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第三話 情報

 ユアンはエルフの里の長老の家で壁に寄りかかった状態で目を瞑った。そして、次に目を開けるとそこには最近までずっといた真っ白な空間にいた。


 「やっほーユアン君!さっきぶりだね!」


 出迎えたのはセレス一人。雷神と死神の姿はなかった。


 「あのなぁ...俺を飛ばすのもうちょい、いい場所なかったか?」

 「だって...あそこが一番静かだと思って...」


 少し不貞腐れているセレスに対してユアンは言いたいことが山ほどあったが我慢する。


 「まぁいいや。それでどうせ俺のこと見てるんだろ?エリクサーの情報は知ってる?」

 「うん!もちろん!」


 その言葉を聞いてユアンは安堵の声を上げる。

 エリクサーは伝説級のポーションだ。過去に存在していたとはいえ、現代の人間で知っているのは恐らく誰もいないだろう。


 「それで、エリクサーの情報を教えてくれ」

 「えーっとね、エリクサーの作り方なんだけど、材料は二つあって、一つは精霊の泉の水とドラゴンの花だね」


 全く聞き覚えのない材料にユアンは軽く絶望する。


 「なんだよそれ。全然聞いたことない材料なんだけど」

 「そうなの?私たち世代だとみんな知ってるよ?」


 いや、だから分からんて...神の常識を俺たち人間の常識と一緒にすんな...と心の中で突っ込む。


 「何度も言うけど、ユアン君の心の中わたしには丸聞こえだからね」

 「......そ、それよりどこでその材料を手に入れられるんだよ!」


 ユアンはセレスに言われた事をなかったかのように先程の話題に変えた。


 「精霊の泉の水は、精霊達にお願いすれば手に入るからユアン君が心配知る必要はないよ。ただ...ドラゴンの花だけはちょっと探さないとダメかも...」

 「そのドラゴンの花ってなんだよ...」

 「言葉通りドラゴンの花だよ?ドラゴンの生息している場所の近くでしか咲いてない花だからドラゴンの花」


 そうなると、ドラゴンを探すところから始めないといけないのか...いや、そもそもドラゴンって見たことないからマジでわかんねー。俺が生きてた時もドラゴンの情報なんてなかったし...


 「まぁ...ドラゴンって本当はシャイな生き物だからあまり目立つ場所には生息しないんだ。まぁ中には好戦的なドラゴンも中に入るけど、実際は人里離れた場所でのんびり暮らしてるよ」

 「マジで!?それだったらまぁ...行けるか?」

 「んーでもドラゴンを見つけないとだからねー。人気のない場所を探すのが一番手っ取り早いよ!」


 時間はかかりそうだけど、やるしかなさそうだな。これでエリクサーを作ることができれば、エルフとの関係も少しはよくなると思う。


 「それじゃあ精霊の泉の水だけ頼んでいい?あとはこっちでやるからさ」

 

 そう言ってユアンの足元が現実に戻るために光り輝く。


 「うん!精霊達に頼んでおくから任せてね!あと、エリクサーを作る一番簡単な方法があるんだけど...」

 「えっなになに?」


 ユアンが現実世界に戻る瞬間、セレスの口から衝撃的な発言を聞いた。


 「魔力回復ポーションに、神化したアイちゃんに「完全回復(パーフェクトヒール)」をかけて貰えばエリクサーになるよ!」


 その言葉を聞いてユアンは現実の世界へと戻った。

 セレスの言葉を思い返してユアンは心の中で叫ぶ。

 

 馬鹿か!今アイに会いに行けるわけねーだろ!確かに会いに行ってこれに「完全回復(パーフェクトヒール)」かけてって言えば簡単に作れるよ。けど、今俺が生きていることがみんなにバレたら、ラウレス達がこれから起こすであろう作戦が変わる場合がある。それはなんとしてでもバレるわけにはいかない。


