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第三十五話 帰還

 ラウレス達が去っていった後、ユアンは血まみれのシエラを抱えてアイのいる場所へと移動する。


 「ごめん、シエラさん。少しピリッとするかもしれないけど我慢して」


 そう言ってユアンは身体強化と雷魔法を自分に纏わせる。そしてバチッ!と音をたててものすごい速さで移動する。王都入り口付近には、宮廷治癒魔導士達が怪我をした冒険者達を治療していた。ユアンは急いでその場所へと移動する。


 「誰か急いでアイを呼んできて!シエラさんが!!」


 冒険者や宮廷魔導士それに騎士団はユアンの姿に驚いていたが、急いで誰かがアイを呼びに行く。その間にシエラがユアンの手に触れる。


 「シエラさん...?」

 「ユアン...きてくれてありがとうね...もう...私のことはいいから...他の誰かのところへ」

 「何言ってんだよ!大丈夫!俺のスキルじゃシエラさんは死なないから!」


 ユアンはシエラのローブを傷口に当てて止血をする。だが、それでもシエラの血は止まらない。


 「誰か綺麗なタオルを!!!」


 ユアンが叫んでも、他の患者達にも使っているため物資はこない。その時、アイが走ってこっちに向かってくるのが見える。


 「ごめんユアン!遅くなった!」


 結界が無くなったおかげでアイのスキルも使えるようになり、先ほどまでの火傷や傷は治っていた。


 「アイ!早く!」

 「うん!」


 アイは神化をしてシエラに完全回復(パーフェクトヒール)をかける。だが、傷は治ったはずなのにシエラは目を覚まさなかった。すぐにアイはシエラの胸に耳を当てる。


 「どうしよう...心臓が...」


 それを聞いてユアンはシエラの胸に威力を弱めた電流を当てる。シエラの体はビクンと動くがまだ目を開けなかった。そしてすぐにアイが心配蘇生をするとシエラはゴホゴホと息を吹き返した。

 シエラが息を吹き返したことで周りにいた全員はうおぉぉぉぉ!と歓声を上げた。


 「あれ...わたし...」

 「よかった!よかった!シエラさん!!」


 アイは涙を流しながらシエラに抱きつく。それを見てユアンもその場に座り込んだ。


 「あーよかった...未来が見えててもやっぱり怖かったー」


 周りの歓声と泣きながら抱きついているアイを見てシエラも目から涙が溢れる。


 あぁ...私の居場所はここなんだ...


 「ところでユアン...なぜ君がここに?」

 「それは後で賢者全員が集まった時に話します」


 そう言ってユアン達は王城へと移動をしようとした時、遠くから誰かが近づいてくるのがわかる。


 「タイヨウさーん!!走るの速すぎです!」


 その子は身体強化をした状態でユアンの近くで止まる。


 「マルタ、思ったより早かったな」

 「いや、タイヨウさんの方が早いですよ」

 「そりゃそうだ」


 二人の会話を聞いていてアイは不思議そうにユアンの顔を見る。


 「ユアン...この子は?」

 「えーっと...こいつはマルタって言って...まぁ一緒に会ってちょっとの間旅してたんだ。詳しいことは後で話すよ」


 ユアン達は一度、王城に戻ることにした。王都に入るとユアン達は注目されないために急いで王城を目指した。王城に入ると、全員ユアンの姿を見て驚いていたが、セバスだけはいつも通りだった。


 「おかえりなさいませユアン様」

 「セバスさん久しぶり。急に来てごめんね」

 「いえいえ、ここにユアン様のおかえりになる場所です...なので...いつでも...帰ってきて...いいんです」


 いつも通り振る舞ってくれていたセバスだったが、ユアンと話しているうちに涙が溢れる。


 「大丈夫だよセバスさん。もういなくならないから」


 ユアンの言葉を聞いてセバスはさらに涙を流す。


 「ところで...俺の部屋ってまだある?もしかしてもう無かったりとか...」

 「それは大丈夫です。時々アイ様がーーー」

 「あーーーー!!!セバスさん!とりあえずユアンを部屋に案内しましょうよ!!!」


 セバスが最後まで言おうとした言葉をアイが遮る。少し不思議に思うもユアンは自分の部屋へと移動する。マルタはセバスに案内され客室に案内されていた。

 ユアンは部屋に入った瞬間ベッドにダイブする。


 「あー!久しぶりの自分のベッドだー!落ち着くなー」


 ユアンは久しぶりの自分のベッドを堪能していると、部屋のドアをコンコンとノックされる。「はい」と答えると、ユアンの刀を持ったアイが部屋に入ってきた。


 「ユアンこれ...」


 アイは持っていたユアンの刀をユアンに渡す。ユアンは「ありがとな」と言って刀を受け取った。


 「ねぇ...ユアン」

 「ん?」

 「本当にユアン...なんだよね?」

 「当たり前だろ。他に誰がいんだよ」

 「だって...」


 アイの心の中ではユアンが本物であることはわかっていた。シエラを助けた時も、マルタって子の紹介をしているときもいつものユアンだった。だけど、精巧な偽物なのかもしれないと思っている自分もいた。


 「アイと最後に会ったのは...俺がラウレスに操られて、二回目の葬儀の時だったよな。お前が昼に俺の横で寝るから呼ぶしか無かったのに、呼んだら呼んだで怒るし」

 「それは...あんな短い時間に呼ばれても...」

 「でも、今はずっと会えるよ」


 その言葉を聞いてアイの目から涙が溢れる。


 「もう二度とアイの前からいなくなったりしないよ......多分ね」

 「そこは嘘でも言い切ってよ!」

 「まぁ...職業柄ちょっと難しいけど。あっそうだ!まだ言ってないことがあった」


 そう言ってユアンはアイの顔を見て笑顔で言う。


 「ただいま!アイ!」


 その言葉を聞いてアイは涙を流しながらユアンに抱きついた。


 「うん!おかえりユアン!」


 


 


いつもありがとうございます。面白かったらブックマークと評価をお願いします。

今週はちょっと勢いで二話投稿しました。次回の更新は来週になると思います。多分一話だけ更新です。

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