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第二十九話 ユアンvs魔人

 ユアンはあの日以来魔人を見るのは二回目になる。久しぶりの戦闘。一人で戦うには心細いが今はやるしかない。


 「さて、話し合いは終わったか?とっとと始めようぜ!!」


 ユアンとの戦いを急かすツノありの魔人。ここで全員戦えば村に貼った結界が壊れる可能性がある。ここは上手く場所を移動しなければならなかった。


 「なぁここで戦うには狭すぎないか?もう少し広い場所でやろうよ」


 ユアンは場所を移動する提案を魔人に問いかけた。断られるかと思ったが簡単に魔人は了承した。


 「いいだろう。確かにここでやるには狭すぎるな。お前の提案に乗ってやろう」


 そう言ってユアンは森の中に入り村から少し離れた場所に移動した。


 「じゃあそろそろやろうか」


 ユアンは掌から炎を出していつでも攻撃ができるようにする。それを見て魔人は高笑いをしながら、魔力が上昇して行った。


 「はっはは!いいな!お前のその心意気。俺たちを見ても臆せずに冷静に考えることができる分析能力。そしてその魔力の大きさ!いい!実にいい!」


 魔人は改めてユアンを見て一人で楽しんでいた。


 「一つ聞いていか?あんたら魔人はあの白狼(ホワイトウルフ)の亜種の死体をどうするつもりなんだ?」


 ユアンは気になっていた。人間が魔物の死体を回収するのは食糧にしたり、素材として活用することができるからだ。だが魔神が素材として活用するとは聞いたことがない。魔人が回収する意味がわからなかった。


 「食べるためさ。俺たち魔人は沢山の魔物や人を殺して食べることで進化してきた。高い魔力を持つ人間や稀な魔物は殺して食べると強くなれるからな。お前も知ってんだろ、魔物が魔人になる過程をよ」


 「なるほどね。そう言われたら渡す気にはなれないな」


 ユアンがそう言うと魔人はニヤリと笑いながら楽しそうに話す。


 「別に、お前らを殺して奪うまでだ!それが嫌なら俺を殺して見せろよ!!!」


 森に響くような大声で叫ぶ魔人。魔人が叫んだおかげで周りにいた魔物は近づかなくなり戦いやすい状況になった。


 ユアンはすぐに火弾(ファイヤーバレット)を魔人に打ち込む。いつもは魔力制御をして抑えていた魔法だが、魔人が相手となると全力で撃たなければこっちがやられてしまう。魔人は魔力障壁で防御しており簡単には倒せなかった。


 「中級魔法でこの威力か....お前何者だ?」


 「ただの賢者の弟子だよ」


 「それだけじゃねーだろ。お前何かすごいスキルとか隠してるんじゃねーのか?」


 「そんなの言うわけないだろ!」


 ユアンは「未来予知」で魔人の攻撃を見つつ、火属性魔法で攻撃していった。魔人はそれを防御しつつ水属性魔法で反撃した。


 「へえ、水属性か」


 「そうだよ。お前の火属性だと相性が悪いよな?」


 「別にその水ごと炎で蒸発させるだけだよ」


 ユアンは本気の戦いで少し楽しんでいた。いつも撃つ魔法は魔力制御で制限していたけど、殺し合いということでやらなきゃ自分がやられる状況なので手加減をする余裕がなかった。初めて思いっきり撃つ魔法は想像以上の威力を発揮したがそれでも魔人には致命傷を与えることができなかった。


 「どうした?あれだけ俺の魔法を蒸発させるとか言っといてもう終わりか?それならこっちから行くぞ!」


 魔人は両手から水の球を出し、それを胸の前で合成させて水のビームを撃ってきた。ユアンはそれを回避すると、また同じ攻撃が回避した場所に撃ち込まれた。ユアンはその攻撃をもろに喰らってしまった。