 現実世界に戻ったユアンはゆっくりと目をあけ立ち上がった。すると、目の前で心配そうな長老がユアンのことを見ていた。


 「どうでしたかな?」

 「えーっと材料はわかりました。なんとかなると思います...」

 「本当か!?」

 「はい...でもちょっと材料を探すのが大変なんですけど、少し時間をもらってもいいですか?」

 「それは構わんが...どんな材料を探しておるんじゃ?」

 「ドラゴンの花です。ドラゴンの生息地とか知ってますか?」


 すると、長老は少し悩んだ様子で口を開いた。


 「確か...十数年前にエイマス谷にドラゴンが入っていくのを見たと言う情報があったな...」


 長老は過去の記憶を辿りながらユアンに情報を伝える


 「エイマス谷か...ここからそこまで距離はないけど...バレるかも知んないんだよな...」


 極力生きていることを知られたくないため、ユアンを知っている国ではあまり派手に動きたくなかった。

 すると、長老はあるものを差し出した。


 「ほぅ...お主正体がバレたくないのか?」

 「えぇ...まぁ...」

 「それならこれを持って行きなさい」


 長老から渡されたのは、全身を覆えるほどの黒いコートだった。ユアンがそのコートに触れると、特殊な魔力が施されているのがわかった。


 「これは...」

 「わかるか?これは「宵闇のコート」と言って他者からの認識をずらす力がある。正体がバレたくないお主にとってこれはいいアイテムと言えるんじゃないか?」


 ユアンにとってもこの魔道具は喉から手が出るほど欲しい魔道具だった。これがあれば、エイマス谷に行ってドラゴンの花の調査ができるかもしれない。


 「すみません、これ借りてってもいいですか?」

 「もちろん構わんよ、ただ、エリクサーのこと頼んだぞ」

 「任せてください!ドラゴンの花がなかった場合は最終手段を取るんで」


 そう言ってユアンは長老からコートをもらい、家を出る。

 自由に行動ができる魔道具を手に入れてウキウキだったユアンは、先程のいじめられている現場を目にする。

 それも先ほどと同様に一人の子供が数人の子供から殴られていた。ユアンは見て見ぬ振りをしようとしたが、一人の子供が殴ろうとしている手に魔力を込めた瞬間、ユアンは見逃すことができなかった。

 魔力を込めた拳で殴ろうとした時、その少年の手はユアンによって止められた。


 「コラ、そんな魔力で殴ったら大怪我だけじゃ済まないぞ」


 すると、殴るのを止められた少年は頭に来たのか、ユアンの腹部目掛けて思いっきり殴りにかかった。

 実際に込められている魔力は大したことはない。人間の子供と比べると多いが、先程の魔力が込められた矢と比べるととても少ない。

 少年の拳はユアンの腹部に直撃する。少年と周りでいじめていた子供達はニヤニヤしながらユアンの反応を見ているが、それもすぐに顔色が変わる。ユアンは特に魔力を強くすると言ったこともせず、いつも通りの状態で攻撃を受けた。


 「な、なんで...俺のパンチはものすごく強いんだ!」


 攻撃が効かなかったのがよほどショックなのか、涙目の状態でユアンを見る。


 「ん〜多分、君の込められた魔力より俺がいつも垂れ流している魔力の方が多いからだと思うよ」

 「嘘だ!」

 「いや、本当だって」


 少年は何回もユアンの腹部を殴るが、どれほど殴ってもユアンにダメージが与えられない。それどころかめんどくさくなってきている。

 ユアンは少年のおでこを軽くデコピンをする。すると、少年は思いっきり尻餅をつきユアンを見上げた。


 「そもそもいじめなんてやっちゃダメだろ?ましてや一人に対して大勢なんて」

 「...だって...こいつ人より魔力が多いのになんもできないんだよ!エルフなのに!」


 すると、その少年の言葉を皮切りに周りでいじめていた子供達もなんでいじめていたのか言ってくれるようになった。


 「でも、エルフだからって得意不得意はあるだろ?」

 「こいつは...属性魔法を一つも持ってない弱虫だ!」

 「属性もないのにスキルもない。だから僕たちがいじめてるんだ!」


 つまり、エルフにとって強い魔法を撃てると言うことは、基本だという。にもかかわらず、属性が適正なく、スキルも持っていない弱虫だからいじめられていると...

 ユアンはそのいじめられている子を見てみると、ずっと下を向いたまま泣いているだけだった。

 おそらく、この子はここにいるとずっとこのままなのかもしれない。毎日いじめられる。


 「なぁ...よかったら俺と旅するか?」

 「...えっ?」


 気がついたら俺はずっといじめられていた子を旅に誘っていた。

いつもありがとうございます。面白かったらブックマークと評価をお願いします。

就活ももうすぐ終わりかと思っていたのですが、第一希望の会社から内定は出たのですが、ちょっとやばい会社らしいのでもう少し続けたいと思うので、まだもう少し更新頻度が遅いです。すみません。

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