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第二十六話 初任務

 今日ユアンはエレクと共に近くの村に行くことになっている。先週結界魔法を完成させたユアンだったが、大きさなどは一回成功したら自由に変更ができた。詠唱をして結界を出したが二回目以降は詠唱をしなくても結界が出せるようになった。


 ユアンは自室で初めての任務に出かける準備をしていた。と言っても何も持っていくものはなく、軽いストレッチなどをして気持ちを落ち着かせていた。

 エレクとは王都の門の前に待ち合わせをしている。王都に出る際にはギルドカードが必要になるが、ユアンがこの前騒ぎを起こしてから行きづらく行っていなかった。陛下に身分証がなくても通れる許可をもらいに行ったが、却下され、ギルドに身分証を取りにいった。付き添いでレインが来ることになったが、レインがギルドに入った瞬間、中にいた冒険者たちは驚きギルド職員からは、そのままギルドマスターのところに通された。

 

 ギルドマスターはあった瞬間に謝罪されて少し戸惑った。その後、簡単にギルドカードつまり身分証明書を手に入れた。帰り道に何故簡単にギルドマスターに会えたのか聞いてみたら驚きの答えが返ってきた。


 「普通の人たちだったらギルドカードじゃない身分証明書でいいんだけど、私たち賢者は身分証明書をとるときには必ずギルドカードにする必要があるの。ギルドにはランクがあって一番上がSランク、二番目がAランク、三番目がBランクとS〜Eまでのランクがあるの。私は最初宮廷魔道士をしててギルドランクなんてEだったんだけど、賢者になった瞬間に一番上のSランクになちゃって、だからあんな簡単に会えたんだと思う。実際私もあんなになるなんて思ってもいなかったよ」


 レインは少し疲れたように言っているのを思い出した。

 時間が近くなったので待ち合わせ場所に向かう。正門にはエレクがもう来ておりユアンを待っていた。


 「すみません。遅くなって」


 「いえ、私が早めに来てしまったせいです。ユアン君は悪くないですよ」


 レインとは違って物腰が柔らかい人だなと思うユアン。

 ユアンは一つ重大なことに気づいた。それは移動手段である馬車がないことだ。


 「あの...エレクさん。馬車とかは?」


 「え?ありませんよ。馬車を使うと一日で終わらないし、レインさんが走っていけとおっしゃっていたので」


 ユアンはこの前会議で言っていたレインの言葉を思い出した。


 『近くの村だったら身体強化をして走ればすぐに終わるからさ』


 この時のユアンの頭には結界魔法と「未来予知」が必要なことしか頭に入っていなかった。重要なことを聞いていなかった過去の自分を殴りたい衝動に駆られていた。


 「では、準備が出来次第行きますよ」


 「あっはい」


 もう過去のことは今言ってもしょうがない。レインさん(あの人)のスパルタは今に始まったことではないから。


 ユアンとエレクは無事王都を出てまずは一番近いナイル村にいくことになった。


 「ナイル村ってユアン君が生まれ育った村ですよね?」


 「はい!久しぶりに帰るので少し楽しみです」


 ナイル村の行き方としては王都の近くの森をただ真っ直ぐに行けば着くのだ。その点馬車よりも、身体強化を使って走ったほうが断然早い。ナイル村の次はプト村だけだ。この村はそんなに距離が離れていないため一日で終わりそうだ。


 「じゃあ行きますよ。途中休憩するときに雷魔法を教えますね」


 そう言ってエレクは身体強化をして走り出した。ユアンも続いて身体強化をしてエレクについて行った。


 三十分ぐらい走っているとナイル村が見えてきた。途中休憩することなくナイル村についてしまったので魔法を教えてもらうことはできなかった。


 「ナイル村に到着ですね。思っていたよりもユアン君の魔力はすごいですね。身体強化の時も長い時間を走っていても魔力の流れは一定でしたしレインさんとバーンさんが褒めるのがわかる気がします」


 「えっそうなんですか?」


 「はい。「ユアン君をみてるとすぐに抜かされちゃうような気がするよ」とか「ケントもやばいけど、あいつは天才だぞ」とか言ってましたよ。でもわかる気がします。お二人がユアン君たちのことをたくさん言ってくるので私も少し羨ましいなって思ったことがあるんですよね。私も魔法を教えるってことは師匠になると言うことですから、この村でやることが済んだら魔法を教えますね」


