第三十三話 次の日の朝
ユアンとの会話が終わったアイは自分のベッドで目を覚ました。さっきまであった温もりは今はなく、少し寂しい気持ちになるが、時が経てばまた会えることはアイもわかっていた。
アイはいつも通りの朝を過ごし、午前九時ごろに食堂へと向かった。食堂に行く途中ケントに後ろから声をかけられた。
「アイ、おはよう。昨日はどうだった?」
「おはよう、ケント。昨日は楽しかったよ!ごめんね、気を使わせちゃって...」
「気にすんな!それより随分と嬉しそうだけど何かあったのか?」
「ん〜それがね〜」
アイはユアンと戦ったことを全て話し、ユアンに傷を負わせたことを話すとケントはすごい剣幕でアイの肩を掴んだ。
「おい!それ本当か!?どうやって!?」
「ちょ、ちょっと...痛いよ...」
「あっ...ごめん」
アイが痛がるとケントはパッと手を離した。
「まったく...仮にも私女の子だよ?もっと丁寧にしてよ」
「ごめん、ごめん。アイの話を聞いたら羨ましくて...」
「まぁ...そうだろうね...ケントならそう言うと思ったよ...」
ケントは幼馴染三人の中でもかなりの戦闘狂だ。おそらくフィリップとアイが戦った時からずっとウズウズしていたのだろう。そして、昨日ユアンに呼び出された時に、「戦いたい」と意思表示をしていたが、ユアンはキッパリと断っていた。それで、アイの話を聞くたびに喜んではいるものの、いつもよりため息の数が多かった。
「いいなぁ...ユアンと戦いてーな」
「戦っても負けるんじゃないの?相手はユアンだよ?」
「それでも戦いてーよ。だって、昔っからユアンって隠し事とか多かったじゃん。だから俺らといる時って本気で戦ってるイメージとかできないんだよな」
実際、ユアンが本気を出して戦っていた時は、ラウレスとの戦闘の時と五歳の時にプト村付近で魔人と戦った時だけだ。
「確かに...私と戦っている時もあんまり本気じゃなかったような...」
アイは昨晩のことを思い出してみると、確かに思い当たる節はあった。ユアンが本気ならアイの攻撃は全て躱して攻撃を当てることもできたはず。
「まぁ...この中だったらユアンの本気を引き出せるのは俺しかいねーよな」
そう言ってケントのドヤ顔を見ると少しアイはイラッとする。
「もし戦ったとしてもどうせユアンが勝つよ。ケントなんか負けちゃえ」
「うわっ!ひっでーな!」
朝から他愛も無い話をしながら今日一日をスタートする。
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※次回ユアンvsケントです




