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第三十六話 会議

 数分アイはユアンに抱きついたまま離さなかったが、ユアンが強引にアイを引き剥がす。


 「どうかした?」

 「もうすぐ時間だからな。行くぞ」


 そう言ってユアンとアイは部屋を出た。部屋を出る際も、アイはユアンの腕にピッタリとくっついたままだった。

 その状態のまま、ユアン達は会議室へ行きドアを開ける。すると、会議室の中には賢者を含め、陛下や宰相といった国の重役が集まっていた。


 「久しぶりだね、みんな」


 ユアンの言葉を聞いた全員は一斉にユアンに飛びつく。ただ一人を除いて。みんなが一斉に飛びついたおかげでユアンはバランスを崩して後ろのドアに激突し破壊する。


 「痛ってーな...なんだよ急に...」


 ユアンの言葉に全員は蛇口を捻った水道のように言いたいことが溢れ出る。


 「お前こそいつ生き返ったんだ!」

 「なぜ生き返ることを言わんかった!?」

 「みんな心配したんだからね!?」

 「もう危ない未来はないんだろうな!?」


 言葉の暴力と言っていいぐらい心配の声がユアンに降り注ぐ。しかし、その様子を見てケントがその場を収める。


 「とりあえず今後の対策について話していきましょ。ユアンのことは後でにして」


 ケントの言葉にみんなは呆気に取られる。本来一番はアイだが、さっきユアンと二人にしたことで今は少し落ち着いている。その次にユアンに対して思うことがあるのはケントのはずだが、そのケントが今の言葉を口に出すことは全員想定外だった。


 「まぁそうだな。今はまだ終わってねーしな」


 バーンの言葉に全員はまだ脅威がさっていないことを認識する。全員が席に座ると、アークが進行を進める。


 「とりあえず、今回の被害状況についてだけど...冒険者ではAランクのパーティーが数名死亡、Bランクのパーティーが三名死亡、騎士団が十五人死亡、宮廷魔導士が十名死亡で全負傷者はおよそ百名にわたっています。現在、宮廷治癒魔導士全員が対応していますが、重症者に対して宮廷治癒魔導士の数が足りていないと報告が来ています。なので、今からアイちゃんには宮廷治癒魔導士の応援に行ってもらいたい」


 全員が静かに聴く中、アイは負傷者が集まる治療所に急いで行った。アークの進行は続く。


 「次の決戦ではおそらくラウレスは全勢力をこの国に持ってくると予想します。そのために、今回は次戦う相手を各々決めたいと思うのですが...」

 「あのー」


 アークの言葉を遮ってユアンは一人手をあげる。


 「次の戦い別に相手を決める必要はないと思うんですけど...」

 「それはなぜだい?」

 「いや、やられっぱなしは嫌でしょ?だから今回はこっちから攻めてみようかなって...」


 ユアンの言葉を聞いて陛下は声をあげる。


 「お主そんなことをしたら国を守るものがいなくなるじゃろうが!」

 「最後まで話は聞いてよ。攻めるのは少人数で行うつもりだから全員で行くことはないよ」


 全員がユアンに対して「こいつマジか...」と思うほど狂ったような作戦だった。だけどそんな中、ケントとシエラはその考えに賛成していた。


 「いいんじゃない?確かにユアンの言う通り毎回こっちが待ち構えてるのは癪に触るしね」

 「今回はユアンがついてんだ。何が起きても大丈夫だよな?」


 ケントは不敵な笑みを向けながらユアンを見る。それに伴ってユアンも「まぁね」と笑いながらケントを見る。


 「それに...王都にはマルタを置いていくから大丈夫だと思うよ」

 「マルタって...お前と一緒に旅をしていた奴か?そんなに強いのか?」


 ケントの問いにユアンは濁すように返答する。


 「強い...まぁ強いけど...サポート特化って感じかな?あれは俺にはできない芸当だし、見たこともねぇ」

 「ユアン君がそこまで言うのは珍しいね...」

 「一応少人数で攻めるメンバーは俺が決めるけど、今のところ確定してるのは俺とケントだけね。その他は後で決めるつもり」


 そう言ってユアンは会議室から退出する。それに続いてケントがユアンを追いかける形で退出する。

 残されたメンバーは呆気に取られた感じでその場から動くことができなかった。


 「ねぇ...なんかユアン君変わった?」

 「あぁ...俺もそれは思った」

 「なんか余裕がある感じ...だね」


 レインやバーンもユアンが少し変わっていたことに気づいていた。だが、それ以上にユアンと言う強い仲間が帰ってきたことの安心感がすごいと感じていた。


 一方ケントは、ユアンの後を追いかけていた。


 「待てよユアン!」

 「なんだよ。さっきの話は不満か?」

 「そうじゃねぇって!お前この前話したよな。生き返る時のタイミングが大事だって」


 ケントの追求にユアンは少し困ったような表情で言う。


 「あーそれな...本当だったらあのまま戦闘がベストだったんだけど、血まみれのシエラさんがいたからね。あの状態ではちょっと戦いたくは無かったな」


 実際ユアンの作戦では、現れるはずのユアンが現れて強襲をつくはずだったが、思ったよりもラウレス達が戦力をアウスト王国に注ぎ込んだおかげでユアンの計画も少し狂った。


 「それにあのスキルを無効化する結界な。あのせいで俺もスキル使えなかったし...けど、まぁ大丈夫だろ。なんか、ラウレスを見て勝てるかもって思ってる自分がいんだよな」


 そう言ってユアンは笑いながらケントの方を向く。


 「とにかく大丈夫。俺がなんとかするからさ」

 「お前それで次死んだらマジでお前のこと呪うからな...ガチで」

 「あいにく今回俺死ぬつもりはないから」


 ケント自身もユアンの性格が少し変わっていることが不思議に思うが、その感情が不安というよりもなぜか落ち着くような感情だった。


 「とりあえず、これからクレアに顔出しに行くぞ。ユアンが生き返ったこと知ったら泣いて喜ぶから」

 「それはいかないとだな...二年前にクレアに迷惑ばかりかけちゃったし...色々謝らないとな」

 「じゃあ決まりだな」


 ケント達はクレアがいる部屋へと向かった。


 

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来週は、本社で研修が三泊四日であるため、投稿ができないかもしれません。

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