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第三十八話 乱入

 「さてと...これからどうするかな...」


 ユアンとマルタはクレアの部屋を出てから二人で廊下を歩いていた。


 「タイヨウさん、どっちの名前で呼んだらいいんですか?」


 マルタの問いにユアンは笑って答える。


 「どっちでもいいよ。マルタが呼びやすい方で」

 「じゃあ僕もユアンさんって呼んでもいいですか?」

 「もちろん!」


 二人でいる時のマルタはたくさん話すけど、知らない人が多いところだとあんまり話さないな...まぁそれは俺もだけど...


 「マルタは今日あった人でこの人嫌だなって人いた?」


 それを聞いてマルタはものすごい勢いで首を横にふる。


 「ううん!みんな優しかったです!さっきお菓子をくれた人も...とても綺麗で...優しかったです」


 アイに関しては少し恥ずかしそうにいうマルタを見て、ユアンは思わず笑いを堪えることができなかった。


 「ははっ!そうか!なら...今度はアイに直接お礼を言えるようにしないとな。って言ってもここにいる全員はお前のことをいじめたりしないから、そこは安心しろ。まぁ、ちょっと変な人はいるかもしれないけど」


 ユアンはマルタを部屋まで送り届けて、ドアを閉めようとしたところマルタのお腹がタイミングよく鳴った。


 「夕食までもう少しだから部屋でちょっと休んでてくれ。まだ、他の人が怖かったら俺と二人で食うか?それとも...」

 

 まだ、人見知りをするマルタにユアンは二人で食べることの提案をする。


 「僕は...さっきの人たちと一緒に食べたいです...だめですか?」


 その答えにユアンは笑顔でマルタの頭をくしゃくしゃと撫でる。


 「まかせろ!一緒に飯が食えるように言ってくるから!」

 「はい!」


 そう言ってユアンはマルタの部屋のドアを閉めると、再びアイ達のいる場所へと戻った。ユアンがクレアの部屋に着くと、アイはすでに部屋から退出しており部屋にはクレアとケントがいた。


 「どうした、なんかようか?」

 「夜飯一緒に食べないかって話」

 「いや、普通一緒に食うだろ!ってか、レインさん達も来るぞ」

 「いやーそれなんだけどさ...マルタがさっき話してた四人で一緒にご飯を食べたいって言うからさ...」


 ユアンの言葉を聞いてケントとクレアは二人で顔を見合わせて数秒見つめ合う。


 「ユアン様、大丈夫なんですか?マルタちゃんがリラックスできないんじゃ...」

 「これはマルタの提案だから大丈夫だよ。多分、みんなと仲良くなりたいと思うし...まぁ少しずつでね」


 それを聞いたケントとクレアは二つ返事でOKを出した。


 「あのさ...マルタと一緒に旅をしてたからさ...」

 「大丈夫です。テーブルマナーなどは気にしませんから...それに、ケント様もあまりテーブルマナーは好きではないみたいですし」


 笑いながら言うクレアに対してケントは苦笑いで「あはは...」と笑っていた。


 「じゃあ次はアイに聞いてくるよ」

 「おう」

 「時間になったらお呼びしますね」


 ユアンはクレア達に軽く手を振って部屋を後にする。


 次はアイか...とりあえず部屋に行ってみっか。


 ユアンはアイの部屋に行ってみるが、アイからの返答はなかった。とりあえず、ユアンはアイがいそうな場所を探すことにする。最初は先ほどまでやっていた会議室を訪れる。会議室の扉は壁に立てかけられており、中にはバーンとアークが残っていた。


 「バーンさんアイのやつ見ませんでした?」


 ユアンが話しかけるとバーンとアークはユアンに視線を移す。


 「おうユアン!アイか...見てねーな。どうした喧嘩でもしたんか?」


 バーンは笑顔でユアンをからかいながら答える。


 「別にそんなんじゃないって。ただ、今日の夜一緒に食べよって話をするだけですって」

 「それなら僕たちも一緒にしてもいいかな?ユアン君ともっと話したいし」


 アークの提案にユアンは少し複雑な気持ちになる。実際アークの提案はものすごい嬉しかった。ユアン自身ももっとみんなと話したいことはたくさんあった。だが、マルタのことを考えると今回はマルタの方を優先しなければならなかった。


 「ごめん、アークさん。今日は先に先約が入ってるからまた今度でもいい?」

 「それならしょうがないな。では、また今度お願いするよ」


 そう言ってユアンは会議室を出た。一応マルタの正体は賢者なら話しておいても大丈夫だよな...一応は...

 そして、アイを探すこと一時間どこにもアイの姿が見つからなかった。


 ったく...どこにいんだ...?まさか部屋で寝てたから返事がなかったとか?それか外にでも出たか?


