かして驚いていた。そしてすぐに先ほどまで死の淵にいたジェロンドが勢いよく起き上がった。


 「治った!!!」

 「「えええええええっ!?」」





いつもありがとうございます。面白かったらブックマークと評価をお願いします。

次回の更新も来週になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