 「グハッ」


 堪えることができずに声が漏れてしまう。当たったところがズキズキと痛む。水が人体を貫通したんじゃないかと思えるほど痛みだった。レインとの修行でレインの魔法に当たったことはあったが、比較にならない位の威力だった。


 明らかに回避した場所にすぐに打ち込むのは早すぎる。そう思っては不思議ではないほど魔人の攻撃は速かった。


 「この以上な攻撃の速さって、あんたのスキルに関係があるのかな?」


 「そうだ。俺のスキル「直感」でな。相手がどう動くかどんな動きをするかを予想することができるんだよ。まああくまで予想だから外すこともあるけどな」


 「随分と詳しく教えてくれるんだね。余裕の現れ?」


 「まぁそうだな。俺は優しいからな。自分の能力を教えて戦った方が面白いだろ?」


 ケントと同じようなことをいいそうだなと思いつつ魔人の攻撃を避ける。いい加減避けるのが辛くなってきたユアンは「未来予知」と「透過」を使い攻撃をすり抜けさせ、反撃をした。攻撃がすり抜けたことを見た魔人は驚いていた。


 「攻撃がすり抜けるスキルか。厄介なスキルだな。なんだ?えらく大きな息をするようになってきたな」


 魔人は余裕そうな表情で戦っているが、ユアンは最初に比べると肩で息をするようになってきた。


 ユアンは身体強化もしつつ属性魔法を発動することはとても辛い状況だった。魔力制御がうまくできていると言っても、それは子供に対しての話であって賢者と比べると天と地の差がある。ユアンはまだ実戦経験が皆無であるため、緊張などの疲れが出てきている。


 「うるせえよ.....まだとっておきが残ってるんだからよ....」


 魔人は余裕そうな顔をしてユアンを煽る。


 「へえ、じゃあそのとっておきっていうのを撃ってみろよ」


 ユアンは疲れている体を無理やり動かし魔法を発動させる。今から撃つ魔法はバーンが教えてくれたバーンのオリジナル魔法だ。

 ユアンは大量の魔力を込めて魔人に放つ。


 「炎爆焼尽(プロミネンス)!!!!!」


 この魔法は灼熱(インフェルノ)よりかは射程は伸びないが、その代わりに威力が高くなっている。

 ユアンが放った後は、森は焼けていて修復することはできそうになかった。魔人の姿はどこにもなく今ので消しとんだかと思えた。探していくと水の球体で防御されている魔人を見つけた。


 「クッソ........まさか....ここまでの威力とはな.....」


 明らかに先ほどの余裕な表情は見当たらない。大ダメージを喰らっている魔人だが、ユアンが止めを刺す為の魔力は少ししか残っていない。上級魔法を一回撃てるかどうかの魔力しか残っていない。


 「この防御ならお前の残りの魔力では俺を倒すことはできねーよ」


 ユアンはまだ属性を隠していたことをラッキーだと思った。ユアンは魔人に近付き水の球体に手を置いた。


 「悪あがきのつもりだと思うがやめとけ。今のうちに大人しく逃げておいた方が賢明だぜ?」


 「いや、そんなつもりはない。もう終わりだ」


 ユアンは魔人を覆っている水に上級雷魔法雷撃(サンダーボルト)を放った。


 「ぐああああああああああああああああ!!!!!」


 森に響くような大声で叫ぶ魔人。

 水は電気が通りやすいから好都合だった。叫んでいる魔人はだんだんと大人しくなって、叫び声が止んだ。

 魔力が尽きて魔法が止まると魔人を覆っていた水は形を保つことができずに崩れてしまった。水の中から出てきた魔人は細い声で呟いていた。


 「二つ...持ちだ....ったとはお、思わなかった.....ぜ」


 そう言って魔人は息を絶った。魔人が死んだことを確認してエレクのもとに帰ろうとしたが、受けた攻撃と魔力の枯渇でユアンはその場に倒れてしまった。


 



 


 


 

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