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第二十九話 備え

 コツコツと薄暗い廊下を歩く音が聞こえてくる。ゆっくりと目を開けると、口元に血がついているアオの姿があった。


 「あら、ラウレス。随分と良くなってきたわね〜」

 (あぁ、おかげさまでな。それで何のようだ?)

 

 巨大な水槽に入っているラウレスの体はほぼ再生されていた。


 「報告よ報告。計画に必要な戦力はある程度集まったわ〜。問題はロートのあの怪我ね。あんなに怪我をするとは思わなかったわ〜」

 (相手があのジェロンドだったからな。しょうがないだろ...)

 「でも、そこにアイちゃんも来たんでしょ?あぁ〜会ってまた血を吸いたいわ〜」

 (いずれまた血を吸うことができるだろうよ。それまでの我慢だ)


 ラウレスが再び眠りにつこうとするが、アオは一つ質問をした。


 「ねぇ、眠りにつく前に質問してもいいかしら?」

 (なんだ?)

 「ユアン君の体を再生させた科学者...人間のようだけど信用していいのかしら?」

 (あぁ...そのことなら心配いらない。なんてったって...自称(・・)マッドサイエンティスト様だからな)


 ラウレスが笑みをこぼしながらそう言うと、再び眠りについた。



 ***



 ユアンの極秘の葬儀は終わり、参列していた人たちは一度部屋に集まり時の魔女の報告を聞いていた。


 「さて、一度皆には耳に入れてほしい情報があるんじゃが...」


 言葉を最後まで言わずに、時の魔女は座っているユアンの母親に視線を移した。


 「すまないが、ユアンの母君にはこの部屋から少し出て行ってもらいたいんじゃが...」

 「そんなに聞かれちゃまずいことなのか?」


 時の魔女の言葉にバーンが遮った。


 「別に話してもいいんじゃが...この話は相手にとって不利益となる。そんな話を聞いた一般人がいれば...ラウレスはそのままにしておくと思うか?ましてやユアンの母君だ。最悪の場合村一つが滅びると考えてもらっても構わない」


 その話を聞いてその場にいる全員が黙り込んだ。ユアンの母親は、王妃と一緒に部屋を出ていくこととなった。王妃とユアンの母親が出ていくのを確認すると、時の魔女は話を続けた。


 「さて、ようやく本題じゃな。おそらくじゃが、奴らの今後の作戦がわかった」

 「「「「「!?」」」」」


 その言葉に部屋にいる者達は息を呑んだ。

 その作戦がわかっていれば、今後の対応ができると言うことだ。そして時の魔女のスキル「未来予知」があれば怖いもの無しだ。


 「奴らは、アウスト王国、クエント帝国、シーラス王国、クローム王国この四つの国にモンスターボックスを置くつもりらしい」


 ケントとアイ以外の賢者達はその話を聞いてそれがどんな代物なのかある程度予想がついていた。


 おそらく...数年前スタンピートが起きた時、アオが持っていたあの箱がモンスターボックスだ...

 あれにはものすごい数の魔物が入っていたことを思い出す。


 「じゃあ...それ一つでスタンピート並の軍勢を向こうは持ってるってこと?」

 「あぁ...そうなるな。それと奴らがそれを用意している数はおそらく十数個ほど。前回のスタンピートの倍以上だと思ってくれ」


 ユニバの衝撃的な言葉によってみんな言葉を失った。ただでさえ自国のことで厳しいと言うのに、他国のことまで考えるのはあまりにも難しい。


 「置く場所...ラウレスは四つの国の王都に置くつもりなのかな?」

 「それまではわからん。じゃが、わしの予想ではそれはあり得んじゃろ」

 「なんでだよ。潰したいんだったら集中的に狙ったほうがいいじゃん」

 「アホか。確実に勝つためなら戦力を分散させて弱ったところから攻めるのが一番手っ取り早いじゃろうが!」


 そうなると、アウスト王国に置かれるモンスターボックスは王都以外に二つほどありそうだ。

 モンスターボックスの中の魔物はCランク以上の魔物で構成されている。中の上限は千体となると、モンスターボックス一つで街一つが簡単に消え去ると言うことだ。


 「急いで関係各所に連絡いたします」


 宰相はユニバの話を途中まで聞くと急いで部屋を飛び出して行った。そして宰相のその行動は正しかった。あと多くても半年という短い時間しかないにもかかわらず、このような大規模な戦力を確保するにはあまりにも短い。


 「じゃあ今俺らにできることは...」

 「力をつけて奴らを迎え撃つだけじゃな」


 その場にいる全員は先ほど火葬したユアンのことを思い出した。


 「「「「あぁ...ユアンがいればもうちょっと楽になったんだろうな...」」」」


 おそらくユアンはあの精神世界で手を合わせて謝っている光景がケントとアイには浮かんでいた。



 


 



 

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