第八話 久しぶりの再会
「ゆ、ユアン...さん...」
「う、嘘だ...」
ユアンの姿を見た三人は、驚きが隠せなかった。リキトとラグレスは思わずユアンを見て信じられない様子だった。エレクは驚きのあまり声を出すこともできずにただユアンを見つめていた。
「まぁ...そりゃ驚くよな...」
それはわかっていた。死んだ人間が再び生き返ったとなればその反応は当然だった。
すると、驚いていた三人はすぐに戦闘体制に入った。ラグレスとリキトが前に出て、エルクは後方で魔法の準備をしている。
「おい!ちょっと待てって!」
三人はユアンの言葉に聞く耳を持たずにラグレスとリキトはユアンに斬りかかった。身体強化をしている二人の動きは以前とは比べ物にならないほど魔力の質は上がり、動きは洗礼されていた。
「リキト、エルク!このユアンさんは偽物だ!偽物の言葉に惑わされるなよ!」
「うん!」
「わかってる!」
ユアンがいくら声をかけても三人は全く反応しない。正直面倒な部分はあるが、やはりこのユアンがいなかった期間でこの三人は確実に成長していることがとても嬉しかった。
そんな思いとは裏腹に二人の攻撃は止むことがなく容赦無くユアンを襲う。狭い路地裏だというのに、二人の攻撃は連携しながらユアンに攻撃を続けるが、一向に二人の攻撃がユアンを捉えることができなかった。ユアンはその攻撃を避けながら余裕の笑みさえこぼしていた。
「強くなったな...お前ら」
その言葉は攻撃を続けていた二人の動きを一瞬鈍らせた。そしてその瞬間、二人の頭に強烈な拳骨が直撃する。そして二人はその痛さに悶絶し、エルクはすぐに魔法を撃とうとしたが、目の前にユアンが現れ撃つことができなかった。
「さて、お前ら...とりあえず正座しろ」
ユアンは狭い路地裏で三人に正座を強制させた。拳骨をもらったラグレスやリキトに対しても強制的に正座を強制させる。
「まぁ...言いたいことは色々あるけど...久しぶりだな、強くなったな」
ユアンの言葉を聞いても三人はまだ疑っている様子だった。
「本当にユアンさんなんですか?」
「あぁ、本物だよ」
「じゃあどうやって生き返ったんですか!?またラウレスが体を乗っ取ってるとか!」
ラグレスの質問にユアンは丁寧に答えていく。そして、どうやって生き返ったのかも包み隠さずに全てを話した。
「・・・とまぁ俺が生き返った方法はこんなもんだな。本当はもうちょっと早くに生き返る予定だったんだけど、ラウレスが俺の体を作って乗っ取ってたから少し遅れた」
「じゃあ...本当にユアンさんってことですか?」
「俺に加護を渡してる死神に誓うよ」
すると、三人は一斉にユアンに飛びついた。
「本当に...本当にユアンさんだ!」
「なんで...生き返ったこと黙ってたんですか!すぐに言ってくれれば王都にいるアイさんだって...」
アイ...本当だったらすぐにでも会いたいが今会ってしまうと今後の作戦に影響が出てしまう可能性がある。現状今考えていることをユアンは三人に伝えた。
「お前ら...俺が生き返ったことは秘密にしといてくれないか。誰にも言うな」
その言葉を聞いて三人は不思議そうな顔をする。
「ど、どうしてですか?ユアンさんが生き返ったってなれば、戦力が一気に...」
エルクの言葉も一理ある。ユアンが生き返ったことで戦力は一気に上がる。だが、ユアンが生き返ったことを誰も知らなければ、ユアンの戦力を考えずにラウレス達も次の戦争に望むだろう。そこでいきなりユアンが現れれば、戦力を一気に逆転できる可能性があった。
「とりあえず、俺は次の戦争まで姿を隠す。けど、お前達にはバレちゃったから近況報告だけこの街で行いたい」
「近況報告ですか...?」
「あぁ、次の戦争の情報とかあると嬉しいな。それと、最悪の場合を想定して、お前らからアイに頼んでエリクサーを頼んで欲しい」
エリクサーという単語を聞いて三人はまたしても驚いた表情をする。
「エリクサーって本当に実在するんですか!?伝説だと思ってましたけど...」
「でも、それならユアンさんが行った方が...」
「だから、したくてもできねーんだよ。それに、今はこの子と旅をしてるから無闇に離れられないんだよ」
そう言ってユアンの後ろでずっと隠れているマルタに視線を移す。
「この子って拾ったんですか?」
「んー...なんていうか、色々あってだな...」
ユアンはマルタと出会った経緯を話すが、エルフのことについては話さなかった。話したところで、驚かれたりすると、マルタが怯えてしまう可能性があるのと、ユアン自身もエルフのことについてはあまり話したくなかった。
「まぁ、色々あってこの子を引き取ることになったんだ。それで、村の一番の魔法の使い手の人がエリクサーじゃないと治らない病気で、今材料を集めてるところ」
「えっ!じゃあユアンさんこの街から出ていっちゃうんですか!?」
「そうだよ。この街には腹ごしらえできたようなもんだから。それと、お前達冒険者ランクはいくつ?」
ユアンの問いかけに三人は堂々と冒険者カードをユアンに見せつけた。その子には大きくAランクと書かれた冒険者カードが三枚あった。
「おぉ!Aランクか!」
この年でAランクの冒険者は普通にすごいと思った。Aランクに登れるのは全体の一割ほどだ。日々の鍛錬を重ね、依頼を失敗しないで続けることで冒険者のランクは上がっていく。Aランクは冒険者のトップに君臨すると言っても過言ではない。
「どうですか!俺たちもちょっとは成長したんですよ!」
自慢げに話す三人を見てユアンはとてつもない笑みでラグレスの肩を掴む。
「よし!じゃあ、さっきギルマスからコカトリスの討伐依頼をもらったけど、お前らに任せるわ」
一瞬、三人は理解ができなかったのか、三秒ほどフリーズする。そして、三秒後、理解できたのか三人は壊れた人形のように首を横に振る。
「いやいや、ちょっと無理です!コカトリスってあの凶暴な鳥ですよね!?」
「尻尾の蛇に噛まれると石化するあの魔物ですよね」
「ちょっと...私たちには荷が重いかも...」
言い訳ばかりする三人に、ユアンは軽いプレッシャーをかける。
「いやーお前らがAランクでほんと助かったー。これでこの依頼は完璧だよな?もし...失敗したら...どうなるかわかるよな?」
「いや...でも...」
「この依頼受けるよな?一応言っとくけどこれは命令な?さっきの食堂で色々と好き放題言ってくれてたよな?」
ユアンから放たれるプレッシャーに三人は断ることもできずに首を縦に振った。おそらく、この世界でもパワハラで訴えられてもおかしくないほど、ユアンはラグレス達を精神的に追い込んでいた。
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