 「ありがとうございます!」


 ユアンたちは一通りの会話を終えて村へと入って行った。

 村に入るといつも通りの景色が見えて全く変わっていなかった。村人がユアンに気づき大勢の村人がユアンの周りに寄ってきた。その中には自分の両親や村長がいた。


 「ユアンよく帰ってきたね。風邪とか引いてない?周りに迷惑かけてないだろうね?」


 「かけてないよ。今日は少し任務で寄っただけだからすぐ帰るよ」


 「そう...また行っちゃうんだね。じゃあお昼は食べて行ってよ。たまには自分の子供の顔を見てご飯も食べたいんだよ」


 そう言われて昼ごはんを食べることになった。


 「それより後ろの女性は誰だい?」


 「あ、あの、は、初めまして。王都でけ、賢者をしているエレク・ファラです」


 エレクは大勢の人の前だから緊張して噛みまくっていた。賢者と聞いた村人は驚いていた。


 「け、賢者様がこの村にどのような御用で!?」


 「あ、あの内容はい、言えないんですけどユアン君の力が必要だったので近くの村に行くことにな、なりました」


 エレクはスタンピートの内容は伏せて話している。もしスタンピートが起こるかもしれないとなったら国中が大騒ぎになるだろう。


 「わかりました。それまではこの村に滞在するということですか?」


 「はい。ですがすぐに終わります。ユアン君お願いしてもいいですか?」


 エレクの指示があったので村人全員を「未来予知」で見た。村が襲われる未来は見えなかった。誰一人魔物に襲われるという未来は見えなかった。


 「エレクさん終わりましたよ。特に何の異常も見つかりませんでした」


 「本当!じゃあ大丈夫だね。次に行くまで時間があるからユアン君は自分の家でご飯食べてきていいよ」


 「それならエレクさんも一緒にいきましょうよ。みんなで食べた方がおいしいですよ」


 「でも.....」


 「賢者様も一緒にどうですか?息子もこのように言ってますし」


 エレクは何かグッと堪えた様子を見せたが、すぐに承諾してくれた。


 「わかりました。ではご一緒させていただきます」


 「まだ時間がかかりますので何か暇を潰していてください」


 ユアンの母に言われたようにエレクとユアンは時間を潰すために、いつも魔法を練習していた湖へとやってきた。


 「ここでいつも身体強化の練習をしていました」


 「いい場所ですね。ここなら落ち着いて練習できそうですね。ではやりましょう」


 



 ***



 「といった様に雷属性の魔法は以上となります。ユアン君たちは一度魔法を見ただけで出すことができるというのは本当ですか?」


 エレクが一通り雷属性の魔法を見せてくれた。エレクはまだ魔法を見ただけですぐに覚えるということを信じてはいなかった。ユアンはエレクに言われた通りに今見た魔法を一つずつやって見せた。当然魔法は全部使える様になりユアンも二つの魔法を覚えることができた。ユアンの魔法を見てエレクは驚いていたがすぐにいつも通りの様子だった。


 「これで魔法は全部ですね。ところでユアン君が作っていた魔法は完成しましたか?」


 「はい!見てください!」


 ユアンは張り切って自分の作った魔法を見せる。結界はユアンの周りを長方形の形で覆っている。


 「これが結界ですか。私たちが使う魔法障壁よりも強いって聞きましたが....」


 「多分強いはずです。試しに魔法を打ってみてください。これを壊すつもりで」


 「えっで、でも」


 レインは戸惑っていた。新しい魔法ができたことはすごいが、まだ強度が分かってもいないのに結界を壊すつもりで撃つことを躊躇った。


 「大丈夫ですよ。何かあったら「透過」で逃げることもできるので」


 そう言われてエレクは結界に魔法を撃った。


 「雷撃(サンダーボルト)


 レインは上級魔法のサンダーボルトを放った。レインの撃つ上級魔法でも傷一つ付いていなかった。


 「私の魔法で傷がつかないなんて...」


 「どうですかこの魔法。思ったよりすごいですよね」


 「凄すぎるよ。これを賢者のみんなにも見せてみたいよ」


 それだけはやめてほしい。この前の会議に少し参加しただけでも緊張していたのに自分の作った魔法を見せるとなるとこれ以上は緊張したくないと思ったユアンだった。


 


 




 

 

 

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