第二十七話 シエラの出来事
フィリップとの話し合いが終わった後、賢者全員はシエラの魔法で王都の会議室へと戻っていた。
「それにしても...まさかこんなことになるなんてな...」
バーンが愚痴をこぼすが、みんな同じことを思っていた。誰一人このことは予想できなかっただろう。
「ごめんね、アイ。私が捕まったせいで...」
「いえ、気にしないでください。シエラ様のせいだなんて思っていませんよ!ただ...あの馬鹿国王にはちゃんと謝ってもらいますけどね...」
その時のアイの表情はシエラでさえも一歩たじろぐ程な恐ろしい顔をしていた。
「それにしても、シエラ様は捕まった後何があったんですか?」
「あの後はね...」
そう言うと、シエラは一週間前に起きた出来事を詳細を語った。
***
エルクをアウスト王国に送った後、シエラは一人フィリップと対峙していた。
「さぁ...続きといきましょうか!」
するとフィリップは高らかに笑い始めた。
「はっはははは!自分よりも人間を優先するか。面白い...全員武器を下げろ」
フィリップは兵士と魔道士にそう告げると、兵士たちは武器を下げたが納得のしないものも現れる。
「陛下!この魔人を生かしておくのですか!?」
「ああそうだ。アウスト王国の客人だぞ」
「なりません!この国に魔物が入ることは言語道断!今すぐ殺すべきかと!」
すると、フィリップは冷たい視線で意見を申した兵士を見下ろした。
「ならばお前は、その後何が起きるのか想像はつくのか?」
「い、いえ...ですが...魔物は」
「なら、お前がここで殺せばいい。その後、アウスト王国と戦争になった時、お前やお前の家族もろとも戦争犯罪として処刑対象になるからな」
「な、なぜですか!?」
「俺には国家や国民を守る義務がある。国の方針だの、宗教だので国を危険に晒した奴には即刻死んでもらう」
処刑と聞いて意見を申した兵士は顔が真っ青になりものすごい量の汗をかいていた。
「それでも殺したいのなら好きにしろ。俺はもう止めない」
「い、いえ...出過ぎたことを申し上げました。失礼します」
兵士は一礼して部屋から出ていった。
「さて、ではアウスト王国からきてくれた賢者を客室へ案内しろ。賢者殿には魔人とバレないように先ほどと同じく変装をしてもらいたんだが...」
「それは構わない」
「助かる。この場にいるものは今起きたことは他言無用だ。もし話せば死刑と思ってくれて構わない」
またしても、この場の空気が凍りつく。
シエラはメイドに客室へと案内され、その部屋で一週間過ごした。
***
「と...まぁこんな感じだね。あの国王が私を呼んだのはそれから一週間後、私はその間観光だったり、面白い魔道具を見たりしていて楽しかったけど...」
話し終えると、全員シエラに対する眼光が凄まじかった。
「ど、どうしたの?」
「心配したんですよ!エルクちゃんが傷だらけで帰ってくるし!シエラさんが死んじゃうって言われるし!」
「何で一つも連絡しなかったんすか!?」
「みんな心配してたんですよ!」
ここまで心配されていると思わなかったシエラは少し顔を赤らめながら「ご、ごめん」と小さな声でつぶやいた。
「それにしても、あの国王意外とその先のことも考えてるんだな。もしかしたらこの決闘も...」
バーンの言葉にアイが反応する。
「バーンさん...それはあり得ない。誰であろうとユアンを馬鹿にしたことは誰であろうと許さない」
「はっはい!」
試合時間まで約二十四時間。その間にコンディションを整えるために、ケントとアイは訓練場で修行を開始した。
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