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第二十四話 逃走

 フィリップと少し話したあと、タイヨウはその場から離れようとする。


 「じゃあ今日はここまでで。俺らはお暇させてもらうよ」


 それを聞いてフィリップは不思議そうな表情で「何かあるのか?」と尋ねる。


 「今会うわにはいかないやつがこっちに来ようとしてるんでね」


 そう言ってタイヨウとマルタは窓から逃走した。その直後、兵士がフィリップの部屋を訪ねた。兵士の声を聞いて明らかに不審者を探しているような様子だった。


 「陛下!ご無事ですか!先ほど侵入者がこの部屋に入るのを目撃したものがいまして!」


 その兵士の問いにフィリップは落ち着いた様子で返答した。


 「あぁ...問題ない。奴は俺の魔力を見て逃走したよ」

 「はっ!左様ですか...では警備をさらに強化いたします」


 兵士はそう言ってフィリップの部屋を出ていった。

 フィリップはタイヨウの言った「会うわけにはいかないやつ」と言う言葉が引っかかっていた。


 会うわけにはいかないやつ...か。俺の知らないやつか?いや、だったらここに直接くることはあまり考えられないな。じゃあ俺とあいつが知っている共通の人物か。


 そんなことを考えていると、再びフィリップの部屋に訪問者が現れる。


 「なんだなんだ。今慌ただしい様子だけどなんかあった?」


 そこにはアウスト王国の賢者ケントが立っていた。

 ケントの表情はワクワクした表情といった楽しそうにしていた。


 「今日はなんか用事か?」

 「いや、なんか面白そうな予感したし、ついでにフィリップの鍛錬もしようかなって」


 こいつの勘は恐ろしいな...いや...あいつが会いたくない相手はこいつだったか。そうなるとさっきまで居たことや生き返ったということは秘密にしておいた方がいいな。


 「はぁ...わかった。すぐ行くから訓練場で待ってろ」


 フィリップはため息を吐きながら持っていた魔法陣の紙を机に置いた。それを見てケントは紙に書かれている魔法陣に興味を示す。


 「なんだこれ...この魔法陣...」


 フィリップは内心ドキッとしてケントの表情を窺う。下手に説明するよりも、フィリップはあえて何も言わなかった。

 それを見てケントは一瞬ニヤッと笑みが溢れた。だが、すぐにいつもの笑顔の表情に戻った。


 「じゃあ俺は訓練場に行くから、すぐ来いよ」

 「あ...あぁ」


 なんとか誤魔化せたと安心する一方で訓練場に向かっているケントは嬉しさで笑顔が溢れる。


 あいつ...とうとう生き返ったんだな!これでまた三人でバカやって楽しくできる!けど、あんであいつ生き返ったこと誰にも言わないんだ?知られるとなんかデメリットでもあんのか?まぁ、ユアンが秘密にしたいんなら俺も黙っておくか。


 その日の鍛錬はお互いが動けなくなるほど全魔力を使い果たし、ケントは帰ってクレアとヴィオーネのお茶会に参加をすることができず怒られたのはまた別の話。


 一方で、タイヨウとマルタは城を出た後、海産物が有名な料理屋を訪れていた。


 「おぉ!さすが海の街、海鮮がいっぱいだ!」


 久しぶりの魚にタイヨウはご機嫌だった。


 「マルタ何食べたい?」


 メニューにはいろんな種類の焼き魚や刺身、貝などといった魚料理でいっぱいだった。


 「えーっと...どれがどれなのかわからない...」

 「まぁそれもそうだよな」


 九年間エルフの里にいれば海はもちろん魚も初めてに決まっている。そうなれば、おすすめをどんどん頼んでマルタと少しずつ分けていけばいい。


 「よし!じゃあ注文お願いしまーす」


 タイヨウはすぐに定員を呼ぶと焼き魚や刺身をといった魚料理を大量に頼んだ。

 注文して料理が来るまで待っていると、マルタが少し驚いた様子で話しかけてきた。


 「タイヨウさん、さっき会った人すごい強いよね?」

 「あぁ、フィリップか。まぁ強いよ。あいつも神の加護を持ってるからね」


 マルタが少し会った人の強さを比べていることに驚いた。魔導士として戦う時に相手の戦力を瞬時にわかることはとても重要だ。自分よりも強ければ応援を呼ぶか撤退するかのどちらかだ。仮にこの二つができれば生存する確率は高くなる。


 「すごいな。もう相手の強さとか比べてんのか」

 「なんとなくだけど...でもタイヨウさんよりかは弱いと思った!」


 その言葉を聞いて少し笑った。

 俺を基準として考えるのはちょっとな...

 だけどそれでもマルタが着々と力をつけているのはとても嬉しかった。


 「お待たせいたしました。注文の品です」


 店員が注文していた大量の料理をテーブルの上に置くと、料理でパンパンになった。


 「刺身はこのタレをつけて召し上がりください」


 そういって店員が置いたそのタレは黒くてさらりとした液体だった。

 すかさず、タイヨウはその液体を少し舐めた。その瞬間、タイヨウの眼から涙が溢れる。


 醤油だ...これ醤油だ!この世界で醤油があるなんて...


 タイヨウはマグロのような赤い刺身を箸で掴み醤油につけて食べる。そして再び涙がこぼれ落ちる。


 うまい...うますぎる...


 マルタも刺身を一切れ食べてみたが、生臭かったのか焼き魚をムシャムシャと食べていた。マルタは刺身よりも焼き魚が気に入ったようで大量にあった料理はすぐに無くなりおかわりを頼んだ。追加の料理も食べ終わり会計をしたところ金貨三枚という高額な値段に驚いたが、久しぶりの刺身だったこともあってあまり高いと感じなかった。

 そしてお土産に絶対醤油は買っていこうと心に決めたタイヨウだった。

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