第三十話 シロとロート
ケントとアオが戦っている中、アイとシロは他の魔人の相手をしていた。その中でも一番厄介なのがドラゴンの魔人だ。ドラゴンの魔人は元の姿に戻ることができ広範囲に強力な攻撃をすることができる。もし、それをやられた場合ケントの結界でも破られる可能性が出てくる。
「シロ、あなたはあの魔人を相手してね。できるだけ攻撃は王都に向かないようにして。私もすぐに終わらせて加勢に行くから」
(お任せください!アイ様!」
シロはアイの命令を聞くと、小さかったシロの体は、どんどん大きくなっていき元のサイズへと戻った。シロはケントの張った結界の上に乗るとドラゴンの魔人や魔物達に向けて広範囲の光のブレスを撒き散らした。
(我の攻撃で死ねることに感謝しなさい)
シロの攻撃はアイの裁きの槍に匹敵するほどの威力を持っており、聖獣の力は伊達ではなかった。
だが、唯一シロの攻撃を無傷で耐えた魔人が二人いた。それがドラゴンの魔人ともう一人見たことのない魔人だった。
「あの一撃で奥にあったモンスターボックスは壊されたか。それに...俺と同じドラゴンがいるとは...面白いな。それで...お前はどうするんだ?」
ドラゴンの魔人は隣にいたもう一人の魔人に声をかける。
「...ロート...俺は向こうの賢者を...やる」
「ふっ...わかった。それじゃあ俺はこっちだな」
そう言ってロートもシロの方を睨みつける。ロート自身も少しづつ体が大きくなっていき、ドラゴンの姿に変身した。ロートは空へ飛ぶと白龍のシロに目線を合わせる。
「さっきみたいなチンケな攻撃じゃ俺は倒せない...これが本当の攻撃だ!」
ロートはシロに向けて広範囲のブレスを放つ。それを見て、シロも同じようにブレスを撃って迎撃する。お互いの力は拮抗するが、わずかにロートの攻撃の方が強かった。
(我以上の力を持つドラゴンがいるとは...)
シロは長い時間寝ていたこともあって本調子とは呼べなかった。だが、それでもシロは神獣の維持を見せ、なんとか相殺することができた。それでも、シロの体力は少しづつ削れていきロートの体力はまだ万全だった。
一方でアイもシロのことを気にしつつも目の前の魔人を倒すことに集中する。しかし、その魔人の様子が何かおかしかった。アイが自身の魔力を上げて攻撃体制に入っても魔人は迎撃体制に入らず、ただアイをニヤニヤと見ているだけだった。
神化をしている私に対してあの感じ...何かすごいスキルでもあるの...?
迂闊に攻撃もしたくないと思っていたが、接近戦をやめ一定の距離から光の矢を放つ。数十本の矢が一斉に魔人を襲う。一発の威力も高く、普通の魔人であったら一本でも死に至らしめるほどの致命傷になる。
だが、その魔人の体はアイの攻撃が貫通して体のあちこちに穴が空いていた。
アイ自身も勝ったと思った矢先、魔人の穴が空いた体からボコボコと何やら筋肉がうごめいていた。その光景にアイは見覚えがあった。
「あ、あれって...」
次の瞬間、穴が空いた魔人の体は元の状態に戻っており、再びアイを見てニヤニヤと笑っていた。
間違いない...あの魔人私と同じ「再生」のスキルを持ってる。けど、どうして...
自分と同じスキルを持っている魔人に対してアイは不気味に感じていた。「再生」は自分の魔力の残りで再生の速度が上がるが、あの魔人の魔力量はおそらく変わっていない。同じ「再生」のスキルを持つ同士だが、急所を潰せば死ぬのか...それはアイもわからなかった。
例えば、いきなり頭を狙って破壊をすればもう再生しないでそのまま死ぬのか...アイ自身もそこまでの毛が覆ったことがないため、確証が得られていない。
「こうなったらやるしかないわね...」
アイは覚悟を決めて一瞬で魔人の懐へと入り込む。あまりの速さに魔人から笑みが消える。そしてそのままアイの手のひらから巨大な光線が放たれる。
「極大閃光」
その攻撃に魔人の上半身は消え下半身だけがその場に残った。動かないことを確認したアイはすぐにシロの応援に行こうとした時、バタバタと足を動かしながら上半身が少しずつ形成されていくのを見てアイは顔から血の気が引く。
「う、嘘でしょ...」
そして、その魔人はニヤニヤから少し不機嫌な様子でアイを見ていた。
いつもありがとうございます。面白かったらブックマークと評価をお願いします。
遅くなって申し訳ございません。新社会人が思ったより大変で...今まで社会で生きていた社会人の方々尊敬します。