 ユアンはもう一度アイの部屋を訪ねることにした。アイの部屋に戻ったユアンだったが、いく途中でアイと遭遇する。


 「やっと見つけた!」

 「えっ!?」


 ユアンの大きな声にアイは驚く。


 「アイ、今日夜飯一緒に食べない?」

 「えっ...普通に一緒に食べるもんだと思ってたけど...」


 思わぬユアンの誘いに、アイは少し戸惑っていた。アイ自身はおそらくずっとユアンにくっついて行くつもりだった。プライベートなことを除けば。


 「二人でって思ってたら申し訳ないんだけど、ケントやクレア達も一緒でいい?」

 「うん、それは別にいいけど」

 「あと...マルタもいい?」

 「えっ!?私は別にいいけど...マルタちゃんはいいの?」

 「今回はマルタが一緒に食べたいって言ってたからさ、それにマルタ、アイのこと優しいって褒めてたよ」


 その言葉を聞いてアイは驚きと嬉しさの感情が溢れ出る。


 「えっ!?それ本当!?」

 「ガチ。マルタはちょっと恥ずかしそうに言ってたけど」


 それでもアイは心の底から喜んでいた。その様子を見てユアンは思わず笑みをこぼす。


 「何よ...そんなに私が喜んでるのが変?」


 先ほどまでは喜んでいたが、ユアンが笑ったことでアイはユアンを軽く睨みつける。


 「いいや、ただアイのそう言う表情久しぶりに見たなって。ただ、嬉しかっただけだよ」

 「へ、へー...嬉しいんだ。ユアンってほんとに私のこと好きだよねー」


 アイは少し照れ臭さと恥ずかしさで動揺するが、ユアンにも同じことをさせるためにあえて意地の悪い言葉を返す。


 「うん。好きだよ」

 「へっ」


 アイの予想ではユアンも同じように恥ずかしがると思っていたが、ユアンは恥ずかしがらずにどストレートで「好き」と言ったことでアイの作戦は失敗にする。


 「じゃ、じゃあまた後で!!」


 アイは咄嗟に背中を向けたことで赤面した顔をユアンに見られないようにした。そして、そのまま急いで自分の部屋へと戻る。

 幸いにもユアンは角度的にアイの顔は見えなかったが、急いで部屋に戻ったことにユアンは少し不安に思った。


 「なんなんだ...急にいなくなって...」


 とりあえず、全員に声をかけることができたユアンも自分の部屋へと戻ってゆっくりすることにする。部屋にはいってベッドに横になると、次の戦いのことで頭がいっぱいになる。


 ラウレス達のアジト...おそらくあそこで間違いないとは思うけど...確証がなぁ。戦力としては俺一人でもいけるような気はするけど、一人で行ったらみんなから何言われるかわかんねーし...


 そしてユアンは後一人の人物が頭をよぎる。


 「あの人だったら...」


 考えついたと同時、ユアンの部屋のドアからノックする音が聞こえる。


 「ユアン様、夕食の準備が整いました。クレア様のお部屋で皆様がお待ちです」


 セバスの声にユアンは「はーい」と答える。ユアンは急いでクレアの部屋へと向かうと、そこには大量の肉がテーブルにパンパンに乗せられていた。


 「うわっ...すげぇな...」


 その量を見てユアンは思わず口に出す。


 「私が料理長に無理を言って作ってもらいました。ユアン様が生き返ったことを料理長に教えたらそれはもう泣いて喜んでいました。ここには食べ盛りなマルタちゃんに加え、ユアン様やケント様もいます。残さず食べてくださいね」


 この量を見て全員で食い切れるかと言われたら答えはわからない。おそらく一人分でブラッドベアー一頭分に相当する。だが、クレアは絶対量は食べれないしアイもそこまで大食いというわけではない。ユアンは無言でケントに視線を送るとケントも同じようにユアンの目を見てアイコンタクトを送る。


 ((ここは俺らが食わないと!!))


 そして、なぜか五人だけというはずだったのに、クレアの隣にはクエント帝国の第二皇女ヴィオーネもいた。


 「えーっと...クレアこの方は?」


 ユアンは神々の空間でヴィオーネのことは知っていたが、この場で知っていることを話せば変に思われる可能性が高くなる。ここはあえて知らないふりでユアンは通した。


 「あぁ...こちらはヴィオーネ皇女です。以上です」


 なんとも簡素的な説明にその場にいる全員が凍りつく。


 「あらクレア王女...それは私に対して喧嘩を売っていると捉えてもよろしいのですか?」

 「いえいえ...喧嘩だなんて。ただ、説明するほどの内容がなかったので...」


 二人の間にバチバチと何かがぶつかり合っているのが全員に見える。おそらく...いやほぼ確定でケントが関わっていることは間違いない。


 「さ、さぁとりあえず話は後にして飯にしよう!!」

 「そ、そうだね!」


 ユアンとアイの一言でバチバチだった空気が少しだけ和らいだ。そして次に座る席を決めるのだが、当然ケントの両隣にはクレアとヴィオーネが座り、ヴィオーネの隣にはアイ、ユアンそしてマルタという並びになった。


 「それではいただきましょうか」


 クレアの一言で全員がテーブルの上にある料理を自分の皿に乗せていく。マルタ以外の全員は料理を綺麗に撮って行くが、マルタはわからないためか、何をすればいいのか戸惑っていた。そこでクレアはケントに視線を送る。ケントはその視線に頷きテーブルの上にあった巨大な肉を手づかみしながら思いっきりかぶりつく。ユアンも同じような大きさの肉を手に取りケント同様に肉にかぶりついた。アイはフライドチキンの大きさぐらいの肉をそのまま手に取って口に運んでいた。

 それを見てマルタも少し大きな肉を手に取ってかぶりついた。美味しそうに食べている姿を見て全員嬉しくなる。


 「まだまだありますからたくさん食べてくださいね」


 美味しい食事だったが、クレアの一言でユアンとケントが絶望するのはここから一時間後だった。

いつもありがとうございます。面白かったらブックマークと評価をお願いします。

今週遅くなってすみません。次回の更新はまた来週になります。

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