第二十話 目論見
薄暗い廊下をゆっくりと歩くラウレス。ラウレスは、元々あったカラーのアジトを自分のものに作り替えてしまった。魔王がいた頃よりも原型が崩れ、魔王の部屋が丸ごとラウレスの部屋に変わってしまった。
そして、ラウレスの部屋の中には大きな水槽とその中に、培養液とボロボロの状態のラウレスが入っていた。
「どうだ?体の方は?」
(まだまだ不完全だな...完全に治るには二年くらいかかりそうだ)
「そうか。さっきアイに会ってきた。俺の姿を見て驚いてたよ」
コピーのラウレスはボロボロの状態のラウレスに話しかける。
(計画は順調か?)
「ああ、今のところはな。アジトの場所も知られていないし、今は大丈夫だ」
(そうか...引き続き頼むぞ)
そう言ってボロボロのラウレスの意識は途切れた。
ラウレスと接触したアイは急いで王都に戻っていた。アイは信号弾の赤色をセットして王都の近くで空に向けて撃った。すると、一瞬のうちに目の前にユニバが現れた。
その光景に驚いてアイは驚きの声をあげてしまった。
「うわっ!びっくりした!」
「魔人がでたのか!?」
「魔人というよりかは...ラウレスに会ったというか...」
「ラウレスじゃと!?なぜワシを呼ばんかった!」
「えーっと、詳しいことはみんながいる時に話します。なので、至急会議室にみんなを呼んでくれませんか?ケントは私が連れて行きますから」
「わかった。ワシもすぐに集めるからお主もなるべく早くに来るんじゃぞ」
そう言ってユニバはその場からすぐに消えてしまった。
ユニバが消えてすぐにケントが森から出てきた。
「信号弾を撃ったのはアイか!?」
「うん、そうだよ。早く中にいこ」
「えっ?魔人は?」
「魔人はいないけど...とりあえず中でみんなが待っているから!」
アイはケントの腕を掴んで急いで会議室へと連れて行く。
賢者のローブを着ているおかげか、門番の人には顔パスで出入りが自由となっている。
会議室に着くとそこにはシエラ以外の賢者とユニバが待っていた。
「さぁ話してくれ。お主に何があったのかを」
アイは静かに頷くと、先ほど起きたことを全て話し始めた。
「それで、最後にユアンを使って何をしようとしているのかと尋ねたら、ラウレスは不気味な笑顔で「さぁな」と言って目の前から消えました...」
アイの話を聞いたみんなは空気が重く、誰一人口を開かなかった。
そんな中一番最初に口を開いたのは、ケントだった。
「その様子だと、ラウレスはユアンを使って何かをしようとしていることは確定だな。それにわざわざ人形を使ってまでアイと接触したってことは何か別の目的でもあるのか?」
「その意見については同感じゃな。今ここでアイと接触する利点があまりない。それどころか、自分達がユアンを利用しようとしていることをわざと教えているようなもんじゃ」
ユニバの言葉でさらに会議室の雰囲気が悪化する。
「まさか...あいつらの狙いって...」
「アイちゃん...?」
一斉に視線がアイに移る。
「なんでそんな...理由がわからないよ!」
「おそらく...ユアンと関係があるってことじゃねーか?それしか考えられんだろ」
ユアンと関係があるから...そういう理由もあるかもしれないが、アイには自分を狙ってくる理由がもう一つあった。
それは、おそらく個人的にラウレスとアオからアイが気に入られていることだ。前に、アイはラウレスに捕まったことがあった。あの時は運良く助けが来たが、もし次があるとすれば......
「とりあえず、アイちゃんはしばらくの間王都にとどまらせておくべきだよね?」
「いや、あいつらが本格的に動くのは約二年後だろ?それまでは普通でいいんじゃねーか?」
「でも、もし仮に二年後だとしても他の魔人に襲われるかもしれないじゃん。もういないとは思うけど...亜種の魔人とか...」
亜種の魔人...賢者三人が精霊化をしても倒すことができなかった魔人。魔力が尋常に多く再生能力と変身が使える魔人。唯一救いだったのが知能を持っていなかったこと。そのおかげで死傷者が少なくて済んだと言える。
「実際ケントやアイだったら勝てるんじゃねーの?」
「あの時、俺は参戦する前にラウレスが魔人を殺してたから、俺も戦ってみないとわからないかな」
「それだったら尚更アイちゃんを外に出すのは危険だよ。それと、もしものことを想定してしばらくの間、今のペアで行動しましょ」
「そうじゃな...それが安心じゃな。アイ、しばらくの間王都の外に出るのは禁止じゃ。わしのスキルでも、お主が捕らわれている未来がいくつか見えた」
その言葉を聞いて、前に捕らわれていた記憶を思い出す。
背筋が凍り、体が岩みたいに重くなり、息がうまく吸えなくなり過呼吸を引き起こした。
「はぁっ...はぁっ...」
「アイちゃん!?」
「おい!大丈夫か!?早く医務室へ!」
ゆっくりと意識が薄くなっていく。みんなが声をかけてくれるのがうっすらとわかるが、段々と意識が遠のいていく。
怖いよ...助けて...ユアン
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