第二十五話 連絡
執務室を訪れたアークは先ほどの会議でシーラス王国で起きた出来事を陛下に話していた。シエラが魔人とバレたこと、シーラス王国国王が水神の加護を持っていたことなど全てを話し終えると、頭を抱えていた。
「それで...シエラの安否はわからないんじゃな...?」
「ええ...ですが、先ほどケント君も言っていたのですが、相手も賢者ですのでそう簡単に殺しはしないはずです。もし、殺したとなればアウスト王国との戦争は確実ですので...」
「それでは...相手からの連絡待ちじゃな」
「そうですね、他のみんなには会議室で待機してもらっているのですが、どうしますか?」
「一旦解散でいいじゃろう...何かあったらすぐに連絡をする。それまで自由にしていて構わん」
「わかりました」
アークは一礼して部屋を出た。
部屋を出た後、一人になった陛下はブツブツと文句が口からこぼれた。
「まったく...お主がいればこうならんかった筈なんじゃがな...ユアン」
執務室から戻ったアークは、陛下の命令通りに一旦解散にさせた。何かあればすぐに連絡をすると言ったら、全員無言で首を縦に振った。
アイは自室に戻る途中でエルクのことが心配になり、医務室へと寄ることにした。
医務室の前につき、ドアを軽くノックしてから開けると両手両足に包帯を巻いているエルクの姿があった。
「大丈夫エルクちゃん!?」
「だ、大丈夫です!だけど...」
「内部にはさほどの損傷はないが、一番ひどいのは外部による損傷だ。全身を押し潰されたかのような傷があっちこっちにある。一体どうやったらこんな傷ができるんだ...」
サテラは診断書をアイに見せると、尋問をするかのように質問が飛んできた。
「何をしてこうなったんだ?これは魔法によるものだろう?全身を押し潰されるなんて魔法か、自分より大きな魔物に踏み潰されるぐらいしかない。だが、巨大な魔物の情報なんて一つの情報も入ってきていない。そうなれば、魔法しか選択肢にはないが...」
エルクは黙ったまま下を向いて何も話そうとはしなかった。
「黙っていてはわからん。何かしゃべれ」
「サテラさん!」
アイがサテラの名前を呼ぶとサテラは数秒アイの顔を見つめると、ため息を吐いてタバコを吸い始めた。
「まぁいい...犯人探しは気になるが、犯人を知ったことで私がどうこうできるわけがないからな。残りの傷はお前が治してやれ。私の魔法ではそこまでしか治せん」
「はい!」
思いのほかスッと引いてくれたことに驚きつつも、エルクの傷をアイの魔法で完治させる。
エルクの傷は完治したが、表情はまだ暗い。
「さぁ、傷が治ったんならとっとと出ていきな!」
「はっはい!」
「お、お世話になりました...」
エルクが一礼して出ていくと、サテラは掌をひらひらと合図をくれた。
家まで送ろうとエルクに申し出るが、静かに首を横に振られて一人で帰ってしまった。
それから一週間後、シーラス王国から突然連絡が陛下のところに来た。
陛下は急いで賢者を会議室に集め、その連絡内容を全員に共有した。
「手紙に書かれていたことは...初代賢者シエラはこちらで預かっている。返して欲しければ賢者全員でシーラス王国に来い...と書かれている」
「まるで誘拐犯が書くような内容だな...」
その手紙の書き方はまるでお手本かのような誘拐犯がよく言いそうな内容だった。
「どうします...?賢者全員ってことは、この国を守る人がいないってことですよね?」
「騎士団長と魔法師団長がいるだろ」
「その間に魔人がきたら無理でしょ?」
みんなの意見が飛び交う中、陛下は追加で書かれていた手紙の内容を読み始めた。
「また、移動はこちらが面倒見ると書かれてある」
「ん?どういうことだ?」
「さぁ?」
すると、突然会議室に黒い穴が出現する。
その中からゆっくりと歩いてくる人影がこちらに近づいてくる。そして、その人影の顔が見えると全員が叫んだ。
「「「「「し、シエラ様・さん!?」」」」」
いつもありがとうございます。面白かったらブックマークと評価をお願いします。




