第二十四話 初訪問
ユアンは先日バーンから火属性魔法を全て教えてもらった。バーン曰く「オリジナルの魔法は自分で開発することができる。俺も自分だけのオリジナル魔法は持っているけど、他人に教えたのはお前とケントぐらいだな。もしお前がオリジナル魔法を開発できたら俺にも教えろよ」
そう言われてバーンの修行は終わった。これで火属性の魔法は学び終わったユアンは残りは雷属性を学ぶだけだ。
ユアンは今日は修行はないと言われて今日一日は空いている。暇になったので、久しぶりにケントとアイにアイに行った。アイの部屋に行っても返事はなく、ケントの部屋に行っても同じだった。ケントの部屋を覗いてみると誰もいなかった。
「もう出かけたのか....冒険者ギルドに行けば会えるのかな」
ユアンは王城を出て、冒険者ギルドに向かった。冒険者ギルドにつき中に入ってみると大勢の大人たちがテーブルで酒を飲んだり、掲示板をみていたりしていた。
ユアンはそれを気にせず中に入っていくと大人たちに注目された。
「おい、ガキこんなところにガキが入ってくるんじゃね!ガキはママのおっぱいでも吸ってろよ!」
一人の冒険者の言ったことに周りにいる冒険者も一緒になって笑っている
「友達探しにきただけなので見つけたらすぐに帰ります」
ユアンはあまり騒ぎにならないように穏便に済ませるために相手を挑発する言い方をせずにいた。
「テメェの友達がこんなところに来るはずねぇだろうが!さっさと帰れ!邪魔なんだよ!」
「やめなさいよ!」
どこからか女性の声が聞こえた。声のする方に振り向くとカウンターから身を乗り出しているっ女性がいた。
「子供相手に何突っかかってんのよ!恥ずかしくないの!?」
「なんだよ!セレナお前が代わりに相手してくれるのか?」
冒険者たちは喧嘩腰でいちいち突っかかるように言ってくる。流石にユアンもイライラし始めてきたが、ケントとアイを探しにきただけで問題を起こすつもりはない。
「大丈夫、僕?迷子になったのかな?」
セレナという女性はユアンに近づいて話しかけてきた。
「友達をさがしてるんですけど.....」
ユアンが最後まで言おうとした瞬間さっき突っかかってきた冒険者がユアンの襟腰部分を掴み外に追い出そうとした。ユアンは先ほどまでずっと我慢していたことにより、今回の冒険者の対応にブチギレた。
「いい加減にしろよ」
ギルド全体にユアンの殺気が充満する。ギルドにいる人はみなユアンに注目の目が集まる。
「さっきから黙って聞いてればお前は何様なんだよ。こっちは友達を探しにきたって言ってんだろ。何がそんなに気に食わないんだよ。俺みたいなガキがここに来ちゃいけない決まりでもあんのか?それともお前らは小さい子供とか弱いものをいじめるのが好きなのか?何か言えよ!おい!」
ユアンの襟腰を掴んでいた冒険者は腰を抜かしてガタガタと震えている。五歳でここまでの殺気を放つ子どもはどこにもいない。
「お、お前は一体何者なんだよ.....」
「お前に教えるつもりはない」
ユアンはそういうとセレナのところに戻りケントとアイについて聞いた。
「今日俺と同じぐらいの子供二人が来ませんでした?」
「あっはい!来ました!今日は巨大猪の討伐に向かっています」
「どこにあるんですか?」
「えっと、王都を出て少し歩いたところにある草原ですね」
セレナは小さな子供のユアンに対して少し怯えた様子で会話をしている。
「わかりました。ありがとうございます。すみませんギルドをめちゃくちゃにしてしまって」
「大丈夫ですよ。あの人たちが悪いんですから気にしないでください」
そう言ってユアンは王都を出るために草原に向かうはずだった。王都を出るには身分証明書が必要で、それをもらうには冒険者ギルドで簡単な手続きを行なってもらうことができるのだ。だが、ユアンは先ほど問題を起こしたばかりでまたギルドに行くのは気まずい。でも草原に行けばケントたちに会えるかもしれない。
考えたユアンは通行門の周りにある大きな壁をすり抜けることを考えた。見張りが見ていない隙を狙ってユアンはスキル「透過」を使って壁をすり抜けて草原へと向かった。
身体強化をして走っていくと何かと戦っている音が聞こえた。音のする方に向かうとケントとアイが大きな猪と戦っていた。
「巨大猪ってでかい猪のことだったんだな」
ケントとアイは背後から急に声が聞こえたので振り向くといるはずのないユアンが立っていた。
「なんでユアンが!」
「お前どうやって来た!?」
二人はユアンを見てとても驚いていた。
「身分証明書とかないからさ、門の周りの壁をすり抜けて来た」
二人は呆れたように大きなため息をついていた。
「身分証明書なんてギルドで発行してくれるのに、門番の人は教えてくれなかったの?」
「いや、最初ギルドに行ったんだけど変な人に絡まれて殺気はなったら気まずい空気になちゃって、身分証明書を発行できる場所を聞いたらギルドって言われたけど行きづらかったから」
「あんまり問題起こさないでよ。こっちまでしわ寄せがきたらどうするの?」
「まぁユアンも来たとなれば少しは手伝ってもらうか」
目の前には巨大猪が鼻息を立ててこちらを見ている。
「火属性魔法は使うなよ。肉が焦げて高く売れないからな」
「じゃあ俺の出番はねーじゃん」
「そんなことないよ、私の水魔法で顔の部分だけ水で覆って窒息死させるけど、その間暴れまくるから二人で協力して押さえつけてね」
帰って来た言葉があまりに残酷であったため少し巨大猪をかわいそうに思う。
「じゃあ始めるよー」
アイが巨大猪の顔に水で覆った。
「行くぞユアン!」
ケントは暴れ回る巨大猪に対し正面から押さえつけている。巨大猪の巨体はケントよりもはるかにでかいがそれを一人で押さえ込んでいるのはさすがだと思った。
「何してんだよ!早く来いよ!」
少し辛そうなケントを見て手伝にいくユアン。ユアンもケントと同じように正面から押さえに行く。数分もすると巨大猪の動きも悪くなり抑えなくても暴れなくなった。
「よし!これで任務完了だな」
「ユアンもありがとね!来てくれて嬉しかったよ!」
何気ないアイのお礼に少しドキッとしたユアンだった。それを見てケントはニヤニヤしながら見ていたが、少々いらっとしてしまったので中級魔法の火弾をケントに向けて撃ち放った。
「ちょっと何してるの!?」
「いや、なんかあいつにムカついた」
ケントを見てみると涼しげな表情でまだニヤニヤしていた。
この前の仕返しか?と思いつつもユアンは帰る準備をした。
「じゃあ、先帰るわ。また後で城の中で」
ユアンはケントたちの前から立ち去っていった。城に戻ると少し慌ただしい様子で冒険者ギルドの建物の修理費が請求されたとかで騒いでいた。
ユアンには心当たりがありすぎて自分から言おうとしたが、めんどくさくなりそうだったので自分の部屋に帰ろうとした。部屋に帰る途中レインと遭遇してしまい今回の事件について聞かされた。
「すごいよねー殺気だけで建物が壊れるんだもの。相当な実力者だよねー」
レインの言い方だとユアンを問い詰めているようにしか聞こえない。
「いやーすごい人ですよね。それで壊れるなんて建物も結構古かったりして」
「まぁ結構古いからしょうがないんだけどね。それよりユアン君は今日どこにいたの?」
さっきまで笑いながら話していた空気が一瞬にして変わった。
「えーっと.....王都に散歩に.....」
ユアンの首筋にはツーっと汗が足りる。
「今日ね冒険者ギルドにユアン君と同じ格好をした子供が中に入っていったんだって。何か言うことは無い?」
「あの....すみませんでした」
すぐさまレインに抱えられ陛下のいる部屋に通されて事の顛末を二人に話した。今回はギルド側の問題という事で修理費はギルドで負担することになった。
その後、レインと一緒にギルドに尋ねることになるが、それは違うお話で。
いつもありがとうございます